寄稿エージェント:安達 飛希
本日は京都大学の大学院を修了後、株式会社ディー・エヌ・エーに入社された村上さんにお話を伺ってきました。
入社後に経営企画部に配属された後、ゲーム開発の部署へ異動された村上さん。
「ゲーム開発というのは『良い世界』を創り出すこと」と語る村上さんに詳細を伺ってきました。
――――自己紹介をお願いします
村上永晃(のりあき)と申します。京都大学の大学院を卒業後DeNAに入社しております。
現在はリリース前の新しいゲームの開発を担当しています。新規ゲームの立ち上げ期の開発から、リリース済みタイトルの運営まで、プランナー/ディレクターとして経験しています。
これまでに担当したゲームとして、デュエル エクス マキナ(DUELS X MACHINA)(以下、和名のみ)というカードゲームがあります。バトル機能他の開発と、カード企画、対戦バランス調整やクエスト・報酬設計などのレベルデザインを行いました。
【村上さんが担当された デュエル エクス マキナ】
――――まずは大学生活からお伺いしていければと思うのですが、大学ではどのような活動をされていたのでしょうか?
大きく分けると、3つあるかと思います。
一つ目が音楽です。
高校時代にトランペットで音大に行こうと考えていた時期もあり、憧れていたオーケストラ部に入りました。その後色々あって、オーケストラ部は辞めて吹奏楽団に入り活動していました。
音大への進学は高三の春まで悩み、音楽のプロになる道も色々調べはしたのですが、そこまでビジョナリーになれず、京都大学へ進学しました。
二つ目が小説です。
実は20歳の時に講談社から小説を一冊出版しているんです。2、3作目に関しては執筆したものの、諸々の事情があって出版はできませんでしたが、多くの時間を費やしていました。
三つ目は大学院の研究です。
論文も出版しつつ学会で発表もしましたし、ありがたいことに賞をいただいたりもしました。
――――小説も出版していらっしゃるのですね。音楽や小説など、さまざまな活動をされていた中でどのような就職活動をされたのでしょうか?
京都大学の研究室に在籍している方だと、就職するにしてもドクターになるにしても、そのまま研究キャリアに進んでいく方が非常に多いんです。
私も研究自体は非常に充実していたものの、『研究しか知らないままキャリアを決めるべきではない』と考え、現職であるDeNAと外資戦略コンサルのサマーインターンに参加しました。
その2つのインターンは凄く良い経験になり、両社共にご縁はあったのですがDeNAへの入社を決めました。
サマーインターンが終了した段階でDeNAへの入社を決めたのは、インターンの5日間が凄く充実していて楽しかったからです。研究というのは、目に見える成果が出るまで結構な時間を要するのですが、インターンという短期間で強い手ごたえがあったのが魅力に感じました。
――――インターンはどのような内容だったのですか?
当時のDeNAのインターンの参加者は合計50名程度で、8チームに分かれてビジネスプランを考えるものでした。考えたビジネスプランを最終日に取締役など複数名に対してプレゼンを行う形式です。プレゼンを行ったのは私だったのですが、チームの方達が非常に優秀だったこともあって優勝という結果につながり、非常に良い経験になりました。
もちろん、戦略コンサルのインターンでも、非常に濃密な体験ができました。
ただ、うまく表現するのが難しいのですがコンサルの方がよりスマートな印象を受けたんです。DeNAは良い意味で泥臭さもあり、こちらの方が私の性に合っていると感じました。
――――入社を決めるにあたってやりたい事は明確にお持ちだったのでしょうか?
入社する時は具体的なことは全く考えられていなくて、『何か面白そうなことやりたい』といったような漠然としたものでした。
ただ、DeNAに入社すれば新しい事をやれるのではないかと感じていたんです。当時DeNAはチャットツールや、音楽プレーヤーのような新しい事業を矢継ぎ早にリリースしていた時期だったこともあり、単純に新規のアプリを作るのが楽しそうだと思っていました。
入社を決めた後に、未経験ではありましたが、自分でPythonを勉強してアンドロイドアプリを作ってみたりもしました。
――――DeNAに入社して何をされたのでしょうか?
最初の2週間は全社研修があり、社内ルールの説明やマナー研修、その他にも各事業部の部長の話など、基本講習がありました。
その後、経営企画部に配属され、社内の様々な事業部の数値を集計しつつ課題定義するなどの業務を担当しました。いまから思えば、ある意味では戦略コンサル的な仕事かもしれませんね。(笑)
経営企画に半年ほど在籍した後に、今のゲームを作る部署に異動になりました。
――――異動は希望されたのでしょうか?
はい、異動の希望を出しました。
直属の上司とゲームのプロデューサーの両名から最終的にOKいただき、異動することになりました。
いち新卒の声に真摯に向き合っていただき、DeNAは当時も今もおおらかで良い会社だと感じています。
ゲーム開発を仕事にした方が良い
――――なぜゲームの部署への異動を希望されたのでしょうか?
子どものころからゲームは好きだったのですが、きっかけは本当に偶然でした。社内でカードゲーム系アプリのユーザーテストを実施していて、そのテストユーザーに選ばれたんです。
学生の時にマジック・ザ・ギャザリングというカードゲームが凄く好きだった事を思い出しながらテストユーザーとして遊んでいましたね。
そのアプリを遊んでからというもの、就業後や休日に、『こうしたらもっとゲームが面白くなるんじゃないか』というようなアイディアがどんどん出てきて、それを、頼まれもしないのにゲームのプロデューサーに伝えていたんです。
そんな状況が2ヶ月ほど続いて、『もはやこれを仕事にした方がいいんじゃないか』と思い、上司に異動したいという話をしました。
異動した後は、カードゲーム系アプリの開発にたずさわり、最終的に「デュエル エクス マキナ」というタイトルで2017年3月にリリースされました。ゲームを作ること自体が初めてだったので学びが多くて楽しかったですね。
――――ゲーム開発というと経営企画と比べると随分と雰囲気が変わると思いますが、いかがでしたか?
おっしゃるとおり、全然違いますね。
経営企画の時は、シャツスタイルでまじめな方が多かったですが、ラフなスタイルの方が多かったりと、雰囲気はガラッと変わりました。
――――ゲーム開発において、経営企画で身に着けたスキルは活かせましたか?
正直なところ、あまり活かせませんでしたね。経営企画よりも、カードゲームのマジック・ザ・ギャザリングをやっていた知識が活きています (笑)
ただ、今後の自分のキャリアの中では、経営企画的な観点が必要になるとも感じています。
――――『好きなことは仕事にしない』と言う方がいらっしゃいますが、こちらに関してはどう思いますか?
おそらく、その理由としては、好きなことを仕事にした時に、好きじゃない側面も付いてくるケースもあるから、ということだとは思います。
私の担当しているゲーム開発の観点で見た時にも、必要な業務ではあるものの自分がやりたいことではない仕事は沢山ありますが、とにかくゲームの開発を前に進めていくことが重要ですし、好きなゲームにたずさわれているので楽しいです。
プレイヤーの声が励みになる
――――正式リリースをしてからはどうでしたか?
熱量高く遊んでくださるユーザー様がいらっしゃり、本当にありがたいことだなと感じていました。
ゲームをリリースして1年くらいでサービスの最終大型アップデートを迎える(以降、大規模なカード追加、機能追加を実施しない)ことになりましたが、SNSでのメッセージやリアルイベントで、プレイヤーの方からの声が聞けてとても助けられましたし、やって良かったなと感じました。ちなみにゲームそのものは、今でもアプリストアからダウンロードして遊べます。
昇進の話を蹴ってまでゲーム開発の道に進んだ
――――最終大型アップデートが終わった後はどうされているのでしょうか?
詳細はお伝えできないのですが、今は新しいゲームを作っています。
デュエル エクス マキナの最終大型アップデートのタイミングが、ちょうどキャリアの分かれ目でしたね。
会社側もこのタイミングで私がプロジェクトから抜けることは分かっていたこともあり、他部署での役職付きのポジションというありがたいお話をいただきました。
役職に就くということは、漠然とした軸で言えばキャリアアップになるとは思うのですが、多くの方と相談させていただき、自分が本当に役職者になりたいのかを考えました。
『役職者になる』ということともう一つ天秤にかけていたのが、『もう一回ゲームを作る』ということでした。
デュエル エクス マキナというゲームを作って、自分の中で色々な物を積み上げられたと感じていますし、開発の現場も凄く好きでした。チームの人たちと協力して、もう一度『良い世界』を作っていきたいと考え、他部署に移って役職者になる道ではなく、ゲームを作る道に進みました。
人が『のめり込める物』を産み出す価値
――――『良い世界』というのは、どういうものを指すのでしょうか?
私自身ゲームは好きですし、ゲームに限らず『のめり込めるもの』が好きだと感じています。
『のめり込めるもの』に触れている時間というのは、自分の体験をそこにフォーカスしていることだと思うんです。
例えば、とある人が家に帰ってから15分間ゲームをする。その間というのはゲームのことをずっと考えている、これって『良い世界』だと思うんです。
そういった、集中してのめり込める物を産み出すことに凄く価値がある。
自分がその作り手側にいたいと思ったので、ゲームを作ることに決めました。
――――失礼な言い方にはなるのですが、1作目は失敗ではないにしても大成功でもないかと思うのですが、それでももう一度ゲームを作りたいと思われたのは何故なのでしょうか?
変なうぬぼれもあったのですが、『次はもっとうまくできる』と考えていました。あとは年齢的にも、もうワンチャレンジ出来るだろうと考えていました。
チャレンジすることで見える景色もあると思っているので、35歳とか40歳までは色々チャレンジしていきたいと考えています。
――――将来的にやりたいことがあれば教えてください
直近では今のゲームを成功させる。その上で、もうワンチャレンジしたいと考えています。
今担当しているゲームが完成したら自信になると思いますし、その上で一から自分でもう一度ゲームを作ることができたら凄く幸せだろうなって考えています。
あと、今年30歳になるので、30代前半の内に複数の実績がほしいと考えていますね。
全ての行動に意味付けを行う
――――35歳や40歳になった時に何をしていたいですか?
これに関しては次に自分が作ったゲームを見てから決めたいと考えているので、まだ具体的には考えられていません。
抽象的に答えるとすれば、自分の軸をより強固に持っていたいと考えています。
私はバランサーの一面があるのですが、昔はそれが極端でした。『周囲のできる人たちの意見を聞いて、うまくまとめる』ということが多かったのです。数年前まではこの傾向が強かったのですが、ある日ふと振り返って、気づきました。そこに自分の考えはなく、人の考えに乗っかっているだけだと。
今後自分がより主体的にチームをリードするためには、自分の軸が強固でなければならないと思っています。そういった意味で35歳のタイミングでは、自分の軸を確立したいと考えています。
自分の軸があれば、例えば着る服や食べる物の選択などの全ての行動に意味付けをしていくことになると思うんです。
なんとなくで決めることというのは、「どうでもいい」と思っていることです。
私は何においても自分の軸を持っているような、こだわりを持った大人になりたいと考えています。
その上でチームのマネジメントを行っていきたいです。
そして最終的に自分の持っている適性や能力を使って、『良い世界』を作ることにフォーカスしていきたいです。
――――VIEWをやってみていかがでしたか?
自分のキャリアを人にレコメンドされることは基本的にないので純粋に面白いと感じました。
それに、20代後半、30代前半で転職を考えない人は少ないと思いますし、VIEWは時間をかけずにサクッと出来るのでとりあえずやってみたら良いと思います。
友人で集まってワイワイしながらやるのも面白いと思います。結果がどうなるかを予想しあったり、実際のランキングを見せ合ってどれくらい当たってそうかを話したり・・・ちょっとやりたくなってきました。笑
――――誰かに何か伝えたいことがあれば、お願いします
細かいところはお話しできなくて申し訳ないのですが、現在また新しいゲームを作っています。
次も面白いゲームを作るので楽しみに待っていてください!
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