慶應義塾大学を卒業後、日本IBM株式会社に入社され、現在はエムスリー株式会社にてマーケティングコンサルタントとして活躍される松山さんにお話を伺ってきました。
彼が『カッコ良く生き続けなければならない』と語るその背景や過去の体験について伺ってきました。

――――自己紹介お願いします

松山亮介と申します。
慶應大学卒業後、IBMに入社して営業として働いていました。
その後2018年2月にエムスリー株式会社にジョインして、今は製薬メーカーのマーケティング支援を通して医療業界に貢献しています。

勝ち癖をつけるべきファーストキャリア

――――1社目にIBMを選んだ理由を教えてください

私は昔から、他人が『出来ない』と決めつけたことへ挑戦する人がカッコ良いと感じておりました。
ですので、新卒の就職活動の時には、以下の2点の要素を重視していました。
・起業家思考が強いこと(イトクロなどのベンチャー企業やリクルートグループ等)
・わくわくできること

IBMを選択肢に入れていた理由としては、直観的にわくわく感があったからです。ここに入社したらどのような未来を創っていけるのか、と考えた際に楽しかったんです。

何社か内定を頂き、進路を悩んでいた時に、内定企業の人事部長の方に相談したんです。その際、『当社に来なさい』と言われたのですが、決めかねていた私を見て『あなたはまだ勝ち癖が付いていない。自信がないから当社に入社する意思決定は出来ないと思う。まずはノルマなどの目標を達成する癖、勝ち癖を付けなさい。この軸で言えばIBMが非常に厳しい環境なので、そこで勝ち癖を付けられたらあなたはどこへでも行ける』というお話を頂いたので、IBMに決めました。

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まずは一流のソルジャーになれ

――――人事部長の方とお話をされて、すぐに納得されたのでしょうか?

納得感はありました。

自分のキャリアパスを考えた時に35歳までには、例えば政治家や経営者など組織のトップに立ちたいと考えていたので、30歳位のタイミングで人を動かしていくマネジメントを経験するべきだと考えていました。逆算的に考えて、30歳でマネージャー職に就くには20代の内には一流のプレーヤーにならなければならないと思っていました。

それを考えた時に、まずは厳しい環境でとにかく早く成果をあげる。それが出来るようになった後に、例えば『方法は問いませんので、この人を笑わせ下さい』というようなオープンなテーマだけ与えられて、それに対するステップを自分で作る経験を積むべきだと考えていました。

先程もお話した人事部長の方が仰っていた事を自分なりにかみ砕くと、『まずは一流のソルジャーになれ』と言われている気がして、凄く納得感がありましたね。

――――ソルジャーという言葉は、ネガティブに使われることも多いと思いますが、これをポジティブに捉えられたのは何故なのでしょうか?

多分経営者の中でもソルジャーっぽい動き方が出来る人と出来ない人というのは分かれていて、経営者だから何でも出来るという訳ではなくて、部長だから何でもできる訳ではないと考えています。

ただ、このソルジャーとして結果を出す経験というのは、ビジネスマンとしても、人生経験としても重要だと思っていたので、そこは自然とポジティブに受け止めていましたね。

――――実際に入社してみてIBMはいかがでしたか?

IBMには大変お世話になり、今でも大好きな会社だということは前置きさせて下さい。
その上で、厳しさの例を一つ挙げるとすれば評価制度があります。
営業職の場合、多くの事業会社は人事評価に営業目標に対する達成率に加えて、定性的な評価項目があると思います。

しかしIBMは数字(営業成績)のみで評価や年俸が決まります。
私の代は入社してすぐに8ヵ月間の研修があったのですが、その中で行われたロープレにも全て点数が付けられ、自然に順位がわかるようになっていました。
研修終了後は、目標の達成率で月ごとに給与も変動するので、そういった意味でも厳しかったと思います。

目標達成率60%以下の人達はローパフォーマーと呼ばれ、これが2回続くと解雇の候補。逆に達成率100%以上を記録すると上司から気に入られますし、給与もどんどん上がる。マネジメントレベルは全員が海外の方達だったので、人を評価する軸としては『達成する人なのか、しない人なのか』という点でした。

――――IBMでの松山さんの営業成績はいかがでしたか?

ありがたいことに新入社員のロープレも成績トップで通過し、2年目以降に課された目標に対しても全て達成していました。
IBMでは目標を達成すると、世界中のトップ営業マンの集まりに招待されるのですが、それでバリ島で表彰を受けたりもしました。そこで『勝ち癖がついた』と思ったのは転職のきっかけではあります。

――――IBMの厳しい目標の中で達成し続けられたのはなぜなのでしょうか?

大きく二つあります。
一つは逆算していたこと、もう一つは達成する為に周囲の方達を巻き込んでいたことです。
一つ目の逆算に関して言えば、マイルストーンを置いてその通りに動いていました。
マイルストーンを置いて実行すれば目標は確実に達成できるはずなのですが、それをやらない人が多い。

『今日何をやらなければならないのか』と手前からやっていく人と『いつまでに何が終わっていなければならないのか』と逆算して行動している人とでは、大きな差があったと思います。この逆算の一個の鍵としては、マイルストーンの置き方に関して上司からレビューを受けていました。

二つ目の周囲の人を巻き込む、という点に関しては、私の周囲には『朝早く出社して夜遅く帰る、なぜならば私達はまだスキルがなくて時間でカバーするしかないから』というような考え方の方が非常に多かったんです。

ただ、私はもっと上手くやれると考えていました。目標を達成したい気持ちは皆同じですし、達成する事でボーナスが上がるのも皆一緒。
それであれば、周囲を巻き込んだ方が良いと考えていたので、各々の得意領域と不得意領域を鑑みて同僚や先輩を上手く巻き込んでいました。

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自分のせいではないのに苦しんでいる人を支援したい

――――少し話が戻るのですが、なぜ『人が出来ないと言っている事を達成するのがカッコ良い』と思われたのでしょうか?

私が通っていた高校では成績トップクラスの方がMARCHに行くというレベル感でした。
そのような中では私が慶應に行きたいという話をした時に、周囲の方達に無理だと笑われたんです。
ただ共感してくれる友人もいて、その中の一人と慶應義塾大学に入るという目標と立てて一緒に勉強していました。
ある日、その友人から『うちには私立に通うようなお金がないから慶應には行けない』という相談を受けたんです。奨学金の話などもしたのですが、結局彼は国立の大学へ進学したのですが、この時に大きな違和感を覚えました。

私は自分で稼いだお金で慶應大学を受けることが出来た訳では無いですし、その友人は自分のせいで慶應大学を受けられなかった訳ではない。
『自分のせいではないのに苦しむ』というのはおかしいと感じたんです。

これを変える方法を考えた時に、『ルール』を変えるか『気持ち』を変えるか、この二つしかないと考えていました。当初私はルールを変えるべきだと考えていて、例えば奨学金の制度を分かり易くするべきだ、などと考えていました。
ただ色々と考えていくうちに、『気持ち』というのは目には見えないものの大きな影響力を持つため、背中で語って気持ちを変えにいく方が有効なのではないかと考えました。

なので私は、『あいつカッコ良いな』、『あいつみたいになりたいな』って言われるようにならなければならないんです。私の行動によって周囲の気持ちを変え、周囲の行動を変えなければならないと思ったんです。

――――これまでに何か背中で語ったような経験があれば教えて頂けますでしょうか?

大学一年生の時に高校時代にお世話になった恩師のところへ挨拶に伺ったんです。
その時に恩師から、私の一個下の代で早稲田大学の合格者が複数名出た旨を聞きました。
自分で言うと少しカッコ悪いのですが…私の卒業後1年しか経っていないので、恐らく私が慶應大学に受かったのを後輩が知り『先輩が受かったなら、自分達も頑張れば出来る』という気持ちになったのだと思うんです。
これまでは成績トップクラスの人がMARCHという目標を掲げていたのが、恐らくその目標が早慶になって、国立になって…こうやって目標が上がっていくんです。

この話を聞いた時には受験勉強を頑張って良かったと思いました。

――――少し話が戻ってしまうのですが、IBMではどのような業務を担当されていたのでしょうか?

地方銀行へのネットワークやサーバーのようなインフラ側の提案営業を担当していました。
担当していた地方銀行の支店に足繁く通い、商材の提案や様々な課題に対する解決策などの提案活動をしていました。

商材としては、大手IT機器メーカーの物を売っていて、これはIBM以外の会社でも売れる物なので、物自体のバリューはあまり無く、価格競争とか根回しのような動きも多くありました。なので、スマートな営業というよりも泥臭い営業だったと思います。10分間のご挨拶の為に新潟に行ったりもしていましたからね。

――――IBMはボーナスが大きな割合を占めると聞いたことがあるのですが、実際はどうなのでしょうか?

おっしゃる通りです。給与の約半分が自分の営業成績に紐づきます。
ただ、達成率が100%を超えるとボーナスの額が跳ね上がる面白い制度だったので、私の場合は社会人2~3年目が貰うべきではないような額を頂いていました。

――――お金は仕事のモチベーションにはならないのでしょうか?

モチベーションにならない訳ではないのですが、自分が将来やりたいことから逆算すると年収を上げていくこと自体は軸からズレているので、転職する際には殆ど気にしませんでした。
ですので、私は妻子がありますので給料が凄く低いのは厳しいのですが、家族を養えるレベルの額であれば自己成長の方を優先していきたいと考えています。

――――そのような中でどのような軸でエムスリーを選ばれたのでしょうか?

大きくは二つの軸があります。
一つ目は先程も少しお話したような、『方法は問いませんので、この人を笑わせて下さい』というようなオープンなテーマで仕事が出来るから。
もう一つが医療業界を変えたいと思ったからです。
少し前に身近な所で医療機関にお世話になることがあり、転職活動当時、医療関連の話題に敏感になっていました。知人から、人が亡くなって病室でご家族が病室で泣いている中、『珍しい症例なので検体してもよいか』という話が出ることもあるといったような話を聞いた事もありました。
そのような事があり、なぜこのような世界が生まれるのか凄く疑問で、この業界をもっと良くすることが出来るんじゃないかという風に考えました。
ただ前提として、業務の都合上あまり転職活動に時間を割けなかったので、リファラルで声をかけて頂いたCRMソフトで有名な外資系企業とエムスリーの2社のみ受けて、その中で決めた形になります。

――――エムスリーではどのような事を担当されているのでしょうか?

ざっくり言うとコンサルと営業の中間のような業務を担当しています。
クライアントが抱えていると推察される課題を事前にリサーチし、その課題に対する解決策を検討して提案、実行及び効果検証を行います。
私のアシスタントに業務をお願いする場合もありますが、基本的には最初から最後まで全てのフェーズに関わります。

エムスリーは医療領域における強固なプラットフォームを持っているので、特定の商材を売るということはありません。当社の幾つかのサービスを組み合わせて提供するケースもありますが、新しいものを創り出して解決していく動きも珍しくありません。

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クライアントの発言の真意を考え抜く

――――エムスリーでの業務はいかがですか?

IBMでも営業をやっていたのでエムスリーでも出来るのではないかと思っていたのですが、苦戦しています。営業としてもまだまだですし、これまで経験したことがない分析や調査のキャッチアップがきつかったですね。
あとは、スタンスという面でも最初は苦戦しました。
これまでは、クライアントの言う事は全て正しいという前提で、早く正確に動く事が重要だったのですが、エムスリーの場合はクライアントが言っていることから真意を考えて、もしも間違っていれば正しいことを伝えることを重視しています。

業者ではなくてパートナーとして動いていくので、コミュニケーションのスタンスが大きく変わりました。今でこそ私も行っていますが、先輩がクライアントに『ご依頼頂いたリサーチを行ってもいいのですが、それよりも別の事に時間を割いた方が御社に貢献できると思います』と伝えているのを初めて目にしたときは衝撃でした。

――――現職の業務の中で、松山さんが大切にしている『自分のせいではない事で困っている人を支援する』という目標を実現する為に、意識していることはありますか?

課題解決への貢献の仕方を、経験としてもスタンスとしても身に着けることを意識しています。
簡単に言うとエムスリーのスタンスを高いレベルで身に着けたいと考えています。
これまでは単一事象に対する解決策を提案している状況だったのですが、それに関する周辺課題に対しても提案を行うような、もしくはその事象が起こる前段階の課題を未然に防ぐような動きを取り始めています。

この動きは、本気で課題解決にコミットしていないと出来ないですし、物を売るというよりも課題解決をしていくような動きになりますので、こういった経験を積んでいきたいです。

――――VIEWをやってみていかがでしたか?

心理テストみたいにゲームのようにやれるのは面白いと思いました。
実際、他の転職系サービスでは履歴書や職務経歴書の登録などの手間がかかるので、その点VIEWは簡単に出来るのは良いですね。
やりたいことが見付かっていない、もしくはまだ固まっていない状況の方がやってみたら良いのではないかと思います。
何となく不安を感じている方というのは多いと思いますが、その不安は何かしらのアクションがなければ解消されることは無いので、まずはやってみたら良いと思います。

――――誰かに何か伝えたいことがあれば、お願いします

二つあります。
『とりあえず3年は勤める』という考えは思考停止だと思っています。そして、『とりあえず転職』というのはより酷い思考停止だと思います。
具体的な例を挙げるとすれば『友人が転職しているから』というような転職は絶対やめた方がいい。
誰しも、暑い中リクルートスーツを着て頑張って就活をして今の会社に入社したかと思います。それであれば、当時の目的や目標をしっかりと思い出して、考えて行動してほしいと思います。

二つ目は、『将来やりたいことが無い』という方も多いと思います。
ただ、そういう人にもやりたくない仕事というのはあるはずなので、それを考えた時に自分が今この仕事をしている意味や転職をすべきなのか、という観点で考えてみるのが良いと思います。
『将来こうなりたくない』というイメージがあれば、今いる会社で勤めていたらそのなりたくない姿に近づいている、と気付ける可能性もあります。まずはしっかりと考える事が重要だと思います。