対談エージェント:安達 飛希
新卒で五大商社に入社し、営業職として活躍される大路さん。
現在は関連会社のベンチャー企業に出向するなど、商社マンとしては珍しいキャリアを歩む彼にお話をお伺いしました。
――――自己紹介お願いします
大路と申します。
静岡県出身で京都大学を卒業後、商社に入社しました。
数年間防衛装備品のトレーディングに従事したのち、2年前に関連会社のAI・ドローン関連ベンチャー企業へ出向して営業職として働いています。
――――新卒ではなぜ五大商社を選ばれたのでしょうか?
就職活動が始まる10日くらい前まで留学をしていて、『ここだったら頑張れそうだな』と思えた商社4社とJICAの5社に絞って面接を受けましたが、内定を頂いたのが一社しかなかったんです。
※JICA(独立行政法人国際協力機構)
Japan International Cooperation Agencyの略称。日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行っている。
――――その当時はどのような軸で企業を選ばれていたのでしょうか?
途上国のBOPビジネスみたいなものやりたいなと思っていましたが日本のNGOとかNPOでは出来る事に制限があると思ったので商社とかJICAに入ってやっていきたいと思っていました。
※BOP(base of the economic pyramid)ビジネス
低所得層(貧困層)を対象とする国際的な事業活動のこと。
――――アフリカでBOPをやりたいと思ったのはなぜなのでしょうか?
実際にアフリカに行ったことがあって、その時に受けたインスピレーションですね(笑)
先進国では衣食住のその先の嗜好品的サービスからもビジネスが生まれていますが、アフリカを含む発展途上国では人が生きていくベースとなる衣食住すら満たされていないのです。
そういった意味で、BOPによるインパクトが大きい国という観点でアフリカが良いと考えていました。
農業をやりたかったのにミサイルを売ることになった
――――商社に入社してみていかがでしたか?
入社当社はアフリカで建設機械や農業機械などの領域をやりたいと考えていたのですが、最初の配属は全く希望が叶えられずミサイルなどの防衛装備品の部署に配属になりました。
案外この部署での仕事は面白くて続けていたのですが、やはり定常業務が増えてきてしまって…商社は古典的な仕事も多く、、ある程度仕事を一通り覚えるとそれを繰り返しやっていくような状況になってしまうんです。
営業職に従事して3年程経った頃に社内で『AIドローンのベンチャーから声が掛かっている』という話を頂いたので、そのベンチャーへ出向することに決めました。
ASSIGNの結果でもベンチャーが出ているので当時のベンチャーへ出向するという意思決定は価値観的にも合っていたと思いますね。
『未知に飛び込みたい』という好奇心
――――ミサイルを売ると決まった時に即辞めるとはならなかったのでしょうか?
ならなかったですね。
『墓場まで持っていけるような情報を得られるんじゃないか…!?』、というように知的好奇心が沸きましたね。
あとは、普段商談をする相手が、防衛省や自衛隊、あとはアメリカ海軍や空軍、防衛装備品メーカーの方達、その他にも工場現場に行ったりとか…この会社でなければ経験出来ないと感じるような事が非常に多かったです。
また先程お話した内容にはなるんですが、元々発展途上国関連の仕事に携わりたいという気持ちがあったんです。ですが、途上国に関わる仕事をやりたいという所の本質的な理由が『好奇心』というところだと気付いたんです。『未知に飛び込みたい』と考えていた学生の当時、自分の中で最も未知なるものがアフリカだったんです。
ですが、商社で仕事をしていくにつれて未知の事も沢山あることに改めて気付き、ミサイルにもどんどん興味を持っていきましたね。
なので今はアフリカにはこだわらなくなってきているという感じです。
――――ベンチャーへの出向はどのような流れで決まったのでしょうか?
そのベンチャーの社長とは元々一緒に仕事をしたことはなかったのですが、同じ部署で面識はありました。そんな中で『大路はミサイルよりもこちら仕事が向いているから』、とお声掛けを頂き、その後、社内で打診があった、という形ですね。
ですので、かなり属人的になりますね。
――――出向先のベンチャー企業のどこが魅力だったのでしょうか?
大きく二つあります。
一つが社長がすごく魅力的だったということ。
その社長は、ドローン領域というよりはビジネスマンとして、経営者として色々と経験がある魅力的な方だと感じていたので学べる事は沢山あるだろうと感じていました。
もう一つが、私は好奇心旺盛な人間なのでAIやドローン関連のビジネスをやってみたいという気持ちがあったというこの二つですね。
――――ドローンに関わってみていかがでしょうか?
難しくてとても面白いですけれども、まだ潮目が読めないという感じです。
潮目が読めないというのは、流行っていくのか縮小していくのかというところが読めないですね。
――――なにが潮目を分けるのでしょうか?
…世相でしょうか(笑)
世の中の雰囲気みたいなところでどう動いていくのか変わっていく、という風に考えています。
これは絶対に必要だというのは分かっていても、『いつ』必要なのかという点に関しては意見が分かれるんです。普及が今年なのか五年後なのか十年後なのかという事に関して、それが誰も分からないといったような状況ですね。
――――現在の仕事内容について教えて下さい
僕は東北の6県を担当し、自治体に対して当社のサービスを売っているという感じです。
我々はドローンで撮った写真を解析することによるサービスフィーを頂いており、農協とか農研機構とかそういった所にアプローチしてきます。
いわゆる農家さんに対してもアプローチはするのですが、サービスを売るというよりはヒアリングをさせて頂いています。
――――具体的にはどのようなサービスを提供されるのでしょうか?
例えば、田んぼのお米の写真をドローンが撮影しAIが画像を分析をするとその稲の色味などから生育状況が分かったりします。
他にも、雑草を見つけることで、その箇所に対してのみ除草剤を撒いたり出来るようになります。今までは全面に撒いていた除草剤をその局所にのみ撒くことによって生産コストを下げたりすることもできます。
他の例としては、キャベツがあります。
ドローンで撮影し、AIで画像分析することによって、どのサイズのキャベツがいくつ収穫出来るのかが見込めるので、農家や自治体からすると売り先の確保などの工数が削減出来たり様々な点で効率化が可能になります。
――――ベンチャー企業での働き方はいかがでしょうか?
基本的に成果重視なので、働き方は非常にフレキシブルで、リモートで働くのもOKです。世間でリモートでといえば出産を控えた女性とか介護とかっていう切り口が多いかと思うのですけれども、当社の社長の考え方としては最も効率的な働き方を訴求する、という考えがベースにあるので、僕は週1回は自宅で集中する時間を作って作業する、というような働き方をしていますね。
――――実際に2年ぐらい働いてみて感じる商社との違いについて教えて下さい
やはり親会社と子会社では仕事の進め方は違いますね。一番分かり易いところで言えば速さという点ですね。見積もりを出すのにも二週間くらいかかる親会社と、即日出せる子会社。
対面している業界がドローン等のスピードの早い業界となると、親会社ではスピード感が合わない、けどこの子会社だったらやっていけるみたいなところはあります。
あとは、やはり日本でビジネスをする上ではネームバリューはとても大切だと感じています。子会社の名前が知れていなくても親会社に大きい会社があるとなった時に自治体とか研究機関等の反応が全然違っており、強みだなというのは感じますね。
現職に残るという選択肢にも価値がある
――――今後のキャリアについてはどのように考えているのでしょうか?
正直全然わからないです。
ただ、ターニングポイントになるだろうなと思っているのは、親会社から戻って来いと言われた時だと思います。それに対してどうリアクションするかというのはまだ分かっていないです。
同期は1割程辞めましたが、現職に残るというのにも価値があると思うんです。
例えば、当社を辞めた人がベンチャーを立ち上げた時に、当社も顧客になり得ると思うんです。その時に誰も知り合いがいない中で当社のような大企業とビジネスを作っていくのと、同期が残っていて、その同期を切り口に話を広げていくのでは断然違うんですよね。
そういう意味では辞めるのが良いという訳ではなくて、会社に残り、そういう辞めた同期と当社のプラットフォームを繋げる事が出来るような役割の人というのはとても大事だと感じています。
このまま月日が経って40代とかになって僕らが何かしらの役職に就くような時期、そして会社を辞めた同期が立ち上げた会社も大きくなってきているような時期に架け橋になれれば大きなインパクトが与えられるんじゃないかなっていう風には感じています。
『人』と『好奇心』の二つの軸でキャリアを描く
――――もし仮に親会社から出向解除の人事が出た場合は何を軸に判断するのでしょうか?
『人』と『好奇心』の二つの軸だと思います。
社長が、やはり魅力的だと思えばついていきたいと思いますし、後はドローン領域が伸びそうだと思えばもっと突っ込みたいという風に思いますが…それはもうその時々の潮目を見て判断するしかないと考えています。
――――将来何かやりたいことはありますか?
そうですね。
自分が静岡出身っていうのもあるんですけれども、地方で仕事を作りたいなという気持ちはあります。
現在は地方の魅力的な職場の選択肢は多くなくて、そういったところに関しては面白みに欠けるなという風には思います。極論、地方でも働いたら1000万くらい稼げるような仕事を創り出せれば面白いなという風には感じています。
――――改めてASSIGNの結果を見てみて、いかがでしょうか?
1位人材、2位メガベンチャーの営業職ですね。元々学生時代に塾を立ち上げたなどの経験がありますので人材というのは分かりますね。
ただいずれにしても、商社は下から2番目ということで向いていないと。笑
実際大学の同期からは、いわゆる商社の営業は向いてないとは言われていますが…。
自分の本来の姿を確認するのには良い手段だと思いますね。
ドローンにしても僕のキャリアにしても、今後どうなるかわからないっていうものは怖いよりもすごくワクワクしています。
コメントは受け付けていません。