中央:株式会社リブ・コンサルティング モビリティインダストリーグループ ディレクター 西口 恒一郎 様
右:株式会社リブ・コンサルティング モビリティインダストリーグループ マネージャー 横山 賢治 様
左:株式会社アサインエージェント事業部 グループマネージャー 長谷川 翔

リブ・コンサルティング特有の事業内容や働き方。パーパスを重要視する支援のあり方とは

―― では、ここからは御社の実績・知見をお伺いします。近年はモビリティならびにエネルギー領域で、さまざまな課題が出てきていると思います。そういったなかで、どのようなテーマで支援を行われていますか。

横山様:

各国がカーボンニュートラルを目指し、EVの普及が進むなかで、モビリティ業界の方はエネルギーに対してアプローチしなければなりません。

そして、エネルギー企業の方はモビリティにアプローチしなければならなくなります。

このモビリティ業界とエネルギー企業の融合が生まれる領域を、私たちは「EVトランスフォーメーション(EVX)」としていて、この融合に事業機会が生まれるのではないかと考えています。

モビリティとエネルギーの融合で10領域を定義し、基本的にはその10領域に対して事業開発をメインに推進をしている形です。

―― とりわけ御社の場合、このなかだとどこに強いなど特徴はありますか。すべてを網羅的にやられているのでしょうか。

横山様:

現状、カオスマップの左側半分(EV+エネルギーセット販売など)は、ビジネスとしてすでに立ち上がっているものが多いと思います。

一方で、EMS(Energy Management System:エネルギー管理システム)やVPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)の領域は、EVが広がった未来で整理するビジネスです。

現状、国内のバッテリーEVの普及率は3%未満なので、EMSやVPPの領域は、まだ実証実験やPoCレベルのものも多いと思います。

我々のプロジェクトでは、「いかにEMSやVPPの領域のビジネスを広げていくのか」に対してのコンサルティングになります。

EMSやVPPは、事業構想や事業企画の部分になるため、EV+エネルギーセット販売などとはプロジェクトのテーマが若干違いますね。

なお、左側半分の領域(EV+エネルギーセット販売など)については、まもなく実現する世界に対して、どうアプローチすればいいのかを我々が支援しております。

―― ありがとうございます。全領域を強力に支援されているのですね。EMSやVPPの領域は、御社以外で取り組まれている企業はありますか。

横山様:

EMSやVPPの領域は、むしろ大手企業でやっているケースが多いと思います。

また、左側半分の領域(EV+エネルギーセット販売など)については、ほかのファームではあまりやっていません。

このカオスマップでは、戦略の立案、戦術への落とし込み、現場での実装といった大きな3つのフェーズを示しています。

左下は戦略のフェーズで、左に行けば行くほど戦術への落とし込みや現場での実装が求められます。

つまり、カオスマップ左側のほうが我々の強みであると思います。

―― 御社は両方できるからこそ、未来を描く際にクライアントにとってよい提案ができるのですね。

西口様:

戦略を作る際にも、最終的にどのように現場で実装されるかを検討した上で逆算して行います。

一気通貫でできるのは、ほかのファームではなく弊社を選んでもらえる一つのポイントになっていると思います。

―― コンペとなると、かなり差がつくのではないですか。

横山様:

おそらく、ほかのファームでも「現場レベルで一気通貫できますよ」と、おっしゃると思います。

しかし「そこでの実績となぜ現場に強いのか」をご説明すると、弊社とほかのファームとの差を理解してもらえると思います。

また、弊社がコンサルを行うなかで感じているのが、顧客が最も重視しているのは「戦略を作った後、実際に今月どう売り上げを作っていくのか」ということ。

その点で、私たちがノウハウを持っているところが大きいポイントだと思います。

―― 今後EVXの10領域に対して事業を広げていくところだと思いますが、さらに新しく領域がにじみ出ていくなどの新テーマはありますか。

西口様:

EVが広がっていく未来でいうと、まだまだこの領域自体が増えていくのではないかと思います。

ただ、現状ではこの10領域で大枠は整理ができていて、11、12個目はまだ見えていないですね。

むしろ、新たな領域を見に行く活動をしている形です。

――ありがとうございます。次に、お二人が新しいモビリティ領域に踏み込んだ際のお話をお伺いできればと思います。「どのような思いで、領域を増やしていこうと舵を切られたのか」など、新しい事業を作っていく上での御社だからこそのアプローチがあれば、ぜひお聞きしたいです。

横山様:

弊社のカルチャーとしてよいと思っているのが、やりたいことを誰も止めない風土があることです。

もちろん無責任なのではなく、自分たちがやりたいことに対して、数字として事業として運営できるようになれば誰も止めない。

実際、モビリティ領域の新事業に関しても「こういうところが伸びるよね」と経営陣に伝えると、「いいんじゃない」といった前向きな姿勢でした。

こういった周りの環境もあり、新しい事業に向けて舵を切ることを決めました。

また、新規事業ほど自分たちだけの力ではできません。

さまざまな企業様とご一緒しながら、少しずつ進めてきましたね。

西口様:

今思えば、新しい領域の事業を開始したのは、自分たちの希望だけでなく顧客の声も影響していると思います。
私たちは日々さまざまなお客様にお会いしています。

もともとお客様から求められている内容は、モビリティのなかでもMaaS領域でしたが、エネルギー領域に移り変わってきている印象です。

その点で、弊社の提供価値や機能自体も変えていかなければいけないことも必然的でした。

どちらかといえば、外部からの要請として動かざるを得なかったともいえますね。

横山様:

影響力の大きい業界に関わりながら働けているので、知的好奇心も満たされ、熱心に仕事に取り組めています。

―― 御社はかなり顧客起点だと感じていますが、カルチャーとして強いのでしょうか。

西口様:

強いと思います。プロジェクトのなかで浮かんだ仮説や顧客から挙がった仮説も、実際にはマーケットに当てはめてみないと分かりません。

仮説が浮かんだら、すぐにPDCAを回し、前に進めていきます。

これはプロジェクト内のワークもそうですし、私たち社内での事業づくりでも当てはまると思います。

―― 市場が急拡大をしているなかで、顧客起点の考え方をぶらさずにしていける理由はありますか。

西口様:

「顧客起点からPDCAを回す流れが、最も成功確率の高い方法だ」と皆が納得しているのがあると思います。

ただ、実際にはこれほどきれいに進まないことがほとんどです。

仮説が複数あるなかで、「自分たちが一番いけると思った仮説が、実際は全く市場に当てはまらなかった」ということがよくあります。

弊社メンバーは「自分たちの頭で考えてきたものが、こんなにも外れるのか」と実体験として理解しているはずです。

入社時は「ベストショットアプローチではなくて、ベターアプローチ」とよく言われていました。

弊社はベンチャー企業を支援しているからこそ、市場の声を聞いて高速フィードバックを回す作業に価値があることを、全員が認識していますね。

そこの泥臭さとかスピード感が、おそらくほかのファームとは違うのだろうと思います。

―― ここまで無駄なくPDCAを回されているのは、本当にすごいなと思います。

西口様:

弊社はコンサル以外にも、外部発信の活動も行っています。

セミナーを月2回やっていたり、ホワイトペーパーも月に数本出していたりします。

これらは弊社にとってのリード発掘が目的です。

また「新しいテーマで市場を出したときに、どういう反応があるのかを確認したい」といった目的もあります。

―― 次に、ESG評価(※)についてお話いただきたいです。まずESG評価について、御社がどういったテーマで課題感を持っていて、どういう取り組みをしているのか教えていただけますか。

※ESG評価:第三者機関によって企業の社会的・環境的に配慮した取り組みを評価することで算出される指標

西口様:

カーボンニュートラルは国の重要な目標であり、政府からの補助金も提供されています。

そのなかで、まず「炭素排出量を削減するためのソリューションをどうするか」「どういうソリューションを作ったらよいか」といった事業開発をサポートしています。

また、脱炭素のプロジェクトには「可視化」「削減」「回収」「相殺」の4つのステップがあります。

1、2番目のステップでは、炭素の排出量を可視化し、次に減らせる部分とその方法を考えなければなりません。

そして「それでも出てしまう排出分をどう回収していくのか」あるいは「なんらかの方法で相殺をしていくのか」を検討するのが3、4番目のステップです。

今、大手企業を中心に1〜4のステップに取り組んでいるので、そのロードマップを作って伴走を試みています。

各ステップの新しいソリューションを作っていくのも、弊社が今行っているところです。

―― 御社は本当に上流のところからやられているのですね。

西口様:

もちろん、弊社としてすべての領域にアクセスできるわけではありません。

弊社は、どちらかというと技術面においては弱さがあります。

社内のコンサルタントは理系分野よりは、社会に実装していく上で必要なビジネスモデルの構築するほうが専門領域です。

そのため、技術的な専門領域に関しては、クライアント企業に担っていただいています。

弊社既存メンバーのケーパビリティでいくと、モビリティ関連の専門性やノウハウ、ナレッジは十分にたまっています。

ただし、エネルギー分野に関しては、弊社もまだまだインプット・キャッチアップが必要です。

そのエネルギー領域に長けた人材を外部から募ることによって、包括的な支援体制を確立していきたいのが、今の事業部としての課題です。

―― 非常に大変で難易度の高い取り組みをされていますが、だからこそ御社では素晴らしい経験が可能ですね。

西口様:
そうですね。カーボンニュートラルを実現するためには、モビリティとエネルギー双方からアプローチしていかなければなりません。

「これをできるのは誰?」と聞かれたときに、「コンサル業界のなかでは弊社リブ・コンサルティングが一番できる」といった位置まで持っていきたいですね。

後編はこちら