職務経歴書は、転職活動において書類選考の合否を左右する最も重要な書類だが、人事担当者の視点を知らないまま経歴をなんとなく羅列してしまっている方は少なくない。今回は、エージェントとして数多くの職務経歴書を添削してきた経験をもとに、書類通過率を高めるための実践的な書き方を解説していきたい。
職務経歴書の質が書類通過率を左右する
まず前提として、職務経歴書の質は実際に書類通過率に大きく影響する。
採用担当者が一人の書類に費やす時間は、平均して数十秒から長くても2〜3分程度だ。
細かい部分まで読み込むというよりも、冒頭の職務要約やサマリ部分をざっと見て「会いたいか否か」を判断しているケースが多い。
だからこそ、限られた時間の中で「この人に会ってみたい」と思わせる情報を、冒頭に簡潔かつ的確に配置することが極めて重要になる。
筆者の支援経験では、職務経歴書の冒頭3〜5行を改善しただけで書類通過率が大きく改善した事例は数多い。
逆に、経歴をただ時系列で並べただけの書類は、どれほど優秀な方であっても担当者の目に留まらず通過できないことがある。
では、具体的にどのように冒頭を構成すべきなのか。
ここで鍵となるのが「実績型」と「スキル型」という2つのフレームワークである。
実績型とスキル型で書き分ける
職務経歴書の書き方は、自身の職種や応募先のポジションに応じて、実績を重視する「実績型」とスキルを重視する「スキル型」に分けて考えるとわかりやすい。
実績型は、営業職や事業開発職など、数字で成果を示せる職種に適したアプローチだ。
この場合、職務経歴書の冒頭で、どれほど高い成果を出してきたのかを端的に訴求する必要がある。
ここで注意すべきは、実績を正しく伝えるための要素に抜け漏れがないかという点である。
たとえば「上位5%の成績を残していた」とだけ書いても、どのような母集団で、どの程度の期間にわたって達成していたのかがわからず、訴求力としては不十分だ。
実績を正しく表現するために必要な要素は、「どの母集団で」「何人中」「どの期間で」「何位だったか」の4点である。
たとえば「全国営業500名中、2年連続で売上トップ10に入った」といった記載であれば、実績の水準が正しく相手に伝わる。
もし個人目標がなく達成率を表現しにくい場合には、「新規開拓社数が同期30名中2位」「担当エリア内での顧客満足度1位」など、切り口を変えて表現するのが有効だ。
筆者がよく見かける失敗例は、目標達成率だけを書いて母集団や期間を省略してしまうケースである。
「目標達成率120%」と書かれていても、目標設定の難易度が不明なため、採用担当者は評価のしようがない。
また、実績の期間を意図的にコントロールするテクニックもある。
年間通期では順位が下がるが、直近半年では上位に入っているのであれば、「直近半年の実績」として表現するほうが訴求力は高い。
一方、スキル型はエンジニアやコンサルタント、企画職など、専門スキルの有無が重視される職種に適している。
スキル型では「何人中何位」という順位よりも、通用するスキルを持っているかどうかが重要視される。
そのため、「どんな顧客に対し」「どの規模の」「どんな案件を」「どんな役割で」「どんな技術を用いて行ったか」の5点で表現するのが基本だ。
たとえば「金融業界のクライアントに対し、200名規模の基幹システム刷新プロジェクトをPMとして推進し、AWSを活用したクラウド移行を完遂した」といった書き方は、サマリとしてスキルを的確に表現できている。
近年はDX推進やデータ活用の文脈で、業界知見とテクノロジースキルの掛け合わせを評価する企業が増えている。
スキル型の記載においても、単に技術名を羅列するのではなく、どのような課題に対してそのスキルをどう活用したのかというストーリーが求められる時代だ。
これらの内容を経歴書の冒頭部分——いわゆる「職務要約」や「経歴サマリ」の欄——に配置することが、通過率を上げる最大のポイントである。
なお、稀に履歴書にこうした具体的な職務内容を詳しく書く方がいるが、本来は職務経歴書に記載すべき内容だ。
履歴書ではスペースが不十分であるうえ、プロファイリング能力の高い面接官からは「書類の使い分けができていない」と捉えられるリスクもあるため注意が必要である。
自己PRの記載には注意を払う
職務経歴書で意外と差がつくのが、自己PRの書き方である。
筆者の経験則として推奨しているのは、自己PRを長々と書くのではなく、現職での工夫点や取り組み姿勢を事実ベースで簡潔にまとめることだ。
その理由は、強みや魅力を文章で表現すると、どうしても抽象的になりがちで、採用担当者には「きれいごと」に映ってしまうことが多いからである。
「リーダーシップがあります」「コミュニケーション能力に自信があります」といった記載は、ほぼ全ての候補者が書くため差別化にならない。
それよりも、「メンバー5名のチームで週次の1on1を導入し、離職率を前年比30%改善した」のように、具体的な行動と結果を事実として記載したほうが、はるかに説得力がある。
また、自己PRに書いた内容は面接で必ず深掘りされるという点にも注意が必要だ。
1次面接で指摘された内容を、2次面接で修正して話すことは難しい。
書類に書く内容は、どの面接でも一貫して語れるものに限定しておくのが安全である。
加えて、職務経歴書の分量にも気を配りたい。
A4で2〜3枚が標準とされるが、経験年数が浅い方が無理に3枚にする必要はないし、20年以上のキャリアがある方でも要点を絞って3枚以内に収めるのが望ましい。
採用担当者が短時間で読む書類である以上、情報量よりも情報の密度と配置が重要だ。
そのため、職務経歴書では実績やスキルの説明をはっきりと記載する一方で、自己PRや強みの表現は事実ベースに留めておくのが賢明である。
職務経歴書の書き方ひとつで、書類選考の結果は大きく変わる。
「実績型」と「スキル型」のフレームワークを意識し、冒頭に訴求力のあるサマリを配置することが、通過率向上の第一歩だ。
これから転職活動を本格化する方にとって、本記事が実践的な参考になれば幸いである。
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