寄稿エージェント:宗万 周平

日本のSaaS市場は年々拡大傾向にあり、2016年から年10%超の成長率で成長している。今回はその中でも勢いのある①Sansan、②SmartHR、③b→dachのSaaS企業についてご紹介したい。

①名刺管理:Sansan

Sansanは法人向け名刺管理ソフトを提供しており、「Sansan」という社名は日本語の敬称である「さん」とかけて人と人をつなぐ、「San」と「San」をつなぐことで出会いからイノベーションを生み出すという意味が込められている。

名刺管理を電子化することは近年では当たり前になりつつあり、Sansanは名刺管理サービス市場においてシェア80%以上、利用企業は6,000社以上と名刺管理業界のリーディングカンパニーだ。

そもそも名刺管理サービスとはどのようなものかご紹介したい。今でも名刺自体は紙媒体であることが多く、初めましての場合は名刺交換を行う。

従来であれば、名刺フォルダに個人個人で管理しており、雑な人であれば名刺入れがぱんぱんになっていることもあっただろう。

名刺管理サービスがあれば、紙媒体の名刺をアプリで読み込むだけでデータベースに登録される。加えて、社内で情報共有がされるため、クライアントAさんが部署異動し、他の人がAさんと新しく名刺交換した場合、その情報は更新され、最新ニュースとして該当者にメール配信してくれる。

また、名刺交換した人と情報が紐づくため、「○○さんは不動産関係者とのつながりが多い」などの社内の人物像を確認することができる。つまり、社内でその業界に詳しい人やクライアントを多く持っている人のあたりをつけることができる。

直近ではコロナで対面での打合せが減っているが、Sansanはオンライン名刺交換サービスも提供しているため、テレワークやオンライン商談がメインとなっている場合でも名刺交換が可能だ。

②労務管理:SmartHR 

SmartHRは人事・労務管理のソフトを提供しており、複雑で不便と言われている社会保険・労働保険などのアナログな制度をテクノロジーでシンプルで便利に変えていこうというコンセプトでサービス提供されている。

入社手続き、退職手続き、年末調整、給与明細などのどの企業でも従業員と発生する人事コミュニケーションを簡略化して、人事領域の業務効率化に貢献している。

従来の社員情報管理などは社員から人事部・HRに対して、紙の書類で情報変更などのやりとりを行うことが多かったが、SmartHRは従業員に直接システム上で情報をアップデートしてもらうことでムダな書類のやりとりなどを減らしている。

また、API連携を行うことで既存の自社システムとの連携や社外システムとの連携などが簡単に行うことができるのでセキュリティ面を守りつつ、ペーパーレスで情報連携可能だ。

SaaSの特徴でもあるが、導入の初期コストが低いことを十分生かしている。人事領域は規模が大きい企業であれば分業できており、人事部が存在することが多いが、30名以下程度であれば他部署と兼務か経営者が人事も兼ねていることもある。

経営者は業績を上げることに本来時間を割くべきだが、管理業務に追われてしまっている経営者もいる。SmartHRは50人以下の企業であれば無料で利用することができるプランもあるため、分業が整備できていないスタートアップなどで利用が増えている。

③データマーケティング:b-dash

b-dashは株式会社フロムスクラッチが提供するデータマーケティングのサービスであり、小売やクレジットカードなど大量の顧客データを扱う企業への導入が進んでいる。

タクシーの中でおぎやはぎが出演するCMを見たことがある人も多いだろう。広告への投資も多く、急成長しているサービスの1つだ。

b-dashにはデータマーケティングに必要な機能が網羅的に備わっているため、他サービスと併用することなくワンストップで価値提供することができている。

大きな特徴の1つがUI/UXが非常に良いという点だ。DataPalette(データパレット)というb-dashの機能により、データの取込、統合、変換、活用などの処理を画面上の操作で実行することができるため、ITリテラシーが高くない新入社員やアルバイトの人でも使うことができる。

b-dashは2019年のグッドデザイン賞を受賞しており、データマーケティングという一見専門性が高そうな領域の業務ハードルを使いやすいインタフェースで実現したことが受賞の背景にある。

とはいえ、全く使っていなかったサービスを導入する場合、レクチャーなどに時間がかかるが、2種類のオンボーディングプログラムが用意されているため、サービス導入のカスタマーサクセス面でも評価が高い。

以上、今回は勢いのあるSaaSサービス・企業を3つご紹介した。SaaS市場はこれからも成長市場であり、ユーザー側・サービス提供側どちらもその人口は増えていくため知識として抑えておくことをおすすめする。