新型コロナウイルス感染症の影響により、採用活動がオンライン化していることは言うまでもないが、その流れを効率化するためのAIを活用した採用事例が報告されている。

新型コロナによる影響が継続する今、採用活動をオンライン化することで、時間と場所の制約が取り払われ、採用コストを見直し、より優秀な新卒のみを確保しようとする動きが顕著である。本記事では、コロナ禍におけるAIを活用した採用活動の実態に迫っていきたい。

採用活動のオンライン化が加速し量より質へ

株式会社ヒューマネージが企業の採用担当者向けに実施したアンケート調査(2018年8月30日)によると、新卒採用においてAIを活用もしくは準備中、検討中であると回答した企業が全体の26.3%を占めている。

また、採用予定人数が101名以上の企業においては「すでに導入しているが15.6%」「導入が決まり次第準備中が2.2%」合計17.8%が積極的な姿勢だ。

AIの介入度については各社に違いはあるが、過去の合格者の傾向、企業が採用すべき人材の特徴をAIが学習することで、あらかじめマッチング度の高い人材を選別できる。

つまり、コロナ禍で先行きが不透明な状況下では、AIを有効活用し、量より質を確保するという傾向が現れている。

採用活動になぜAIを導入するのか

人材採用においてなぜAIを導入するのか、より深く考えていきたい。

入社後活躍が期待できる高度人材の母集団を形成しやすい

応募人数が数百名以上の採用規模となれば、その中から自社の採用基準に見合う人材を探し出すことは容易ではない。しかし、過去に採用した人材データをAIに学習させれば、入社後活躍が期待できる高度な人材をあらかじめ選別し、母集団を形成しやすいのだ。

また、採用担当者の負担軽減にもつながり、書類選考から一次面接までの時間短縮も可能だ。また、採用活動が効率化することで、他社に先駆け高度人材を獲得しやすいのも理由の1つだろう。

選択と集中で質の高い採用活動を可能にするため

前述のとおり、採用活動にAIを活用することで、書類選考から面接までのプロセスを効率化できる。当然、その分の人的リソースを二次面接や最終面接に費やさせるわけだ。その結果、高度人材獲得に向けて、より質の高い選考が可能になる。

また、採用基準を明確に定めても採用担当者の間で認識にズレが生じることもあるが、AIであれば主観や好みに左右されることなく、分析結果をもとに公平な合否を判断できるだろう。

採用活動で広がるAI活用の実例

採用活動において、どのようなシーンでAIを活用しているのか、ここでは実例を交えて紹介したい。

書類選考時間を7割削減:横浜銀行

まずご紹介したいのは神奈川県全域をカバーする横浜銀行の事例だ。横浜銀行では、2019年度の新卒採用において数千件のエントリーシートを選考するため、人工知能AI「KIBIT」を導入。

運用前、現役行員300名を対象に、採用時のエントリーシート上で、同行への熱意や企業理解を分析するためKIBITを導入した。その結果、志望度の高い学生を選考でき、書類選考にかかる時間を約7割短縮したのだ。

自己PR動画にAIによる解析判定を導入:キリンHD

キリンホールディングス(キリンHD)では、2021年3月5日に2022年度の新卒採用において動画選考におけるAIの実証実験を行うことを発表。具体的には、事前に承諾を得た応募者に対し、学生のPR動画から表情や仕草を読み取りAIが定量化する。

応募者の第一印象や先入観にとらわれることなく、公平な選考を進めるのが狙いだ。同社では、AIを採用活動に取り入れることで、エントリーシートやPR動画の大幅な選考時間短縮を期待している。

今回ご紹介した採用活動におけるAIの導入事例は、ごく一部であるが、このほかにもAIによる一次面接を採用するなど、さまざまな取り組みが加速している。

コロナ禍など先行きが不透明な状況において、必要最小限のコストで質の高い人材を確保するためには、採用活動の精度を向上させるためにもAIの導入が不可欠となる。本コラムがトレンドを掴むきっかけになれば幸いである。