新型コロナウイルス感染症の流行により、あらゆる業界においてオンライン商談の活用が進んでいる。なかでも商談機会の多い不動産業界では、今まで対面が中心であった商談をオンラインに切り替える必要性が迫られた。本記事では、不動産業界におけるオンライン商談の可能性について見ていきたい。
オンライン商談のメリット・デメリット
不動産業界は、デジタル化・オンライン化がやや遅れていると言われている。2020年11月、転職サービスを展開するエン・ジャパン株式会社は、業種もさまざまな1,056社の企業に対して「オンライン商談」に関するアンケートを実施。
その結果、73%が「2020年3月以降(新型コロナウイルス流行後)にオンライン商談を導入した」と回答し、コロナが商談に大きな変化をもたらしたことがわかる。
業界別の導入率を見てみると、広告・出版・マスコミ関連が88%、IT・情報処理・インターネット関連が83%と高い導入率であるのに対し、不動産業界は39%と低い結果となった。
オンライン化が遅れているとされる不動産業界であるものの、コロナ禍の長期化によってオンライン化の必要性が迫られているのが実情である。
実際に不動産の売買においても、「現地に足を運ぶのは最低限に抑え、Webで案内を受けたい」という顧客ニーズは高まっている。不動産業界において、オンライン商談を進めるメリット・デメリットをまとめると以下の通りである。
メリット
・遠隔地でも商談が可能
・社員の交通費が不要になり、コスト削減につながる
・移動時間が削減でき、商談の効率化につながる
・コロナ禍であっても商談機会を逃さない
デメリット
・機材・通信環境を整える必要がある
・オンライン商談に向けての新たな社員教育、研修、勤務体制の改革が必要である
・顧客側がネットやオンライン会議ツールに不慣れな場合、ハードルとなる
・不動産を決めるにあたって「最終決定は内見をして決める人」が多数
このように、オンライン商談にはメリット・デメリットの両方が存在する。
不動産業界におけるオンライン商談の活用内容
では、不動産業界のどのような場でオンライン商談が活用できるだろうか。不動産業界におけるオンライン商談の具体的な内容を見ていきたい。
物件紹介
これまで対面で物件紹介を行う際には、顧客に間取り図を見せながら物件について話すのが一般的であった。手元にある資料しか見せられない分「すぐに用意できない物件については後日紹介する」という形をとっていた企業も少なくない。
しかしオンライン商談であれば、遠隔にいる相手にデジタルの間取り図を見せながら会話できる。また、デジタルデータとして全ての資料を保管しておけば、その場で顧客の要望や条件などを聞き出してぴったりの物件をスピーディに画面上に見せることも可能である。会話をしながらその場にあった資料を提供できるのは、オンライン商談の強みだろう。
新規顧客獲得の営業
新規顧客獲得の営業にも、オンライン商談は有効だ。アウトバウンドで獲得できた見込み客に対してオンライン商談を行えば、スピード感をもって営業が可能である。
また、「新たな顧客と不動産売買の契約や賃貸借の契約を交わす際には、資格のある宅地建物取引士が重要事項の説明をしなければならない」という規則が宅地建物取引業法によって定められている。
これをオンラインで行えれば、重説を行う宅地建物取引士も一拠点から全国のお客様に対応できるようになる。
対面であれば1つの営業所に複数人の宅地建物取引士を配置しなければならないが、オンラインであればその必要がない。宅地建物取引士がどこにいても全国の顧客に対応できることになるので、人件費の削減・効率化につながる。
オンライン内見
オンライン内見は、不動産会社のスタッフが現地(賃貸物件)へ行き、オンラインを使って映像や音声で物件内の紹介をするサービスである。インターネット上で内見ができれば顧客は物件に足を運ぶ必要がなく、交通費や時間を削減できる。
また、その場で詳しく見たい場所を伝えれば、見たい場所を拡大するなどを依頼することも可能である。写真と異なり見たいポイントを重点的に確認できるため、認識のずれが生じにくい。
不動産業界におけるオンライン商談の課題は「内見」のあり方
不動産業界ではさまざま場面でオンライン商談が活用されているものの、課題として挙げられることが多いのが「オンライン内見」だ。現地に足を運ぶ必要のないオンライン内見だが、購入する・しないの最終的な決断は、実際に物件を見て判断したい人が圧倒的に多いのである。
現地に足を運び、物件の立地はどうか、物件そのものに問題がないか、修繕の必要性はあるかなどが判断できない限り、購入に至らない顧客も少なくない。
また、オンラインでは臨場感やリアル感が伝わらないのが懸念点である。特に部屋の匂いや騒音、日当たりなどは実際に出向かないとわかりづらい。特に匂いや騒音に関しては、人によってどう感じるかがわからないため、会社側として言葉で伝えづらいのである。
このように、不動産業界におけるオンライン商談には、どうしても限りがある。対面での安心感やきめ細やかな対応を保ちながら、Webでの利便性を提供できるオンライン商談のあり方が求められるだろう。
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