寄稿エージェント: 宗万 周平

現在のゲーム業界では、Nintendo Switchがライバル商品を圧倒している。据え置き型でも携帯型でも使えるなどの万能性から、多くのユーザーの支持を集めている。

今回はSwitchが長くブームになっている要因を解説していきたい。

据え置きかつ持ち運びできるゲーム機

Nintendo Switchは据え置き型ゲーム機でありながら持ち運びができるので、用途が広く、多くの人のニーズを満たしている。

例えば、従来の携帯型ゲーム機は一人でプレイするものが多く、通信環境も自由度に欠ける状況が多かった。

一方、Switchなら出先で一人プレイできるだけでなく、自宅で複数人と協力や対戦も楽しめるため、用途が幅広く、コアなゲームファンだけでなく、ファミリー層やゲーム初心者にも刺さっている。

従来は据え置き型ゲーム機と持ち運びゲーム機は別扱いとなっていたが、そこを統合させてしまい、さらには持ち運びゲーム機としての市場をSwitchは独占している。

任天堂自身も持ち運びゲーム機としてDSを展開していたが、明らかにSwitch一本化に舵を切っており、SONYも持ち運びゲーム機のPlayStation Vitaのサービスを終息させている。

SNSの時代とシナジーを効かせている

Nintendo Switchは、SNS全盛の現代とマッチした機能も充実しており、シェアすることでユーザー飽きさせない仕組みが確立されている。

例えば、YouTubeの配信を通じてゲーム実況者がプレー動画を公開することが流行している。有名人がゲーム動画を投稿することも増えており、任天堂のコントロール外でマーケティングが発動していることも販促に寄与していることは大きい。

自分の中でゲームをやり切ってしまったとしても、SNSなどで動画を見ることでまたやろうと再開したり、購買行動に繋がったりと従来よりもゲームの楽しみ方が多様化している。

言わずもがな、コロナの影響で外出が制限されていることも外部要因として大きい。

外出ができない中でコミュニケーションの場が減少しているが、オンラインのゲーム上でコミュニケーションすることが当たり前になっている。

ゲームを通じて、実際の友達とコミュニケーションを取るだけでなく、顔を合わせたことがない人ともゲームを通じて友達が作れるようになっているため、コロナの影響で家にいることを余儀なくされた状況は任天堂にとっては追い風となっている。

ゲームソフトのデジタル・オンライン化

同社にとって収益を押し上げる要因となっているのが、「ネットワーク事業」だ。

ここでいうネットワーク事業とは、Nintendo Switch向けのオンラインサービスである「Nintendo Switch Online」(月額サブスク)を軸にした有料サービスのことだ。

Nintendo Switchではダウンロード販売も本格化しており、2018年9月より正式サービスになり、有料化された。

ネットワーク事業での売上は年々急成長しており、多くはサブスクの会員費と考えられる。

任天堂は、現状での有料会員数を約1500万アカウントとしている。任天堂の顧客は他のプラットフォームに比べ年齢層が低いと言われているが、それでも市場の「ネットワーク化」は避けられず、ネットワーク事業からの収益が今後も伸びていくものと推察できる。

また、ソフトタイトル1つあたりのLTV(Life Time Value/ライフタイムバリュー)も長くなっている傾向にある。要はタイトル1つあたりを飽きさせないようにして、価値を多く生み出すようにしている。

この背景としては、ソフトがデジタル化することで1つのタイトルに対して続編を追加で販売したり、スピンオフ編として追加することが容易になった。

開発側もユーザーのニーズに応えながら即編のコンテンツを出しやすいため、拡張性はありながらも、大きく外すことも少なくできる。

ダウンロードコンテンツと呼ばれるものだが、1つのタイトルを新規で作成するよりも投資対効果は高く、既に本筋をプレーしているユーザーに対して新しいコンテンツを訴求することで購買にも繋げやすい。

このように、複数の要因が入り組んでいるが、任天堂は戦略的にSwitchを軸に業績を伸ばしている。このままゲーム業界の覇権を取ることができるか注目したい。