デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 馬島 聖様
デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員 濱浦 健一郎様
株式会社アサイン 取締役 奥井 亮
システム領域で経験を積み、コンサル業界に参画
――まずはご経歴を伺えますか。
馬島様:
ファームとしては2社目で、会社は3社目です。
2社目まででSAP人事モジュール、特に給与領域のSI現場を中心にコンサルタントとしての経験を積んだのちに、デロイトに参画しました。
デロイトUSから赴任してHRTサービスの立ち上げに関与していたマネージングディレクターから声をかけてもらって、グローバルでHR変革をするという世界観の中でテクノロジーが活かされる姿を知り、新たな視界が開ける気持ちで飛び込みました。
濱浦様:
私は1社目はSIer、2社目は他の外資ファームで働いていました。
1社目ではシステムをとにかく組んでいたのですが、第二新卒のタイミングで転職しました。
次に働くところでは10年続けるか、予め決めたランクに昇格するまでは働こうと決めて、2社目では今と同じような人事領域を担当していました。
そのため、実はデロイトには早いタイミングから声を掛けていただいていたのですが、先ほど言ったような決意もあって、少しお待たせしてから参画しました。
変わるHR領域でHRTが果たす役割とは
――コロナ禍により組織、人事領域のありかたが変わってきていると思いますが、その中でHRTはどのようにアプローチをしているのでしょうか。
馬島様:
この状況で我々の支援テーマが大きく変化しているかというと、意外とそうでもないですが、コロナ禍でコミュニケーションの活性化や生産性向上、必要な人材情報の効率的・効果的活用などを推進していくという意識がより明確に出てくることになり、物事が進みやすくなったに過ぎないかなと思います。
濱浦様:
私も同じ感覚です。コロナ禍で新たなテーマが生まれたというよりも、元々やろうとしていたことが加速したという印象です。
ペーパーレスなどもかねてからやりたいと言われていましたが、上手く進んでいかなかった中でコロナで必然的にやらなけらばならなくなった。
そういったものを実現しようとした際には、人事プロセス全体もテクノロジーを導入していく必要があるため、WorkdayやSuccessFactorsなどを使いながらペーパーレス化と併せてやっていきましょうという流れになってきていますね。
――そういった取り組みを進める中で、詰まるポイントとか、キーポイントはどういうところになりますか。
馬島様:
昔から人事領域のテクノロジー導入は効果の訴求が難しいと感じています。DXという目的意識が明確になっている時でさえ依然として難しいポイントですね。
濱浦様:
現場では、デジタル化への心理的ハードルが高く、変化を強くは望んでいない印象です。
これまではどちらかというと人事部内で使う人事のオペレーションなどのシステムをどう作るかというのが焦点でした。
今はいかに従業員に使ってもらうか、いかに従業員の働きやすさを改善するかに焦点が移ってきています。人事は取り組むことが全従業員に影響を及ぼしてしまうこともあり、少し間違ったことをするとすぐにクレームが来るため変化に敏感です。
そこが踏み切れない1つの要因になっているかなと思います。
馬島様:
一方でWorkdayやSuccessFactorsを導入するときにはそのような現場の方々の知見や意向抜きでは進められません。
例えばデジタル化の観点で異動のワークフローをどうするかなどを考える際にも、その現場感をわかっている人がいなければ本質的な課題感や要件に合致していなかったり、結局どこを積極的に変えていくかの正しい判断ができなくなります。
そのため、引き続き積極的に巻き込んでいくことになりますね。
濱浦様:
また、業務の視点からデジタライゼーションをできる人材が求められているのにそこが育っていないというのも障壁の1つになっていますね。
――それらの障壁を乗り越える上でユーザー側にどうアプローチをかけていくのでしょうか。
濱浦様:
テクノロジー構築と併せて、業務・制度設計チームやチェンジマネジメントチームとコラボしながらプロジェクトを推進していくことは多いです。
――導入して終わりでなく、それを活用できる状態まで一緒に持っていくということですね。
濱浦様:
活用するためにどうするかというのを、構築段階からお客さんとディスカッションしながらやるのが大事だと考えています。
SIだと作って終わりとなることもありますが、我々は常にユーザーへのインパクトを捉えた上で使い方をディスカッションしていきますし、それこそが我々の強みですね。
あくまで課題ドリブン。顧客にとって高品質の支援を
――これまでも話題にあがっているWorkdayやSuccessFactorsが伸びている要因はなんでしょうか
馬島様:
Workdayはコア人事と言っている、人や組織の情報を網羅的に入れるところから始まるソリューションです。
タレントマネジメントにしても人事の機能にしても、個別最適で考えるのではなく、人事情報をグループ横断で可視化することが変革を進める上で大前提となります。
Workdayは情報の可視化という点で非常に優れているため、グループ横断的に人材のポートフォリオを柔軟にコントロールしたいという課題感があるときの変革の第一歩として有効であり、それが伸びている理由かなと思います。
――では、導入してからどうするかがとても重要になってくるイメージでしょうか。
馬島様:
システムを入れたあとのロードマップを描いた上で、どうすれば変革を進められるか、活用できるかというところまで考えた上で導入していく必要がありますね。
また、特徴として現場主導で進めるようなプロセスが標準になっているところもあり、たとえば現場の管理職が配下のピープルマネジメントを行う上で採用や異動のワークフローを起票するところまで実施することがどちらかというとスタンダードになっているシステムです。
そういう仕事の進め方をするように、組織を変えていけるか、そもそも変えていくべきか、変えていく場合通常一足飛びでいけないため、ステップバイステップでどう変革していくかを計画しておくことが肝になってきます。
濱浦様:
またWorkday、SuccessFactorsに共通しているのは人事の領域でトレンドとなるものが比較的早いタイミングで実装されていくことへの安心感も伸びている要因だと思います。
グローバルでスタンダードとなっている機能が使えることや、グローバルでの実績からセキュリティ面、パフォーマンス面でも安心感を得られますよね。
馬島様:
さらにユーザーコミュ二ティもそうですね。実際に現場で使っている人が発言したり、情報交換をしたりする場が開かれています。
ほとんどそこで疑問が解決できるようになっていますね。
WorkdayやSuccessFactorsに問い合わせると「コミュニティは探したか」と最初に確認されるくらいコミュニティに情報が詰まっています。
――提案がソリューションありきにならないかと懸念を持たれる方もいらっしゃいますが、いかがでしょうか。
濱浦様:
私はSuccessFactorsの担当ですが、Workdayや国産のパッケージの案件をやったこともありますし、ソリューションには縛られないですね。
馬島様:
そういった印象を持たれるのは否めないですし、実際にソリューション指定で提案をする必要があるケースもありますが、あくまで我々がやっているのは何らかのHRトランスフォーメーション課題に対してアプローチすることであり、そこにどういう戦略を描いていくかというところからクライアントと一緒に考えていくことであるという点は大切にしたいと思っています。
濱浦様:
もちろんインプリすることもあります。ただ人的資本開示、データアナリティクスなど、ソリューション軸よりテーマ軸で動くことが多いですね。
馬島様:
ベンダー、クライアントともテーマ軸でお話しすることも多いです。
Workdayを入れると決めている状態のクライアントの場合においても、そもそも何をやりたいのか、やる必要があるのはなぜかというところまで遡ることもありますね。
そのうえで、Workdayでどこまでやってそれ以外はどうするかとかも含め、そのテーマ観点から横ぐしを通して話せることが大切だと考えています。
――貴社で活躍するのは、Workday、SuccessFactorsがわかるのは前提としてさらにHRトランスフォーメーションとは何かと語れる方ということでしょうか。
濱浦様:
いえ、インプリメンテーションもするので、SuccessFactorsやWorkdayについて特化して強い方も重要です。
馬島様:
そういう人も同じテーマ軸でチームとして一緒に動けているというのが私たちの目指す状態です。
濱浦様:
ソリューションからアプローチする人、クライアント課題からアプローチする人がコラボレーションすることがバリューに繋がると考えていますね。
課題ドリブンの人は仮説で走ってしまうので、仮説を確かなものとしてくれるソリューションからアプローチできる人、つまりシステムに精通している人はとても重要です。
ニーズが高まるSIの知見。SIer出身者が描けるコンサルでのキャリアとは
――SIer出身の方がはいったときのキャリアパスはどのようなものがありますか
濱浦様:
我々はコラボレーションをよくするので、組織変革部門で人的資本開示を担当しているメンバーや、カルチャーのチームなどどこでも組みます。
ナレッジ、キャリアの幅を広げるチャンスはいくらでも転がっていますよ。
自分はSuccessFactorsのチームにいるから幅が狭いと感じるのではなく、自分から接触を図る主体性が欲しいですね。
実際、Qualtricsというサーベイのツールで仕事しているコンサルタントが「カルチャーの仕事をしたい」といって、従業員エンゲージメントを高めるためのサービス開発案件に入っていった事例もあります。
馬島様:
そういう能動的な動きも歓迎します。
濱浦様:
社内公募の制度もありますが、異動よりもコラボレーションという形で楽しんでほしいなと思います。
異動するとテクノロジーの強みを捨てているようでキャリア的にはもったいない印象がありますね。
馬島様:
どういう風に繋げていくか、広げていくかという発想の方が大切ですよね。
濱浦様:
デロイトはテクノロジーに対するリスペクトがかなり大きいです。
最初私が入った時にはテクノロジー領域の走りたてだったのですが、会社全体がテクノロジーの必要性を認識し、サポートを得られたからこそ、規模を拡大してこれたと考えています。
――SIerの人がコンサルに入った時にどんな強みが活かせるとお考えですか。
濱浦様:
システムを知っているということはやはり強みです。システムって大体こういうことできるよね、こういうことやろうとしたらこういうロジックになるよなと仮説が持てるのは大きいです。
馬島様:
SIで必要になるプロジェクトマネジメントを知っていることは大きな強みになると思いますね。
少し勉強しただけでできるようになることではないので、たとえPMやPMOの経験がない方でも、個別ファンクションの役割を担う中でプロジェクトがどういう流れで動くかを身をもって体感できていることは大きな財産だと思います。
濱浦様:
面接で何のコードを勉強すればいいかと逆質問で聞かれますが、まずは自分の会社のシステムの方法論をしっかり覚えてきてくださいと伝えます。
1つ事例を深く知っていることが入社後に活かせると思います。
――デロイトに合う価値観、お二人のチームに合うソフトスキル面があれば教えていただきたいです。
濱浦様:
Talk straightですね。なんだかんだ言わないと伝わらない側面もあるので、抱え込まずに言える人が強いです。
我々は言ってくれた人を無視しません。したいと言われたことはサポートしたいと思っています。
アサイメントの面でも、やりたいことが本人のスキルやこれまでのアサイメントと違っても1回チャレンジさせてみるという文化があります。
――足元のバリューよりもキャリアを優先させているということですね。
濱浦様:
ただし、言う代わりに自分でやらなければいけないことをしっかりやってきているかというのが重要です。
今できていないのにやりたいと言えば、やらせてあげようとは思うものの、果たしてやらせた方が本当に良いのかという判断が入ってきます。
まず自分の足を固めた上でモノを言える人は強いですね。
――一方でこういう人は難しいというのはありますか
馬島様:
一人で抱え込んで黙々とやりたがるタイプですかね。
濱浦様:
抱える前に一度出して欲しいです。10%の状態でも良いので出してくれればそこでディスカッションができますし、その10%から我々が学ぶことがありますので。
馬島様:
Open-Mindedというか、たとえばこういう人に聞けば自分では気づけなかったことに気づけるかもしれないという発想で動けるかが大事ですね。
濱浦様:
あとは余裕がある人ですかね。求められることが大きい中で、ずっと何かに追われている感覚を持つと辛いと思います。
追い詰められないためにも、結局段取りを上手く組めるかということです。
馬島様:
そうですね、段取りですね。
危なくなった時に誰かを頼るという時間的な余裕が持てるので。
濱浦様:
余談かもしれないですが、我々は仕事するとき最終的に自分が巻き取ったらこのくらい時間がかかるというバッファを持ったうえで締め切りを置く傾向があります。
そういう感覚を持って仕事をすると余裕が持てるかもしれないです。
――全てのビジネスマン共通ではありますが、要求されるレベルも高いですしコンサルタントにとっては特に必要かもしれないですね。
濱浦様:
そうですね。そこは隠さず言わなければならないです、実際高いですから。
馬島様:
考え方としてフィットするしないという観点では、自分自身の価値をクライアントが有効活用できているかという発想ができる方が良いですね。
濱浦様:
単に個人としてのフィーに対する対価を出そうという発想ではなく、「デロイトとして」貰っているお金に対してどう応えていく必要があるか、どうすれば期待を超えた価値提供ができるかを考えるのが重要ですね。
――最後に何か求職者の方にメッセージがあればお願いします。
濱浦様:
コンサルタントという枠組みにとらわれすぎずに応募してきてほしいです。
馬島様:
皆さんが思っている以上にテクノロジー知見が我々の仕事において価値を持ちますので、その可能性を感じてほしいです。
「コンサルの仕事はこう」「自分の経験はこう」と固定的になるのではなくあくまでかけ合わせてビジネスをやっていくものなので、みなさんが持っている経験、例えばテクノロジーの知見にも価値があるということは実感頂きたいなと思います。
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