一般的に大企業は、人材に対して高レベルの学歴・経歴・能力を期待しているため、入社は決して簡単ではない。

そのため、「大企業から別の企業へ転職することは避けたほうがよい」「もったいない」とアドバイスする人も一定数存在する。

ましてや転職先がベンチャー企業なら、大企業と比較すると将来性が不透明で、事業規模も小さいことから、反対意見を持つ人も少なからずいる。

しかし、大企業からベンチャー企業への転職はデメリットばかりではない。

本記事では、大企業からベンチャー企業に転職するメリットと、転職事例などを解説する。

大企業からベンチャー転職するメリット

大企業からベンチャー企業に転職することは、特に今後のキャリア形成において実にさまざまなメリットが得られる。

大企業からベンチャー転職するメリットは、以下の通りだ。

  • 業務のスピード感があり、成長が期待できる
  • 裁量を持って働ける・意思決定に関われる
  • 型にはまらない自由な働き方が実現できる
  • 成長意欲の高い人たちに囲まれた環境で働ける

業務のスピード感があり、成長が期待できる

ベンチャー企業は事業規模がまだ大きくない分、全ての業務に対してスピード感を持って取り組める。

ベンチャー企業は「挑戦することで事業成長につながる」と認識しているからこそ、スピーディに意思決定をし、次々と新しい業務を進めることが許容されているのだ。

一方で、すでに安定した基盤がある大企業では、これまでにない事業展開を計画した場合、慎重になり失敗を避けようとしがちだ。

ベンチャー企業にはそのような基盤がまだないゆえに、失敗を恐れる必要性が低い。

そのため、PDCAサイクルを次々と回して、新しい事業に果敢に挑戦する風土が浸透している。

ベンチャー企業のスピード感に合わせていくことで、自身の経験やスキルを迅速に向上させられるのは大きなメリットだ。

裁量を持って働ける・意思決定に関われる

成長途上にあるベンチャー企業では、大企業と比べて社員一人ひとりに付与される裁量権が大きい傾向がある。

裁量権が大きければ問われる責任も大きくなるものの、早い段階から社内の重要業務に関わることが可能だ。

また、裁量権が大きいことで、課題に対する課題解決能力や、チームを率いるリーダーシップ能力などを発揮する機会にも恵まれやすい。

さらには、会社全体に与えた自身の成果が評価されやすい環境にあり、モチベーションアップにもつながるだろう。

主体的かつ能動的に行動していきたい人には、裁量権が大きいベンチャー企業での勤務が向いているといえる。

型にはまらない自由な働き方が実現できる

大企業では、社員一人ひとりに明確なポジションと職務範囲が設定され、その枠組みのなかで勤務するのが基本だ。

一方で、柔軟性と創造性が重視されるベンチャー企業では、従来の枠組みにとらわれない働き方を選択できることが多い。

それゆえに、一つのポジションに固執することなく、異なる業務やプロジェクトに参画する機会があふれている。

さまざまな業務やプロジェクトに参画できれば、異動や転勤、そして転職をしなくとも、同じ社内で多角的にスキルセットを発展させることが可能だ。

また、ベンチャー企業は自身のアイデアや提案が取り入れられやすく、自由な発想や創造性を存分に活かせるチャンスも多い。

自分自身が新事業の中核に携わることが、大企業に比べて容易なのも魅力の一つだ。

成長意欲の高い人たちに囲まれた環境で働ける

ベンチャー企業には、起業家精神にあふれた人や、イノベーションへの情熱を持った人が集まりやすい。

成長意欲が高く、企業活動を通じて社会によい変革をもたらそうとする人々と一緒に働くことは、自分自身の成長意欲やモチベーションアップにつながるだろう。

プロジェクトでの会話や普段の雑談を通じて、現状の考え方や過去の経験などの話を聞くだけでも、自らのキャリア形成の一助になることも多い。

また、日常的にアイデアの交換や相互学習の機会にも恵まれるため、スキルアップのきっかけもつかみやすい。

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大企業からベンチャー転職でよくある後悔と失敗

大企業からベンチャー企業への転職は、新たな挑戦と成長の機会に巡り合えることがメリットだ。

しかし、一部の人にとってはデメリットが顕在化し、後悔の念を抱くことがある。

ここでは、ベンチャー企業への転職でありがちな失敗や後悔について紹介する。

役割の多様化と責任の増加

大企業におけるポジションや職務範囲が明確化された働き方は、業務を逸脱することが少ないため、自身が負う責任や管理の範囲も自ずと狭くなる。

一方のベンチャー企業は、一社員が複数の職務を兼任することが散見される。

事業がまだ拡大途上である場合、人件費に割く資金に余裕がなく、少数精鋭で事業を安定させようとするのだ。

複数のポジションを経験できることは、中長期的な自身のキャリア形成にはメリットが大きい。

ただ短期的に考えると、目の前の業務が増えて労働時間が増加し、責任の範囲も広がるため、心身にストレスを感じやすくなる可能性がある。

ストレスが顕在化し、疲れを感じるようであれば、誰かに相談したり一呼吸入れたりすることを意識すべきだ。

カルチャーやチームの不一致

大企業とベンチャー企業では、企業文化や社内の雰囲気、働き方にさまざまな相違点がある。

それゆえに、大企業から転職するとギャップに悩む可能性は否めない。

また、コミュニケーション一つ取っても、大企業とベンチャー企業では配慮すべきポイントが異なる。

チームでプロジェクトに取り組む場合、コミュニケーションの不一致で円滑に業務が進まなくなることは、ベンチャー企業では死活問題だ。

チーム内でのコミュニケーションや業務の進め方に悩んだときに、転職を後悔してしまう層は一定数存在する。

前職でのスキルや経験を活かせない

新興企業となるベンチャー企業やスタートアップでは、新興であるがゆえにこれまでにない問題への解決を迫られることがあり得る。

自分が築いてきたスキルセットが、新たな問題への解決に通用しないことも往々にしてあるのだ。

大企業の経験やスキルセットが通用しないにもかかわらず、なおも前職のスキルに固執していると、ベンチャー企業で成果が出ず苦労する可能性がある。

大企業で得た知見やスキルは、有益ではあるが万能ではないことを自覚し、柔軟に対応できるかがポイントとなる。

成果が見えにくい

確かに、ベンチャー企業は走り出しが早いため、業務自体の草案から実行までのスピード感も早い。

しかし、走り出した後のゴールが思いのほか遠く、なかなか成果として表れないことがある。

目に見えた成果がなかなか表れないことで、プロジェクトの成果が評価されなかったり、成果を示す明確な指標が定まらなかったりと、もどかしさを感じるかもしれない。

自身の働きに対する評価がない状態が続くと、モチベーションの低下や後悔を感じることもあるだろう。

待遇や年収が下がった

ベンチャー企業に限った内容ではないが、大企業から転職すると待遇や年収が落ちる可能性がある。

転職後の待遇や年収に関する調査結果が、Professional Studio株式会社の「スタートアップ企業への転職に関するアンケート」で公開されている。

このアンケートによると、割合としては転職後に年収が上がった人が多い。

ただし、少なからず年収が下がった人もいるため、必ずしも年収が上がるわけではないことには留意しておく必要がある。

また、ほとんどの場合、大企業よりベンチャー企業のほうが従業員向けの福利厚生やサポートが乏しい。

例えば、大企業では家賃補助を受けていたが、ベンチャー企業では補助がない場合もあり得るだろう。

これまでの家賃補助がなくなれば実質家賃負担も増えてしまうため、可処分所得が減り、年収が下がるのと同義になる。

そのような福利厚生やサポート面の変化も加味した上で、ベンチャー企業への転職を検討する必要があるといえる。

ベンチャー転職が向いている人

ベンチャー転職が向いている人の特徴は、以下の通りだ。

  • ゼロから新規事業に携わりたい人
  • 社会に大きな影響を与える事業をしたい人
  • 柔軟性がある人
  • クリエイティビティがあり発想力に自信がある人
  • 将来的に起業したい人 など

ゼロイチベースで新規事業を立ち上げ、企画から改善まで主体的に関与していきたい熱意がある人には、ベンチャー企業の勢いとスピード感が合うといえる。

また、将来的に自分で事業を立ち上げて社会へイノベーションを起こしたい人も、ベンチャー企業向きだ。

上記のような特徴を一言でまとめてしまえば、働くことに大きな意義を見出せる人だといえる。

常に目的意識を持ち、問題解決に勤しみ、成果を出すことに達成感を得られる人には、ベンチャー転職が向いているだろう。

大企業からベンチャー企業に転職した成功体験談

転職エージェントサービスを利用して、大企業からベンチャー企業へ転職を成功させた人がいる。

ここでは、その成功事例を紹介する。

大手生命保険会社から人材系メガベンチャーへ転職

新卒で大手生命保険会社に入社後、人材系のメガベンチャーへ転職された北山様。

前職の大手生命保険会社では、医師や看護師、医療事務に対しての個人営業を担当していた。

成果に対し社内表彰を受けるなど順調にキャリアを積んでいたが、業務でマネジメントを求められるようになったことを機にギャップを感じるようになったそうだ。

マネジメントよりも営業スキルをさらに磨きたいと感じ、転職を決意。

エージェントとの面談を通じて、「人と関わる仕事がしたい」ことを再認識し、現職の人材系メガベンチャーに転職した。

現職の人材系メガベンチャーでは、キャリアアドバイザーとして看護師の転職活動を支援している。

前職と異なり、営業相手を選べないことに難しさを感じる場面もあるそうだ。

ただ、さまざまなバックグラウンドを持つ人材が在籍していて学ぶことも多く、日々充実していると話す。

将来的には、一人で何かを立ち上げることができるような知識や経験を身につけたいと考えているそうだ。

業界トップの証券会社からメガベンチャーのブライダル部門へ転職

新卒時に入社した証券会社から、メガベンチャーのブライダル部門へ転職したA様。

前職の証券会社では、関東圏内の支店で地方営業を担当していた。

数字第一の社内方針に疑問を感じるようになり、さらに顧客第一で働ける環境を求めて転職を決意。

エージェントと伴走することを決められ、自分の価値観にマッチした現職のメガベンチャーに転職した。

現職では、ブライダル部門でブライダル誌やWeb広告の出稿を顧客に打診する営業職に従事している。

目標となる数字は現職でも設定されているが、マーケットを見て根拠を持って出された数字であるがゆえに、納得感を持って働けていると話す。

今後は、常に目標達成を念頭に置きながら、マーケットを見てできることを増やしたいそうだ。

大手インテリア用品販売企業から人材ベンチャーへ転職

新卒で入社した大手インテリア用品販売企業から、ベンチャーの人材紹介会社に転職した石野様。

前職の大手インテリア用品販売企業では、店舗勤務を経験した後、人材教育部に配属された。

しかし、入社半年後から抱いていたキャリアに対する不安や課題感を払拭できなかったため、転職を決意。

エージェントと一緒に現況や価値観の深堀りを丁寧に行い、自分の思い描く理想と価値観に近い現職の人材ベンチャーに転職した。

現職の人材ベンチャーでは、学生の就職支援を担当している。

周囲からの刷り込みに影響された就職先の意思決定から、最善の選択肢を提供できたときにやりがいを感じるそうだ。

将来的には、自分の事業を立ち上げたいと話している。

メガバンクから業界トップの人材ベンチャーへ転職

新卒で入社したメガバンクから、さらなるキャリアアップを求め業界トップの人材メガベンチャー企業へ転職した高野様。

前職のメガバンクでは、法人営業を担当していた。

累計では約100社を担当し、大型案件も任されるほど信頼を得ていた。

業務自体には大きなやりがいを感じていたが、自分自身のスキルが伸びている実感が乏しく、転職を決意。

エージェントとの面談を経てキャリアの方向性を明確にし、現職の人材ベンチャーへ転職した。

現職の人材ベンチャーでは、人材紹介における法人サイド(リクルーティングアドバイザー)を担当している。

入社当初からよい意味でのギャップを感じており、さらに成長できる期待感に満ちていると話す。

今後の展望としては、人材領域の知識を身につけ、この領域のプロフェッショナルを目指していきたいそうだ。

大企業からのベンチャー転職を成功させるポイント

大企業からベンチャー企業への転職を成功させるには、いくつかおさえておくべきポイントがある。

ここでは大企業からのベンチャー転職を成功させるポイントを紹介する。

  • 中長期的なキャリアを考える
  • ベンチャー企業との相性を考える
  • 応募企業の成長性や業務内容をよく調べる
  • 転職エージェントに相談する

中長期的なキャリアを考える

ベンチャー転職をすると、大企業にはないさまざまなメリットが得られるのは事実だ。

ただ、「ベンチャーであれば成長できる」「新規事業に携われる」などのメリットは、どちらかといえば短期的なキャリア形成への影響が大きい。

転職を検討する際には、短期だけでなく中長期的なキャリアも見据えなければならない。

転職先で中長期的なキャリア形成が見込めないと、また転職を検討する必要性が高くなるからだ。

一方で、「キャリアの方向性が明確でない」「そもそもベンチャーに向いているのか不安を感じている」という人もいるかもしれない。

自身のキャリアプランを客観的に検討していただきたい。

ベンチャー企業との相性を考える

大企業とベンチャー企業では、企業風土や働き方にさまざまな相違点がある。

仮に、大企業の企業風土や働き方にしっくりきていた人にとっては、ベンチャー企業の企業風土や働き方が合わない可能性がある。

ベンチャー企業の企業風土や働き方に合わせて働くことが可能なのか、今一度検討してから転職活動を進めることが望ましい。

大企業出身者がベンチャー企業でギャップを抱かずに働くには、ベンチャー企業独自の進め方や挑戦的な環境を受け入れ、柔軟なマインドセットを持つことが重要である。

応募企業の成長性や業務内容をよく調べる

ベンチャー企業と一口でいっても、企業により特徴はさまざまだ。

それゆえに、応募する企業の成長性や事業内容を精査する必要がある。

転職エージェントに相談する

ベンチャー企業と一口にいっても、在籍人数や事業規模などでフェーズが異なるのが実情だ。

ベンチャー企業の各フェーズとしては、以下の図を参考にしてほしい。

ベンチャー企業のフェーズ

上記の図の通り、ベンチャー企業は各フェーズによって、個人に求められる経験や得られる魅力が異なる。

それゆえに、応募しようとしているベンチャー企業が現時点ではどのフェーズにいるのかを把握する必要があるのだ。

ただ、求職者が自分自身でベンチャー企業のフェーズを調べても、なかなかわかりにくい。

ベンチャー企業の各フェーズの魅力や、現時点での立ち位置などを正しく把握するなら、転職エージェントに相談することがおすすめだ。

転職エージェントサービスを展開しており、ベンチャー企業に詳しいエージェントが多数在籍している。

伴走型エージェントとして、初回の面談で求職者のキャリアやスキルの棚卸しを行い、希望に沿った最適な求人を紹介している。

また、求人を募集している各企業の人事担当者との綿密なコミュニケーションにより、求職者に有益な採用情報を提供できる体制も整っている。

ベンチャー企業への転職で悩んでいる人は、ぜひ一度ご相談いただきたい。