近年、ITの活用でビジネスモデルや社会に変革をもたらすDX(Digital Transformation)やRPA(Robotic Process Automation)が注目を浴びている。

そのなかで、ITの人材不足は深刻だ。例えば、経済産業省の発表によると2030年には最大で79万人のIT人材が不足すると言われている。

本記事では、このような背景も踏まえて、ITエンジニアの市場価値について言及したい。

国内ITエンジニア転職市場の動向

ITエンジニアの市場価値を紐解く上で、転職市場の動向には注視したいところ。2021年下半期のITエンジニアにおける市場動向を予想すると、DXやフルリモートというキーワードを中心に経験者採用が活発である。

もちろん未経験採用も増加してはいるが、DXやRPA、フルリモートの導入初期であるため未経験よりも経験者を中心とした採用が継続している。このような背景から、人材の需要に供給が追いついていないのが現状である。

転職に成功している事例をみると、社内SE、インフラ系・アプリ系エンジニアを中心に、クライアントの課題発見からシステムの設計・開発・運用など上流工程を担える人材が重要視されている。

SIerで培った設計・開発・運用スキルやコミュニケーション能力を保有する人材は、より高く評価されるだろう。

人材価値の高いITエンジニアになるために

人材不足が深刻化するITエンジニアは、経験者のみならず未経験者にも採用の門戸が開かれている。しかし、だからと言って容易に転職できるわけではない。

業界未経験から人材価値の高いITエンジニアになるためには、今まさにトレンドであるDXやRPA、リモートワークなどシステムの設計・開発・運用までを担える人材を目指す必要があるからだ。

そのための第一歩として、SESでの契約を目指すのも1つである。SESは、「System Engineering Service」の略であり、委託契約を結んだクライアント企業でシステム開発や保守、運用を担う仕事。

未経験者や経験値が浅いエンジニアは、ベテランエンジニアとセットで働くことも多く、高いスキル獲得に繋がる。

一方で、一定の経験を積んだITエンジニアの場合は「何のシステムを」「どのように改善したのか」を明確にした上で、転職活動をすると実績が評価されやすい。

資格ではなく実績が最大の評価対象であるからこそ、関わったプロジェクトの予算や規模、導入前後の実績まで把握した上でアピールするのだ。

より能動的な姿勢を応募先に伝えることで、転職チャンスも増えるだろう。

市場価値を高めるITエンジニア職種

最後に、DXやRPAが加速する現代において、市場価値を高めるITエンジニア職種についてご紹介したい。

社内SE

当然であるが、DX推進の影響もあり、システム開発を内製化する企業が増加している。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が発表した「IT人材白書2020」においても、従業員1,001名以上の企業で内製化を進めているとあって、今後も高い需要が期待できるだろう。

AIエンジニア

自動車業界に100年に1度の大変革をもたらしている「CASE」。当然であるが自動運転にも画像や音声認識を活かしたAIの導入が進められている。専門性が高く限られた人材だけに、早急な人材確保が必要である。

VRエンジニア

VRエンジニアとは「Virtual Reality」の略であり、仮想現実に関する技術を開発するエンジニアのことである。最近では、米国の大手ソーシャル・ネットワーキング・サービスであるFacebookがVRに注力し、メタバースと呼ばれる仮想空間の開発を強化している。今後ますます注目の市場だろう。

IoTエンジニア

IoTエンジニアとは「Internet of Things」の略であり、家電や自動車などあらゆるモノとインターネットを接続するための機器やソフトウェアを開発するエンジニアのことである。AIと並んで、世界中でIoTデバイスが普及しており、需要は拡大し続けている。

当コラムでは、今後さらに成長が予測されるITエンジニアの市場価値についてご紹介させていただいた。ぜひ、システムの設計・開発・運用までを担える人材をポイントにキャリア戦略を練って欲しい。