組織において、人材育成や人材評価、組織の活性化に向けた取り組みは欠かせない。そんな組織の取り組みに活用できるのが「ハーマンモデル」だ。

ハーマンモデルとは、脳科学に基づいた人の思考を知る手段である。今回はハーマンモデルの概要と、人材育成への活かし方について迫っていきたい。

ハーマンモデルとは

「ハーマンモデル」とは、最新の大脳生理学の研究成果をもとにネッド・ハーマン氏によって開発された「利き脳(思考スタイル・癖・好み)」を知るための手法である。

まずは「そもそも効き脳とは何か」という観点から説明していきたい。人間は、無意識のうちに活用する「利き腕」や「利き目」があるように、思考にも「利き脳」が存在する。

その思考の特性が、本人のコミュニケーションのあり方や問題の解決方法、マネジメントスタイルなどあらゆることに影響している。

こういった一人ひとりの思考スタイルをハーマンモデルの診断を通して把握すれば、人との接し方や組織の編成、活性化などに活かせる、という内容だ。

ハーマンモデルのメリットは、4つに分類された思考の特性を数量化でき、自分や他人の特徴を明確に表せる点である。また、その結果に対する個人の納得感が強いというデータもあり、本人の自己理解にもつながる。

加えて、ハーマンモデルは行動学や心理学ではなく大脳生理学理論に基づいた理論である点も特徴だ。膨大な根拠となるデータを踏まえて10年以上の時間をかけて開発され、その有効性は全米で50以上の博士論文で支持されている。これまで世界的にも多くの企業でハーマンモデルが活用されている。

ハーマンモデルで明らかになる4つの利き脳

ハーマンモデルでは、一人ひとり異なる4つの思考タイプの割合を数値化し、4つの思考のうちどの傾向が強いかを把握できる。ハーマンモデルで分類される4つの効き脳は以下の通りだ。

効き脳詳細
Aタイプ:理性人・論理的な思考を好む
・どんなときでも事実や先例に基づいて考える
・数学的、技術的な事柄に関心を持つ
Bタイプ:堅実人・実践、計画、秩序を重視する
・ミスを繰り返さない
・組織における計画や順序を重視する
Cタイプ:感覚人・感覚で動く
・その場の雰囲気、人の態度、心情を重視する
・チームワークを大切にする
Dタイプ:冒険人・直感と想像力に優れている
・独創的なアイデアや考え方を好む
・目標やビジョンを重視する

上記のなかで「自分がどのタイプの傾向が強いのか」を正しく理解することにより、自身の強みと個性、不得意分野が理解できる。また、それを社内で共有することで、お互いの理解やフォロー、カバーにもつながる。

ハーマンモデルを人事評価制度・人材育成制度にどう活かす

では、実際にハーマンモデルをどのように人事評価や人材育成に活かすのか。ハーマンモデルの診断によって効き脳がわかると、以下のような得意・不得意が浮き彫りになる。

効き脳得意不得意
Aタイプ:理性人・論理的思考
・客観的なデータ
・数学、定量化
・事実、先例
・論理的でないこと
・感覚的
・非効率的なこと
Bタイプ:堅実人・実践、計画、秩序を重視する
・ミスを繰り返さない
・組織における計画や順序を重視する
・リスク
・突発的なこと
・詳細や内容が決まっていないこと
Cタイプ:感覚人・感覚で動く
・その場の雰囲気、人の態度、心情を重視する
・チームワークを大切にする
・効率を重視すること
・私語なし
・説得力を持って話すこと
Dタイプ:冒険人・直感と想像力に優れている
・独創的なアイデアや考え方を好む
・目標やビジョンを重視する
・計画性
・周囲に合わせる行動
・定型業務

上記の内容を踏まえると、例えば論理性や客観的データを重視するAタイプの部下に接する際、「なぜその業務が必要なのかを説明する」「明確にフィードバックする」など工夫すると本人のよさを引き出せる。

一方、「以前からの慣習だからこの業務をやってほしい」と指示を出すのは、本人のやる気を阻害してしまう可能性がある。

このようにハーマンモデルは、より効果的な組織の編成や社内の人との関わり方を検討する上で大きく役立つ。自分が、そして他者がどのタイプかを把握するだけで、よりよい対応の仕方・関わり方が明確になるだろう。