近年、インターネットやSNSの普及により、顧客が様々な情報を容易に得ることができるようになっている。

そのような環境下で企業側が顧客に選ばれ続けるためには、一人ひとりに最適な提案を行うことが重要だろう。

顧客に対して的確な情報を届けるために、多角的に顧客を見える化し、多様なニーズに答える手助けをしてくれるツールが「CRM」である。
本記事では、CRMが重視される3つの理由と導入後の戦略について解説していく。

そもそもCRMとは

CRMは”Customer Relationship Management”の略で、日本語では顧客関係管理と訳される。CRMの定義は組織によって異なる。

狭義には「顧客管理を行うツール・システムのこと」を指すが、CRMの可能性はそれだけに留まらない。

そこで、ここでは広義に「顧客を適切に識別し、ターゲットとする顧客の満足度と企業収益の両方を高めるための、経営における選択と集中の仕組み」と定義しよう。

つまり、CRMは単にマーケティングの一手法ではなく、企業全体に影響を持つ経営の仕組みそのものなのである。

CRMが重視される3つの要因

時代の変化と共に重要性が増してきたCRMだが、具体的にどのような背景から需要が高まってきたのだろうか。

1つ目は市場の変化である。近年は、規制緩和やグローバル化により、多くの企業が市場獲得にしのぎを削っている。

新規に参入した企業は市場獲得に注力し、いかに供給を途絶えさせないかということを重要視する一方で、既に十分な市場を得ている成熟期の企業は、既存顧客の維持が重要課題として挙がる。

どのようなサービスにおいても競合他社がすぐに現れるため、先行優位のタイムスパンが短くなっているのだ。

だからこそ、企業は導入期や成長期から顧客との関係維持を行わなければ生き残れない時代に変わってきているのである。

2つ目は、一般消費者の情報収集力の増大だ。インターネットやSNSの発達により、顧客が得られる情報量が各段に増えている。

競合製品との比較も簡単に行うことができるようになり、顧客と企業にあった情報の非対称性が解消されたことで、両者のコミュニケーションが対等になった。そういった中で顧客に選ばれるためには、相手の本質的なニーズを捉えることが必要だろう。

3つ目は、ニーズが多様化していることだ。ライフスタイルの変化に伴い、顧客のニーズも多様化している。

その変化を適切に捉え、顧客を自社サービスにつなぎ止められるような既存顧客への応対が最も重要である。

今後は常に顧客が何を求めているかを把握し続ける必要があるため、顧客参加型の商品開発やサービス設計など、顧客と共に価値を創造していくという考え方が主流になっていくと考えられる。

CRM戦略の全体像

CRM戦略上において最も重要な目的は、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の最大化である。その為に必要なのが、「顧客のセグメント分け」と「顧客との関係構築」を行うことだ。

顧客をセグメントに分ける

顧客の識別を行う上で大切なのは、顧客データを収集・管理・分析・活用し、自社における「優良顧客の特定」を行うことだ。

実のところ、業界・業種によってその割合は異なるものの、事業売上の大部分は少数の優良顧客が生み出している場合が多い。

そのため、売上を生み出す優良顧客はどの層か、どんな人物かといった特定が経営戦略の要になってくる。

顧客との関係構築を行う

顧客リレーションの構築は、顧客の識別に一定の目途がついた後に行われる。CRMによってセグメント分けし、識別した優良顧客を中心に、あらゆる顧客との関係を構築し、顧客接点の設計と管理を実施する。

ここでは、顧客対応や営業プロセスにおいて、顧客データは収集できているか、他のチャネルとのシームレスな連携が行われているかという観点を押さえて設計を行う。

顧客接点の設計管理を最適化し、識別した顧客に対する適切なプロモーションを行うことで、顧客との関係性がより深いものとなる。

変化のスピードが早い現代では、顧客のニーズを正確に捉え一人ひとりに合わせて柔軟に商品やサービスを変化させられる企業が生き残っていくだろう。顧客から支持され続ける企業になるために、CRMは有効な手段であるといえる。

業務で使う場合もキャリアを考える上でも改めてCRMについて理解を深めることができれば幸いだ。