営業コンサルティング会社とは、自社で独自の商品やサービスを持たず、依頼を受けた企業の商品をその企業の代わりに販売する、または営業力を高めるための支援を主軸とする会社のことである。

また営業コンサルが抜けた後も、その企業が自走できるよう営業の仕組み化までを設計する。博報堂グループの「株式会社セレブリックス」や「株式会社スタジアム」などが代表的だ。

本記事では、営業コンサルティング会社が注目を浴びる理由と営業コンサルの強み、さらには営業コンサルで経験を積むメリット、キャリアについて整理していきたい。

営業コンサルティング会社が注目を浴びる理由

すでに販売部隊をもつ企業が、別途の費用をかけてまで外部のコンサルティングを受けるのはなぜだろうか。

企業が営業コンサルティングを導入するのには、注目を浴びる2つの理由がある。

企業内部のリソースが不足している

昨今のコロナ禍によって、今までのビジネスモデルを踏襲するだけでは生き残れないことが多くの企業内で露呈した。

本来であれば自社で抱える人材を駆使して、企業の体制を強化していきたいところだが、即戦力に適した人員の採用は思ったようにはいかない。

また、新規事業を興そうにも新規事業立ち上げの経験者や立ち上げノウハウがないなど、企業内の人材や成長までの期間などのリソースには限りがあり、また自力での問題解決や営業力強化などの成長レベルにも天井がある。

そこで、このような課題の解決を自社で行うのではなく、解決に関して専門的なノウハウやアイデアを外部から移植して体制を強化していこうとするのが一つ目の理由である。

営業プロセス「The Model」の導入ジレンマ

従来の営業プロセスでは、顧客開拓から受注後のサポートまでを営業担当がワンストップで担うのが基本であったが、SaaSやサブスクリプションモデルの台頭に伴い、顧客は実店舗のみならずさまざまなWebサービスを利用している。

つまり、従来の営業手法では対応しきれないほど、顧客とサービスのタッチポイントが増加しているのだ。

そこで、増加したタッチポイントごとに詳細な数値(来訪者数や顧客獲得率など)を把握すべく営業プロセスを分業化した「The Model」が注目を浴びている。

The Modelは、統合システムのトップ企業であるセールスフォース・ドットコムの福田康隆氏が著書で紹介して注目された営業プロセスモデルの一つである。

以下のとおり、4つのフェーズから構成され、各フェーズの結果が次のフェーズの起点となっている。

・マーケティング:重要の創造と潜在顧客の獲得
 = 来訪者数 ✕ 顧客獲得率 = 見込み顧客数
・インサイドセールス:見込み客の育成と案件の発掘
 = 見込み顧客数 ✕ 商談化率 = 商談数
・フィールドセールス:商談管理と課題解決
 =商談数 ✕ 受注率 = 受注数
・カスタマーサクセス:活動支援と解約継続/追加
 = 受注数 ✕ 更新率 = 継続数

今や営業コンサルティングの教本として地位を確立した The Modelのフレームワークだが、メリットばかりではない。

具体的には、The Modelの体制が必要なのは自社の商品やサービスが世の中に認知されるまでの黎明期から過渡期までであり、十分に認知された発展期から成熟期にかけては分業化にリソースを割かなくても売り上げは維持できる。

つまり、会社としては発展期から成熟期において分業化にリソースを割きたいとは思っていないものの、会社を興してすぐの頃は、商材や企業の認知度もないため、マーケティングやインサイドセールスに頼らざるを得ない。

このようなジレンマを解決するため、適切な時期にピンポイントの介入をしてもらえる営業コンサル会社に注目が集まるというわけだ。

営業コンサルティング会社であれば、商材問わず仕組み化まで対応する卓越したノウハウを確立しており、マーケティングとインサイドセールスの一部を外注できるだろう。

営業コンサルティング会社を経験することの強みとメリット

営業コンサルティング会社はただ商材を売るだけではなく、0から1を生み出しそれを再現性ある仕組みに昇華させることが大きな強みである。

営業コンサルティング会社で経験を積むことで、新規事業を立ち上げる力や0から1を生み出す営業力が備わるのだ。

次に営業コンサルティング会社を経験することのメリットについて解説したい。

幅広い商材を扱うことができる

一般的に、営業コンサルティング会社が扱う商材は、IT商材、広告、人材、不動産など、多業界かつ多業種にわたることが多い。

そのため、営業コンサルティング経験者は幅広い分野の商材を扱うことに抵抗がない。

Saas業界であれば、特定のクライアントにだけ提案をし続けることが多く、当然であるが扱う商材にも限りがある。

仕組みづくりの経験が新規事業の立ち上げに活かせる

たとえば、SaaS業界の営業マンといえど扱う商材は自社の商品だけになり、一つの商品をずっと提案し続けることになる。

また、特定の業界に対してだけ提案することも多く、その先の自分のキャリアやスキルの幅が出にくい傾向があった。

しかし、営業コンサルティング会社では、扱う商材も提案する業界も、配置されるフェーズも、アサインされるプロジェクトによって大きく変わっていくので、プロジェクトごとに自分が望むキャリアへ確実に挑戦し経験値を貯められるのは大きな魅力だろう。

営業コンサルティング経験後のキャリア形成

CRM戦略上において最も重要な目的は、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の最大化である。その為に必要なのが、「顧客のセグメント分け」と「顧客との関係構築」を行うことだ。

顧客をセグメントに分ける

顧客の識別を行う上で大切なのは、顧客データを収集・管理・分析・活用し、自社における「優良顧客の特定」を行うことだ。

実のところ、業界・業種によってその割合は異なるものの、事業売上の大部分は少数の優良顧客が生み出している場合が多い。

そのため、売上を生み出す優良顧客はどの層か、どんな人物かといった特定が経営戦略の要になってくる。

顧客との関係構築を行う

顧客リレーションの構築は、顧客の識別に一定の目途がついた後に行われる。CRMによってセグメント分けし、識別した優良顧客を中心に、あらゆる顧客との関係を構築し、顧客接点の設計と管理を実施する。

ここでは、顧客対応や営業プロセスにおいて、顧客データは収集できているか、他のチャネルとのシームレスな連携が行われているかという観点を押さえて設計を行う。

顧客接点の設計管理を最適化し、識別した顧客に対する適切なプロモーションを行うことで、顧客との関係性がより深いものとなる。

変化のスピードが早い現代では、顧客のニーズを正確に捉え一人ひとりに合わせて柔軟に商品やサービスを変化させられる企業が生き残っていくだろう。顧客から支持され続ける企業になるために、CRMは有効な手段であるといえる。

業務で使う場合もキャリアを考える上でも改めてCRMについて理解を深めることができれば幸いだ。