近年、目覚ましい成長を遂げているSaaS業界。

成長の要因はいくつかあるが、今後のマクロ経済を考えるにあたって、重要な業界の一つであることは間違いない。

成長著しいSaaS業界に転職すれば、事業の成長性・安定性が担保されながら、スピード感を持ったビジネスの経験ができるだろう。

本記事では、魅力が高いSaaS業界へ転職を検討する人に、業界の概要や転職の際に注意すべきポイントを解説する。

ぜひ本記事を参考に、SaaS業界でのキャリアについて考えてみてほしい。

SaaS企業への転職が注目されている背景

SaaS業界全体の盛り上がりと同時に、SaaS企業への転職も人気が高まっている。

ここでは、SaaS企業への転職が注目されている背景を解説する。

SaaS市場が急拡大している

SaaS市場がここ数年で急拡大していることが、注目度を高めている要因の一つだ。

市場の急拡大を裏付ける調査が、One Capital株式会社が実施した国内SaaS市場の動向・予測をまとめた「Japan SaaS Insights 2023」である。

この予測によると、SaaS市場に関して以下の事実が明らかになっている。

  • もし国内SaaS市場が米国と同水準に拡大した場合、同市場規模は現在の3.7倍にあたる4兆円にまで拡大する可能性がある
  • 従来のSaaSにGenerative AIが搭載されることで、生産性が飛躍的に向上し、今後AIを活用したSaaSが一気に増える

勢いのある市場で働きたいと考える人が多いことから、SaaS業界は転職先としての人気も高まっている。

ベンチャーやスタートアップが多く参入している

国内のSaaS企業では、ベンチャー企業やスタートアップ企業の参入が目立つ。

その理由の一つが、SaaSは定期的な課金でサービスを提供するサブスクリプションビジネスであり、継続的な収益を期待しやすいからである。

また、SaaSのビジネスには高いITスキルを持つ人材が必要であるものの、製造業や農業のような土地や備品への投資額は少なくて済む点も特徴だ。

さらに、SaaS市場自体の伸びに期待が高まることで、新興企業の参入が増えていることも大きいだろう。

ベンチャー企業やスタートアップ企業などの新興企業の参入が多いことは、転職希望者にとってもメリットがある。

なぜなら、求職者にとって転職先の候補が増え、自身の選択肢が広がるからだ。

幅広い選択肢のなかから自分の志向に合う企業を探せる点でも、SaaS業界はおすすめである。

創造的な環境と挑戦的なプロジェクトによって人気が高い

概して、SaaS企業の根幹にあるのは、イノベーションとクリエイティビティである。

SaaS企業は従来のビジネスモデルにとらわれず、既存の枠組みを超えた新たな価値創出を目指している。

そのため、社会貢献や新しい価値の創造に意欲を持つ人材から人気が高い傾向だ。

また、SaaS企業には社員自身が新しいアイデアや解決策を追求できるよう、特殊な就業環境や働き方の制度を提供している点も特徴である。

特徴的な就業環境・働き方の一例は、以下の通りである。

  • テレワーク
  • フリーアドレス
  • 私服勤務
  • フレックスタイム制
  • 人材開発、教育のための各種支援 など

年齢に関係なく大規模なプロジェクトやビジネス課題に取り組めることが多いため、キャリアの成長やスキルアップにつながるチャンスに恵まれるだろう。

年齢や勤務歴など関係なく自身のキャリアやスキルを上げられる環境があることも、SaaS企業への転職が人気の理由だ。

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SaaS企業の募集職種

SaaS企業における主な職種と、その役割や仕事内容などを解説する。

  • 営業
  • エンジニア
  • マーケティング
  • デザイナー

営業

自社サービスの販売・利用促進に関わるのがSaaSの営業担当だ。

SaaS業界では、多くの企業で「The Model(ザ モデル)型」と呼ばれる分業型の営業様式を採用している。

The Model型は、営業業務を3つの部門に分業化し、各部門に専任担当者を置いて業務を遂行する様式だ。

SaaSの営業では、主にインサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの3部門に分業化されている。

各部門の特徴は以下の通りである。

部門詳細
インサイドセールス・サービスや製品に関心を持った見込み顧客が抱える課題や悩みを的確にヒアリングし、その後の商談を行うフィールドセールスに引き継ぐ

・基本的にはメールや電話、Web会議など非対面で行われる

・商談までつなげられるよう、第一印象のよさと正確でわかりやすい説明力が求められる
フィールドセールス・インサイドセールスから引き継いだ見込み顧客との商談を成功させ、新規顧客を獲得する

・製品やサービスをわかりやすく説明するスキルや、確実に契約交渉まで踏み込む説得力などが求められる
カスタマーサクセス・サービスや製品を利用している顧客へのフォローアップを行い、継続利用を促す

・綿密かつ丁寧なフォローアップにより、サービスの継続率を高め、解約率を下げることが求められる

エンジニア

エンジニアは、SaaS企業の屋台骨を担う存在といっても過言ではない。

なぜなら、エンジニアが開発するソフトウェアやアプリケーションが、そのまま企業が提供する社会への付加価値となるからだ。

エンジニアは開発だけでなく、SaaSの保守・テストといった運用ベースの業務も担当する。

さらに、クライアントからのフィードバックを参考に、ソフトウェアやアプリケーションの改善・新機能の追加などを検討する。

そのほかの業務は、以下の通りだ。

  • バックエンドやフロントエンドのプログラミング
  • データベースの管理
  • システムのセキュリティ対策 など

マーケティング

SaaSのマーケティングは、マーケティング戦略の策定・実施を担当する職種だ。

他業界と同じく、正しいターゲットに向けて製品やサービスを訴求していかなければ、売り上げを最大化することができない。

売り上げの最大化のために、ターゲット市場の分析や顧客のニーズの把握、競合分析などを行い、適切なマーケティング施策を立案することが求められる。

SaaS企業が採用する具体的なマーケティング施策については、以下のような内容がある。

  • 広告・プロモーションの企画・実施
  • デジタルマーケティング
  • SNS活用 など

上記のようなマーケティング施策を実行しながら、自社の製品やサービスを宣伝し、顧客の獲得につなげていくことがマーケティング職の命題である。

デザイナー(クリエイティブ)

営業やエンジニアなどより募集は少ないが、SaaS企業ではデザイナーの募集も行われる。

SaaSにおけるデザイナーとは、製品やサービスのデザインやユーザーエクスペリエンス(UX)の改善に関わる職種のことを指す。

顧客が製品やサービスの機能をストレスなく利用するためには、レイアウトや色味などの工夫が欠かせない。

その工夫を具体化するために、デザイナーがインターフェースデザインやグラフィックデザイン、ユーザーフローの設計を行う。

設計の際には、ユーザーの視点やニーズも考慮し、最終的に使いやすく魅力的なデザインを決定し実装することが求められる。

代表的なSaaS企業

国内外の多くの企業がSaaS分野でのサービス展開を行っている。

以下に、代表的な企業と概要を紹介する。

企業名概要
Sansan株式会社企業の営業活動・請求・契約関連の情報をデータ化し、一元管理できるサービス「Sansan」を提供している
freee株式会社給与計算・人事労務・税務申告などを効率化するソフトウェア「freee」を提供している
Zoom(日本法人名:ZVCジャパン)ビデオ会議・チャット・モバイルコーポレーションを組み合わせたコミュニケーションソフトウェア「Zoom」を提供している
Chatwork株式会社ビジネスコミュニケーションツール「Chatwork」を提供している
株式会社SmartHRクラウド人事労務ソフト「SmartHR」を提供している
株式会社マツリカ「世界を祭り化する」をコンセプトに、SFAのSaaSアプリ「Senses」を提供している
株式会社カオナビクラウド人材管理ツール「カオナビ」の製造・販売サービスを展開している

どの企業も、各業界の課題や悩みを解決するためのツール・サービスを提供している。

今後は建設業や製造業などのITからは縁遠い業界に対しても、SaaS企業のアプローチが届くようになっていき、SaaS企業の活躍の幅が広がっていくと予想される。

SaaS企業へ転職するメリット

SaaS企業への転職は、求職者にとってメリットが大きい。

ここでは、SaaS企業へ転職するメリットを紹介する。

  • スキルアップや成長につながりやすい
  • 営業の場合「The Model」での経験を積める
  • フレキシブルな環境で働ける

スキルアップや成長につながりやすい

SaaS業界は、今後成長が見込まれる業界の一つであり、成長産業への関わりは自身のスキルアップに大きく寄与する。

時代の最先端に立つことで、一見シンプルとも思える経験さえも後々評価され、自身の成長につながることすらあり得るのだ。

また、SaaSのような成長産業は、自身の成長や新たなスキルの取得といった機会を得られる可能性が高い。

20~30代という若い段階で、成長やスキルアップにつながるプロジェクトに主軸となって参画できる業界はそう多くないだろう。

さらに、SaaSは最新鋭の技術を用いることが多く、業務を通じて自身のIT技術に関する知見や、スキルアップの向上も目指すことができる点は魅力だ。

営業の場合「The Model」での経験を積める

転職してSaaS企業の営業職に就くと、他業界ではまだ浸透していない「The Model型」の営業スタイルを経験できる。

企業によって異なるが、多くはインサイドセールスからスタートすることになる。

そのままインサイドセールスでキャリアを積むのも一つだが、フィールドセールスやカスタマーサクセスの部門へ異動するキャリアパスも選択できるだろう。

スタートアップ企業や新興業界ならではのスピード感を持った営業を経験できるため、成果を出せば昇進するスピードも早い。

成果次第で、短い期間で数多くの営業経験を積めることも大きなメリットといえる。

フレキシブルな環境で働ける

多くのSaaS企業は、これまでの慣習にとらわれない柔軟な思考を大切にしており、それは働き方にも反映されている。

リモートワークやフレックスタイムのような、働く側が選択できる働き方を積極的に提供し、ワークライフバランスを意識している。

社員の働き方に自由やゆとりを提供することで、斬新なイノベーションや企画を創造できる環境を整えているのだ。

また、SaaS企業は多くがスタートアップ精神を持ち、イノベーションやチームワークを重視する企業文化も特徴的である。

旧態依然なトップダウン型ではなく、役職や年齢に左右されない創造的な環境や自由な意見交換のできる環境が整っている。

クリエイティビティにあふれる人材にとって、SaaS企業は自身のアイデアやスキルを活かせる絶好の業界だ。

未経験からSaaS企業に転職できるか

未経験者がSaaS企業へ転職することは十分に可能だ。

経験者採用はもちろん行われているが、未経験者採用も活発に行っている企業は多い。

未経験者採用が活発な理由としては、SaaSそのものが新興業界であるからだ。

SaaSに直結する経験やスキルはもちろん歓迎されるが、他業界で積んだキャリアも、SaaS企業との親和性が高いと重宝されるのだ。

SaaS企業と親和性が高い経験としては、以下のようなものがある。

  • 法人営業経験
  • システム開発経験
  • IT業界経験 など

上記のような経験があれば、SaaS企業で活躍しやすい人材として、未経験者でも選考で有利になる可能性が高い。

未経験者が採用を勝ち取るには、まず自身の経験やスキルを棚卸しして、アピールポイントがないかを整理してみるのが肝要だ。

SaaS企業への転職で必要なスキルや経験

SaaS企業と一口にいっても、求められるスキルセットの詳細は異なる。

ただ、求められるスキルセットには共通点もいくつかあるのが実情だ。

ここでは、どのSaaS企業でも求められる一般的な要素を解説する。

応募企業のサービスに関連した経験・実績

いくら未経験者であっても、応募企業のサービスに関連した経験・実績をアピールすることは欠かせない。

自分の経験やスキルが活かせるSaaS企業であれば、即戦力としての期待も高まるだろう。

例を挙げるとすれば、以下のようなものがある。

SaaS企業の顧客ターゲット求められる経験やスキル
金融業界・金融業界での勤務経験や各種資格
・経理と財務の知識
建設業界・建設業界での勤務経験や各種資格
・法制度や工具などの知識
飲食業界・飲食業界での勤務経験や各種資格
・調理やマネジメントなどの知識

応募先企業で求められる自分の経験やスキルをうまく訴求できると、選考に有利に働く可能性が高い。

論理的思考力

SaaS企業では、課題解決や新規事業に関して、常に論理的思考力を求められる。

前例のないビジネスにチャレンジする機会も多いため、情報の整理や優先順位の付け方、効果的な施策の策定が必要となる。

さらに、「施策が効果的であったか」「新製品が市場にどのように受け入れられたのか」といった効果測定も重要である。

論理的思考力を用いてPDCAサイクルを回し、事業を発展させていくのがSaaS企業のスタイルだ。

SaaS企業の一員として活躍するためには、論理的思考力は必須のスキルといえる。

問題解決能力

問題解決能力は、論理的思考力とセットで求められることが多い。

問題を明確に理解し、適切な手法や戦略を適用して解決策を見つけ出すためには、高い問題解決能力が不可欠だ。

特にSaaS企業では、顧客からのフィードバックを受けて新たなビジネス課題や適切な解決策を検討する場面が多い。

課題と解決策を検討するためには、論理的思考力と問題解決能力を合わせて発揮することが求められる。

チームワークと柔軟性

円滑に業務を進めるためには、まずはチームメンバーとの良好な関係を構築することが欠かせない。

綿密な情報共有からウィットに富んだ雑談に至るまでの、チームメンバーとの関係性を意識したコミュニケーションが必要だ。

また、チームメンバーの意見や考えも受け入れながら、その場・その時に応じた最適な判断をする柔軟性も必要だ。

チームワークと柔軟性は、ポジションにかかわらず必要なスキルだといえる。

未経験からSaaS企業へ転職した事例

転職サービスを展開している株式会社アサインは、SaaS企業への転職支援実績が多数ある。

エージェントサービスを利用したSaaS企業への転職成功事例を紹介する。

メガバンクから施工管理アプリを提供するSaaS企業へ転職

新卒でメガバンクに入行し、施工管理アプリをはじめとしたサービスを提供するSaaS企業に転職した小西様。

前職のメガバンクでは法人営業を担当していた。

順調にキャリアを積んでいたが、キャリアへの課題感と起業への想いが強くなり、転職を決意。

エージェントとの面談を経て、今後のキャリアプランを叶えるためには、潜在ニーズを顕在化させるスキルの習得が必要と感じたそうだ。

そして、必要なスキルを習得でき、スピード感を持って業務に取り組める現職のSaaS企業に転職した。

現職のSaaS企業では、新しく立ち上がった部署で基幹システムの販売を担当している。

顧客への訴求やコミュニケーションの難しさに苦労することもあるそうだ。

ただ、自分がやりたいことと実際の業務がリンクしているため、前向きに仕事ができていると話す。

将来的には、新規顧客へのアプローチにも挑戦したいそうだ。

金融業界からクラウド会計ソフトを提供するSaaS企業へ転職

新卒で入社した金融業界から、バックオフィス業務を効率化する大手SaaS企業に転職した前野様。

前職では、約10年間営業職に就いた後、経営企画の海外事業部に配属されていた。

適性は営業職だと感じていたが、転勤の多さをネックに感じ、転職を決意。

エージェントが、前野様が興味を抱いていたSaaS業界への情報をお伝えしたことがきっかけで、転職活動を伴走することとなった。

そして、第一志望であった現職のSaaS企業から内定を獲得。

現職のSaaS企業では、HR事業部に所属しフィールドセールスに従事しているそうだ。

人事労務周りがアナログな企業に対し、システムを導入いただくことで業務効率化に貢献できる点がやりがいを感じていると話す。

将来的には、人事労務だけでなく会計、電子契約関連などの商品全般を提案できる人材になりたいそうだ。

日系大手メーカーから弁護士サービスを提供するSaaS企業へ転職

オフィス製品・サービスを提供するメーカーから、弁護士に関するサービスを提供するSaaS企業に転職した野口様。

前職のメーカーでは、営業職として2,000名の社員のなかでも上位10%の成果を出していた。

しかし、業績のために担当製品を販売しないといけない点にもどかしさを感じるようになり、転職を決意。

エージェントとの面談や書類添削などを受けた結果、応募した7社全ての書類選考に通過した。

その7社のなかから、顧客にとってメリットがあるサービスを提供していると感じた現職のSaaS企業に転職を決めた。

現職のSaaS企業では、フィールドセールスに従事しており、前職よりも忙しさを感じるが日々充実していると話す。

今後は、なりたい将来像に向けてさまざまなことに挑戦し、キャリアを積んでいきたいそうだ。

SaaS企業への転職を成功させるためには、エージェントを活用することをおすすめする。

転職エージェントを利用して支援を受ける

自分一人で転職活動を行うと、求人探しに時間がかかったり、履歴書などの書類作成が難航したりと、さまざまなデメリットが潜んでいる。

実際に、株式会社エムエム総研が実施した「SaaS業界への転職意識に関する調査」によると、9割以上が転職エージェントのサポートが必要と回答している。

SaaS企業への転職を目指すなら、転職エージェントの利用を強くおすすめする。

転職エージェントを利用することで、求人紹介から書類添削、模擬面接などのさまざまなサービスを受けられる。

そして、何より孤独に感じやすい転職活動についての悩みや不安を相談できることがメリットだ。

弊社はエージェントサービスを展開しており、SaaS業界への転職支援実績も多数ある。

求職者との初回の面談で本人のキャリアやスキルの棚卸しを行い、希望に沿った最適な求人を紹介している。

また、求人を募集している各企業の人事担当者との綿密なコミュニケーションにより、求職者に有益な採用情報を提供できる体制も整っている。

SaaS業界への転職で悩んでいる人は、ぜひ一度相談いただきたい。