ビジネスの進化が著しい現代において、総合商社はあらゆる分野で幅広い事業を展開し、存在感はますます増している。

国内には数多くの総合商社が存在するなかで、「各社でどのような違いがあるのか」「売上や収入には差があるのか」がわからずにいる人もいるのではないだろうか。

そこで本記事では、総合商社の年収・売上ランキングを一覧で紹介する。

さらに「5大商社」と呼ばれる大手総合商社5社の特徴や業績、グローバル展開の特徴などを解説する。

総合商社への転職・キャリアチェンジを検討している人は、ぜひ本記事のランキング情報を参考にしてほしい。

大手総合商社の売上ランキング

ここでは、大手総合商社の売上ランキングを紹介する。

順位企業名売上(円)
1三菱商事17兆2,648億
2伊藤忠商事12兆2,933億
3三井物産11兆7,575億
4丸紅8兆5,085億
5豊田通商8兆280億
6住友商事5兆4,950億
7双日2兆1,007億
8兼松7,679億

引用元:総合商社業界 売上高ランキング(2021-2022年)

上記のランキングで特徴的なのが、3位と4位で約3兆円の差がつき、さらに1位と2位で約5兆円の差がついている点である。

また、5大商社の一つである住友商事より、豊田通商のほうが売上が高いのも読み取れる。

いずれにせよ、6位まで見ても圧倒的な売上高を誇る業界であることは間違いない。

大手総合商社の年収ランキング

国内の全産業と比較しても、トップクラスの売上高を誇る大手総合商社は、総じて社員の年収も高い。

以下に、ランキング形式で大手総合商社の年収ランキングを紹介する。

順位企業名年収(円)
1伊藤忠商事1,579万
2三菱商事1,558万
3三井物産1,549万
4丸紅1,469万
5住友商事1,406万
6豊田通商1,114万
7双日1,038万
8兼松931万

引用元:総合商社業界 平均年収ランキング(2021-2022年)

上記のランキングから、1〜5位まで大きな差は見られず、1,500万円前後の年収であることがわかる。

6〜8位は年収が1,000万円前後であり、上位5社の値からは大幅に下がる印象だ。

売上高では大きな差が見られたが、少なくとも年収面では大手総合商社であれば、どの商社に入社しても大きな違いはない。

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>>商社の事業内容とキャリアパスとは

5大商社の事業内容【一覧】

いわゆる5大商社とは、以下の商社の総称である。

  • 三菱商事
  • 伊藤忠商事
  • 三井物産
  • 住友商事
  • 丸紅

また、上記に加えて「双日」と「豊田通商」を含めて7大商社と呼ばれることもある。

5大商社は転職先・就職先としての人気が高く、入社難易度が高いことで有名だ。

それぞれの明確な違いを理解しないまま選考を受けるのは、リスクのある行為だろう。

ここでは、5大商社の主な事業内容や業界のなかでの立ち位置などを解説する。

※各会社情報は2023年6月時点での内容

三菱商事

三菱商事

出典元:三菱商事

三菱商事は、世界中に拠点を置きつつ、約1,700の連結事業会社と協働しながら事業展開を行う大手総合商社だ。

主な事業内容は以下の通りである。

  • 鉱山資源の開発および取引
  • エネルギー(石炭、天然ガス、電力)の開発および販売
  • 自動車・航空機の部品および車両の販売
  • 工作機械・農業機械・エレベーターのディストリビューション事業
  • 建設機械レンタルを含む建設ソリューション事業 など

総合商社として、世界中のあらゆる産業に参画し、輸入や販売などを行うことで利益を上げているのが特徴だ。

【基本情報】

社名三菱商事株式会社
資本金2,044億4,666万円
売上高17兆2,648億円(2021~2022年)
平均年収1,558万円
従業員数5,448名(連結79,706名)
代表者名代表取締役 社長 中西 勝也
創業1954年7月1日(設立1950年4月1日)
所在地東京都千代田区丸の内二丁目3番1号(三菱商事ビルディング)

伊藤忠商事

伊藤忠商事

出典元:会社情報|伊藤忠商事株式会社

伊藤忠商事は、繊維やエネルギーなどの原料から食料、情報に至るまで、さまざまな商材を輸出入および第三国間取引している総合商社だ。

主な事業内容は以下の通りである。

  • 石油・ガス資源開発および販売
  • 食品資材・加工品の取引および販売
  • 自動車・航空機部品の供給および販売
  • カード会員総数1,600万人規模のクレジットカード事業・信販事業
  • 東南アジアにおける総合商社最大級の天然ゴム加工事業 など

単に原料の取引だけでなく、加工事業や信販事業などの事業展開も幅広く行っているのが特徴的だ。

【基本情報】

社名伊藤忠商事株式会社
資本金2,534億4,800万円
売上高12兆2,933億円(2021~2022年)
平均年収1,579万円
従業員数4,187名
代表者名代表取締役会長CEO 岡藤 正広
創業1858年(設立1949年12月1日)
所在地東京都港区北青山2丁目5番1号

三井物産

三井物産

出典元:会社情報 | 三井物産

三井物産は、金属資源・モビリティ・化学品など多種多様な商品販売と、それを支える物流や金融事業などを多角的に展開している大手総合商社だ。

主な事業内容は以下の通りである。

  • 石油・天然ガスの開発および販売
  • 食品資材および食品の取引および販売
  • 自動車・産業機械の部品および車両の供給および販売
  • 電力発電事業
  • 透析事業・検査診断事業を中心とした病院周辺事業
  • トヨタグループ(トヨタ・日野・ダイハツ・スバル)とのバリューチェーン展開 など

総合商社によく見られる事業のほかにも、他企業との協働プロジェクトや医療関連での事業展開などにも積極的だ。

【基本情報】

社名三井物産株式会社
資本金3,425億6,027万円
売上高11兆7,575億円(2021~2022年)
平均年収1,549万円
従業員数5,449名(連結46,811名)
代表者名代表取締役社長 堀 健一
創業1947年7月25日
所在地東京都千代田区大手町一丁目2番1号

住友商事

住友商事

出典元:住友商事

住友商事は、6つの事業部門に分かれた国内および海外拠点が連携し、幅広い産業分野で事業展開している総合商社だ。

主な事業内容は以下の通りである。

  • 鉱山資源の開発および取引
  • 食品・農産物の供給および販売
  • 化学製品および石油製品の取引および販売
  • 鋼管を中心とした金属製資機材事業
  • 第5世代移動通信システム(5G)関連事業

【基本情報】

社名住友商事株式会社
資本金2,200億円
売上高5兆4,950億円(2021~2022年)
平均年収1,406万円
従業員数5,223名(連結78,235名)
代表者名代表取締役 社長執行役員 CEO 兵頭 誠之
創業1919年12月24日
所在地東京都千代田区大手町二丁目3番2号大手町プレイス イーストタワー

丸紅

丸紅

出典元:丸紅株式会社

丸紅は、国内外のネットワークを通じて、さまざまな産業分野において事業展開を行う総合商社だ。

主な事業内容は以下の通りである。

  • 鉱山資源の開発および取引
  • 石油・天然ガスの開発および販売
  • 食品資材および食品の取引および販売
  • 多岐にわたる繊維資材や皮革原料をグローバルに提供
  • 携帯電話事業者の代理店として全国に携帯電話販売網を展開

【基本情報】

社名丸紅株式会社
資本金2,629億4,700万円
売上高8兆5,085億円(2021~2022年)
平均年収1,469万円
従業員数4,340名(連結45,995名)
代表者名柿木 真澄
創業1858年5月(設立1949年12月1日)
所在地東京都千代田区大手町一丁目4番2号

総合商社と専門商社の違い

総合商社と専門商社は共通事項も多いが、相違点もいくつかある。

総合商社と専門商社の特徴は、以下の通りだ。

区分概要
総合商社・多様な業界や商品・サービスを扱う総合的な事業を展開する企業

・幅広い業界や地域でのネットワークを持ち、調達・販売・物流・金融などさまざまな機能を提供する
専門商社・特定の業界や商品・サービスに特化した事業を展開する企業

・専門的な知識やネットワークを持ち、特定の領域で高い専門性を発揮する

総合商社がさまざまな分野の商材を取り扱うのに対し、専門商社は特定の業界や商材に絞って事業展開を行う点が大きな違いである。

分野を跨いで事業展開を行う総合商社は、ビジネスの規模も大きくなりやすく、大規模なプロジェクトに参加する機会に恵まれやすい。

一方の専門商社は、特定の分野・商材のプロフェッショナルとしてキャリア形成を検討しやすいメリットがある。

なお、総合商社では、トレード業務を子会社に移管している会社も多い。

そのため、総合商社の傘下には専門商社があるケースも数多くあるのだ。

総合商社が転職者に求めるスキルや経験

商社は総じて新卒採用の割合が大きいため、中途採用の門戸は狭くなりがちである。

それゆえに、中途採用の人材に求める経験やスキルのレベルが高く、転職難易度も高くなることが大半だ。

商社への転職を希望する人は、まず商社が転職者に求める経験やスキルの概要を把握しておくことが肝要となる。

ここでは、総合商社が転職者に求める経験やスキルを解説する。

  • 国際的なビジネス視点
  • コミュニケーション能力
  • プロジェクトマネジメント能力
  • 分析力
  • 外国語能力

国際的なビジネス視点

グローバルな取引や事業展開を行っている総合商社では、グローバル市場は切っても切れない関係性だ。

そのため、働く社員には常に国際的なビジネス視点を持って業務に取り組むことが求められる。

国際的なビジネス視点を持つためには、主に以下のような経験やスキルが必要だ。

  • 語学力
  • 異文化理解
  • 地域特性
  • 地理、天候などの知識 など

日本とは違うさまざまな要素に対する深い理解と柔軟な対応力がなければ、円滑な業務遂行は難しい。

グローバルな視座は、可能な限り転職前に身につけておきたい。

コミュニケーション能力

総合商社の社員が業務で関わるステークホルダーは多岐にわたり、人数も多い。

主に以下のようなステークホルダーと関わることになる。

  • 顧客
  • サプライヤー
  • パートナー企業
  • 行政機関
  • 士業(弁護士、社労士など)
  • 大学 など

プロジェクトを成功させるためにも、関わる全てのステークホルダーと円滑にコミュニケーションを取る必要がある。

社会的地位の高いステークホルダーも多数いるため、どのような相手でも臆することなくビジネスの調整や交渉を行う能力が求められる。

プロジェクトマネジメント能力

総合商社の業務では、複数のプロジェクトを同時に進めることがほとんどだ。

また、一つのプロジェクトに対し、複数人のチームや部門が関わることもあり、ときにはそれを統括して業務を遂行することもあるだろう。

複数のプロジェクトを遅滞なく進めたり、リーダーシップを発揮してプロジェクトを管理したりするには、マネジメント能力が欠かせない。

中途採用であれば、入社後すぐにマネジメントポジションを任される可能性は十分にある。

そのため、転職前に自身のマネジメント能力を伸ばしておくことが肝要である。

分析力

総合商社では、市場動向の分析や競合他社の評価など、実に多彩なデータを取り扱いながら業務を進めることになる。

ビジネスに関するデータを適切に分析し、内容をもとに戦略的な意思決定を行うことが重要だ。

また、プロジェクト終了後にビジネスの成果を評価し、顧客や社内に対しフィードバックを伝えることもある。

フィードバックを伝える際には、客観的なデータや分析結果を踏まえて改善点を提示し、次の目標に向けた提案をすることが必要だ。

そのため、常に目的意識を持ちデータや成果に向き合う姿勢も大切である。

外国語能力

総合商社において語学力は、もはや必須といっても過言ではない。

特に、英語はグローバル市場での公用語であり、ビジネスレベルの英語力が求められる。

英語に加えて、中国語やスペイン語などの第3言語も総合商社では役立つスキルとなる。

語学力がなければ、キャリア形成において経験できるプロジェクトの幅が狭くなるため、中長期的に不利になってしまう。

すぐに身につけることは難しいかもしれないが、転職前から意識して語学力と向き合うべきだ。

総合商社に転職するためのポイント

総合商社への転職を成功させるためには、いくつかおさえておくべきポイントがある。

ここでは、それらのポイントについて解説する。

スキルや経験を棚卸しする

総合商社では、語学力やリーダーシップなど、求められる経験やスキルが多岐にわたり、レベルも高い。

そのため、生半可な経験やスキルでは評価の対象とならないだろう。

中途採用の場では、応募先の人事担当者や管理職などに「いかに自分が有益な人材なのか」をアピールすることが肝要だ。

効果的なアピールのためには、まず自身が持つ経験やスキルを棚卸しして、応募先で活かせる内容を明確にすることが大切である。

また、自分の経験やスキルと親和性の高いポジションに応募すれば、採用確率も高まるだろう。

業界や企業を十分にリサーチする

総合商社は、一見すると似ている業務内容や事業展開があるがゆえに、企業ごとの相違点がわかりにくい場合があるかもしれない。

しかし、当然ながら企業ごとに特色や強みが存在する。

応募する前に、まず業界全体や応募する企業について詳しく調査し、その企業のビジョン、事業領域、文化などを理解することが大切だ。

業界・企業研究を行うことにより、企業ごとの志向やビジネスマインドを理解でき、応募時に自身の意欲や適合性をアピールしやすくなる。