証券会社は、金融市場で証券(株式、債券、投資信託など)の売買や取引の仲介を行う企業だ。

証券会社のなかには事業規模が大きく、売上高も高い大企業がいくつもある。

そのため、転職先としての人気は非常に高い傾向だ。

ただし、証券会社が人材に求める経験やスキルのレベルは高いため、証券会社への転職を成功させるには事前の準備が欠かせないといえる。

本記事では、証券会社への転職に必要な資格やスキルの解説に加え、転職を成功させるのにおさえておくべきポイントなどを紹介する。

転職前に知っておきたい証券会社の転職動向

2023年現在、証券会社全体としては採用活動に積極的な傾向がある。

特に募集人数が多いのは、以下の職種だ。

  • 営業
  • 投資銀行部門
  • M&A関連
  • プロジェクトマネジャー
  • エンジニア など

上記のような職種は、近年推進化が著しいデジタル化・DX化に伴う関連職種である。

経験者が少ないポジションが多いため、売り手市場の傾向が強く、人材の争奪戦が起きている様相だ。

また、デジタル化・DX化と同様に推進されているのが、サステナビリティである。

特に事業規模の大きい証券会社はサステナビリティ経営を意識していることが多く、サステナビリティ関連の職種の求人も多く出ている。

証券会社の募集職種と仕事内容

証券会社で募集されている職種は、主に営業・専門・バックオフィスに分けられる。

さらに3職種のなかでも、役割の違いによって職種が細分化される。

ここでは、証券会社が募集することの多い職種と仕事内容を解説する。

営業職

証券会社の営業職は、企業の業績に大きな影響を与える屋台骨として活躍する職種であり、採用人数も多い。

主に、法人営業(ホールセール)と個人営業(リテール)の2つの主要な分野に分けられる。

法人営業(ホールセール)

法人営業は、法人や金融機関などの大口顧客を対象に営業活動を行う職種だ。

主な業務内容は以下の通りである。

  • 投資商品や金融サービスの提案
  • 取引のサポート
  • 資金調達や資本市場取引の支援
  • M&A支援やIPO支援  など

法人営業担当者は、顧客の投資ニーズやリスク許容度に合わせてカスタマイズされたソリューションを提供し、長期的なパートナーシップを築くことが求められる。

また、顧客の需要を把握し、市場トレンドや金融商品の動向を追跡することも重要な役割だ。

概して、個人営業に比べると扱う金額が大きく、業務に対する真摯な姿勢と確実性がなければ、顧客に信用され成果を上げることは難しい。

一つの失敗が大損害につながるリスクもあるため、慎重かつ丁寧に業務を遂行する必要がある。

個人営業(リテール)

個人営業は、個人投資家や一般の顧客に対して金融商品や投資サービスを提供する職種である。

主な業務内容は以下の通りだ。

  • 適切な投資商品の提案
  • 新規顧客の開拓
  • 既存顧客の維持
  • 顧客の投資家教育 など

投資アドバイスや市場情報の提供を通じて顧客との信頼関係を構築し、顧客のニーズに応えることが求められる。

法人営業に比べると、扱う金額は低いことが多いが、顧客の信頼を得て業務に対し真摯な姿勢で臨むことには変わりない。

これまで株式や証券などと縁がなかった個人にも営業をかける場合があるため、投資や資産運用への深い理解と知見が必要となる。

専門職

証券会社の専門職は、主に証券アナリスト・ディーラー・トレーダーに分類できる。

ここでは、それぞれの役割や違いについて解説する。

証券アナリスト

証券アナリストは、企業や産業に関するさまざまな情報を入手し、分析や評価を行うポジションである。

分析や評価をもとに、最終的に投資対象になるか否かを判断し、投資を考えている顧客に対して助言を行う。

そのため、世界中の経済情勢から産業ごとの動向に至るまで、常に最新情報にアンテナを張り、適切な分析を行うことが求められる。

また、顧客だけでなく調査レポートやセミナーなどで経済動向を発表する場合もある。

ディーラー

ディーラーは、自社の資金を用いて為替や株式、債券などを金融市場で売買する職種である。

常に売買する金融商品に関する情報収集に努め、情報の正確な分析と売買する金融商品の見極めを高い精度で行うことが求められる。

特に売買時間中は、集中力を切らさずに間違いのないトレードを行うことが欠かせない。

また、ディーラーは自社の資金を直接用いる業務となるため、リスクと責任が大きい。

ただし、大きな利益を得た場合は企業への貢献度も高くなるので、大きなやりがいを得られるだろう。

トレーダー

ディーラーとよく似た職種に、トレーダーがある。

企業によっては同じ意味で用いられることもあるが、本質的にはディーラーとトレーダーは異なる職種だ。

トレーダーは、顧客の取引を仲介し、顧客の売買を成立させるポジションである。

売買の原資は顧客の資産であるため、ディーラーのように自社の資金でトレードを行うことはない点が相違点である。

バックオフィス職

証券会社にも、他業界で見られるようなバックオフィス職がいくつかある。

ここでは、そのなかでも証券会社で代表的なバックオフィス職となる事務職とコールセンターについて解説する。

事務職

証券会社における事務職は、主に取引の清算や決済、手続きの処理などの裏方業務を担当するポジションだ。

営業やディーラーなどが行った取引のデータや顧客情報の処理、会計業務全般のサポートも行う。

また、法務では金融取引に関する法的・規制上の要件を確認し、これを満たすための業務も担当する。

そのほかにも、他企業と同様に人事・総務などの社員向けの業務を行う事務職もある。

コールセンター

証券会社にはコールセンターが設置されている場合がほとんどである。

口座開設に関する問い合わせ・株価の照会・取引画面の操作説明などの顧客の質問に対して、電話で答えるのが主な業務だ。

また、クレーム対応もコールセンターの重要な業務である。

クレームも含めた全ての問い合わせに対し、わかりやすさと丁寧さを意識して伝える技術が求められる。

証券会社に転職するメリット

証券会社に転職することで、今後のキャリア形成に活かせるさまざまなメリットを享受できる。

ここでは、証券会社に転職するメリットを解説する。

専門知識を獲得できる

証券会社に転職することで、金融業界全般の知識をはじめ、証券・株式に関連した知識やスキルを習得できる。

経済情勢や産業ごとの動向は、グローバル市場を含めれば24時間365日何らかの動きがあるといってよい。

証券会社では、日々移り変わる経済情勢や産業ごとの動向を常に入手していく必要がある。

このような最新情報の入手が不可欠な環境で勤務していけば、自然と市場の動向や金融商品についての理解を深められるのだ。

また、専門知識が深まれば、自身のキャリアの専門性を高められることも大きなメリットだろう。

チャレンジングな環境で成長できる

証券会社では、常に目まぐるしく情報が駆け巡る金融市場で結果を残すことが求められる。

昨日までのトレンドが、今日には正反対のものになっていることも珍しくはない。

それゆえに、市場トレンドの分析や予測、投資戦略の短期的、中長期的な立案などの業務をアグレッシブに行うことが多い。

刺激の多い環境では自己成長につながる出来事が多く、今後のキャリア形成の一助になる。

ただ、このようなチャレンジングな環境で成果を出すには、常に学びの姿勢を崩すことなく取り組まなければならない。

業務への探究心と積極性も持ち合わせておくことが望ましい。

給与アップの可能性が高い

証券会社が達成した業績や成果などは、社員一人ひとりの報酬にも直結することが多く見られる。

また、証券会社では成果主義を導入していることが多く、自身の成果が成功報酬やボーナスに反映されやすいのだ。

特に営業職・ディーラー・トレーダーなどの職種は、自身の営業成果や取引成功結果が、そのまま評価となり報酬に反映されることが多い。

評価が目に見えて感じられる機会に恵まれるため、成果を出すモチベーションややりがいも得られやすい。

また、元々証券会社は全産業と比較しても高い報酬水準を設定している。

基本ベースが高いため、年収アップが早い段階から見込めるのも魅力だ。

キャリアの発展が幅広い

証券会社で培ったスキルや経験は、別職種でも応用可能だ。

例えば、営業職で習得した企業・業界分析のスキルを活かし、証券アナリストやトレーダーとして活躍できる。

さらに、リサーチや投資銀行業務など、さまざまな部門や専門分野に進むことも視野に入るだろう。

仮に入社後のポジションが希望通りでなかったとしても、そこで得られるスキルや経験は必ず転用できる。

そのため、まずは与えられたポジションで努力を重ねて、その後キャリアチェンジを狙う方法も決して悪いものではない。

証券会社は未経験でも転職できるか

未経験から、証券会社への転職は可能である。

ただし、証券会社は転職先として人気の高い業界の一つであり、競争が激しく選考プロセスも厳しい場合が多い。

それゆえに、何の準備もなく挑戦することは無謀といわざるを得ない。

未経験者は、まず証券業界や金融市場についての学習意欲を持ち、それを実行できる自己学習能力を備えることが肝要である。

市場のトレンドや投資商品に関する情報を積極的に学び、自身の知識を高めることは、入社後にも必要な能力だ。

また、証券会社への転職では、金融および関連する業界の経験があるほうが有利になることが多い。

特に評価されやすい経験や知識は、以下のようなものが挙げられる。

  • 銀行・信用金庫・保険会社などの業務経験全般
  • 株式・為替などの金融商品への知識
  • 顧客対応や営業経験 など

金融業界には、ほかの業界にはない慣習や法制度などを基盤とした特有の風潮がある。

特有の風潮を理解した上で、さらに金融業界に関する何らかの経験やスキルがあれば、証券会社が未経験でも選考で有利になりやすい。

証券会社への転職で求められるスキル

証券会社への転職で求められるスキルには、いくつか特徴的なものがある。

ここでは、それらのスキルについて解説する。

金融業界・金融商品に対する理解

証券会社は、金融業界や金融商品に対する幅広い知識と理解が必要だ。

そのため、市場のトレンドや動向、主要な金融商品の特徴やリスクを十分に理解した上で業務に取り組む必要がある。

金融業界や取り扱う金融商品への深い理解がなければ、顧客との信頼関係を築くことが難しくなり、成果を上げにくくなる。

経済指標や企業の財務諸表などの情報を分析し、適切な投資戦略やアドバイスを提供するためにも、金融業界に関する知識を持つことが必要だ。

分析力と判断力

特に営業職・アナリスト・ディーラー・トレーダーなどの職種では、大量のデータやニュースを分析し、判断の材料にする。

情報を分析し、将来の市場動向や投資機会を予測する能力は必須といっても過言ではない。

証券会社で成果を上げるためには、データの分析力や傾向の把握、リスク評価などのスキルが必要だ。

また、金融商品の提案や売買の際の最終的な判断を下すためには、複合的な要素が関わってくることが大半である。

そのため、複合的な要素から最適な結論を導き出す判断力が重要となる。

コミュニケーション能力

証券会社の営業職では、顧客との信頼関係を築きながら投資へのアドバイスや金融商品の説明を行うため、コミュニケーション能力が不可欠である。

深い金融知識と商品理解を基盤にしつつ、顧客にできるだけわかりやすく説明できるコミュニケーション能力があれば、成果に結びつきやすくなる。

また、コミュニケーション能力は組織のなかでやりとりする際にも不可欠なスキルだ。

証券会社でのプロジェクトには、時折チーム単位で動くものも多い。

チームで行う際には、リーダーや同僚などと常に円滑なコミュニケーションを図り、進捗具合や相談などを行えるコミュニケーション能力が求められる。

目標達成能力と忍耐力

証券会社の営業職は、新規顧客の開拓数や成約獲得数などの明確な数値目標が掲げられる。

これらの営業ノルマの達成には、目標設定や戦略立案などの計画的な営業活動が必要だ。

また、営業職は新規顧客の開拓と並行して、長期的な取引や顧客の関係構築も行う。

既存顧客との関係維持には、時折忍耐力と継続的な努力が重要だ。

その重要かつ困難とも思える局面に対して、臆せず立ち向かい、目標に向けてコミットし続ける必要がある。

証券会社への転職で資格は必要か

証券会社への転職で、事前に資格取得が必要なのか気になる人もいるかもしれない。

資格取得の必要性は、具体的な証券会社や職種によって異なるのが実情だ。

一部の証券会社では、特定資格の保有が求められる場合もあるので、応募前に確認が必要である。

一方で、転職に資格は必須でなくとも、保有していると役に立つ資格はいくつかある。

役立つ資格の一例は、以下の通りだ。

  • 証券外務員二種
  • 証券外務員一種
  • 証券アナリスト試験(CMA)
  • ファイナンシャルプランナー(CFP)
  • 簿記3~1級 など

国家資格から民間資格にいたるまで、上記のような資格が一つでもあれば、選考に有利に働きやすい。

ただ、資格を保有していなくとも、証券会社への転職は可能だ。

証券会社によっては、資格よりも経験や知識、スキル、学習能力を重視する場合もある。

また、証券会社は自社研修やトレーニングプログラムを社員に提供することがあり、転職後に必要な資格を取得する機会が得られるケースもある。

そのため、転職前に資格を保有しようとする必要性は、特定の資格を求める証券会社を志望しない限り、そこまで高くない。

むしろ、資格取得には一定の時間や費用がかかる場合があるため、将来のキャリア目標とのバランスを考慮し、取得するか否かを検討する必要がある。

証券会社へ転職する場合の注意点

証券会社に転職する前には、証券会社や金融業界特有の難しさ・厳しさ、注意点などを把握しておくことが望ましい。

転職市場の傾向としても、別業界から証券会社に転職する人が多いため、入社前後のギャップに悩む人も少なからず存在する。

転職前にできる限り留意点を把握し、対策を練ることが大切だ。

ここでは、証券会社への転職に関する留意点について、解決策も交えながら解説する。

高い目標を追い続けることに負担やプレッシャーを感じる場合がある

証券会社では、常に何かしらの目標が設定され、それを達成することを求められる。

ノルマ達成を求められる職種の代表格が、営業職だ。

証券会社の営業職は、営業目標や業績目標を1日・1ヵ月・四半期などの区切りで設定されることが多い。

また、個人だけでなくチーム・部署内での達成も求められることがある。

これらの目標を達成する上で高いハードルとなるのが、市場の変動や業界内での競争の激しさだ。

成果を出し利益を上げていくためには、市場の動きを把握した上で、同業他社よりも秀でたスキルやセンスを発揮する必要がある。

目標を達成するために高い数字を追い求めるプレッシャーがある日々に、心身ともに負担が大きいと感じることがあるのだ。

心身をケアして、健康的に働くためには、主に以下のようなことを実践するとよい。

  • 適切なストレス管理や自己ケアを行う
  • 目標を分割して取り組む
  • 上司や同僚とのコミュニケーションを通じて支援を受ける
  • 休日・休暇を適切に取得する など

いくら成果を出せていても、健康的かつ持続的に働けないのであれば意味がない。

自分の無理のない範囲を把握し、業務に取り組むことが望ましいといえる。

業務のなかで「誰かの役に立っていること」を実感しにくい場合がある

証券会社の営業職では、最終的に成果が出ているかを数値や売り上げで判断されることが大半である。

数値や売り上げは、確かに大切な指標ではあるのだが、一方で「自身が誰かの役に立っている」という実感を得にくい場合がある。

本来、証券会社の営業職は金融商品の提案やアドバイスを通じて、顧客のニーズに応える役割を担う。

数字や売り上げを追い求めるばかりに、万が一顧客の希望に応えられていない状態が続くと、やりがいを感じられないことがあるのだ。

他者への貢献度が低いと感じ、やりがいを失っていると思ってしまった場合は、まず自分の仕事への認識を見つめ直してみるのがよい。

その際に、数字至上主義になっていないかを再確認してみるのがおすすめだ。

仮に数字や売り上げが優先事項になっている場合は、まずは顧客との信頼関係構築を重視することに認識を改める。

そして、実際の業務で誠実なアドバイスを提供することで、顧客満足度が高まり、自身の貢献度を実感できるはずだ。

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証券会社への転職を成功させるポイント

証券会社への転職を成功させるには、いくつかおさえておくべきポイントがある。

ここでは、そのポイントについて解説する。

業界や職種への理解を深める

金融業界および証券会社には、独特の文化や風潮がある。

また、知っておくべき金融業界全般に関わる法制度や規制などもある。

未経験の場合は、まず業界の動向やトレンド、金融商品や投資の基本知識などを学び、証券会社での業務について具体的なイメージを持つことが肝要だ。

証券会社の業務について学び、イメージを膨らますためには、関連書籍やオンラインコース、業界の専門誌やニュースを積極的に活用して知識を増やすのもよい。

また経験者であれば、業界内の人々との対話や情報交換を通じて、実際の現場の課題や仕事の魅力を理解するのも有効である。

明確な志望動機を作成する

証券会社への転職に限ったことではないが、転職の際には明確な志望動機を持つことが重要である。

証券会社への転職の場合、まずは「なぜ証券会社へ転職したいのか」「なぜ特定の職種に興味があるのか」を自分自身に問いかけ、具体的な理由の洗い出しを行うべきだ。

理由の洗い出しを行うことで、志望動機が明瞭になり、人事担当者や管理職などに明確に伝えられる。

この志望動機には、自身のスキルや強み、証券会社の企業文化やビジョンとの一致などを盛り込むのがよい。

志望動機が明確で具体的であればあるほど、自身のアピールになり、選考に有利に働きやすくなる。