デジタル技術により様々な業界が変革を遂げており、グローバルで500兆円の市場規模があるとも言われている保険業界でも大きな変化が起きている。今回は保険業界に起きている変化についてご紹介したい。
保険をシェアする「P2P保険」
近年、「所有」からシェアリング「共有」の社会になりつつある。例えば、車もカーシェアという考え方が一般的になり、住まいをシェアするシェアハウスや家具をシェア・サブスクリプションするサービスも増えてきている。
個人が物を所有しなくなり、自ら損害保険に加入しなくても良い傾向が強まっている。こうした社会変化に対応するために保険系のスタートアップ企業は新サービスを開発・提供しており、現在注目されているのが「P2P(ピーツーピー)保険」と呼ばれる保険をシェアする仕組みである。
P2P保険とは「ピア・トゥ・ピア(Peer to Peer)保険」の略であり、保険・リスクをシェアする仕組みを持った新しい保険の形である。同じリスクに対する保険に興味のある人たちで「集団(プール)」を作り、保険料の拠出を行う。
仮に、事故が発生し、保険金請求が行われた場合、このプールから保険金が支払われる。P2P保険のメリットは、保険期間満了時に保険金の請求がなかったり、少なかったときに、プールに残った残高は保険金請求を行わなかったプールメンバーにキャッシュバックされる。
海外では普及しつつあるこのP2P保険だが、日本のインシュアテックスタートアップのjustInCase社が保険料を割り勘するというコンセプトのもと、オンラインで加入できるがん保険をリリースするなど、日本でも広がりを見せている。
特に中国は、アリペイユーザー向けにP2P保険を展開しており、爆発的に加入者を伸ばしている。電子決済で保険料を支払うため、従来の保険申し込みとは大きく異なり、アプリ内で申し込みから決済までワンストップで完結するようになっている。
プラットフォーマーとの協業
ここではメッセージアプリ、決済サービス、通信キャリアなどを広い意味でのプラットフォーマーと位置付けることにするが、プラットフォーマーと保険会社のコラボレーションが加速している。
日本の3メガ損保に注目すると、東京海上はNTTドコモ、三井住友海上はヤフー、損保ジャパンはLINEとコラボレーションし、それぞれ次々にサービスをリリースしている。
損害保険会社の経営戦略の中にプラットフォーマーとの協業がテーマとして挙げられているのは業界動向としては明らかだが、楽天は朝日火災海上保険を買収し、楽天損保として新しい会社を設立しており、プラットフォーマー側からも保険業界に進出してきている。
そもそも基本的に保険という商品は保険商品自体での差別化が難しい。補償範囲や保険料などは引受保険会社ごとに若干の違いはあるものの、大きな差別化は難しい。
そのため、生活の一部となっているメッセージアプリや決済サービスと連携し、ユーザーとのタッチポイントを増やすことが非常に重要になる。
若者の保険離れと言われることもあるが、加入から決済までをワンストップで提供できることはユーザービリティの観点から非常に重要であり、スマホでの旅行予約やECサイトでの買い物などの購入プロセスの中に保険加入のプロセスを埋め込む、「ビルトイン」させるスキームは近年のトレンドである。
このようにデジタルトランスフォーメーションで新しい形の保険加入が広がりつつあり、スマホやアプリでの保険加入は今後さらに一般的になっていくだろう。
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