2019年4月に働き方改革法案が施行され、人々の働き方が大きく変わりつつある。一般的にハードワークが求められるコンサルティングファームにも働き方改革が進んでいる。今回はコンサル業界での働き方改革についてご紹介したい。

コンサルは「人」が唯一の資産

コンサルティングファームは「明確な答えのない仕事」を請け負っているため、リサーチや分析に多くの時間を必要とし、分析結果や示唆をクライアントにわかりやすい資料に落とし込んだ上で説明するため、一般的な事業会社と比較すると労働時間は長くなる傾向にある。

プロジェクトのフェーズにもよるが、プロジェクトの最初と最後の期間は成果物も増え、クライアントとの調整事も多くなるため忙しくなることが多い。

コンサルティングファームごとに資料作成の「お作法」や「禁じ手」があるので、若手のうちは資料作成にかなり時間がかかる。加えて、マネージャーからのレビュ(資料に対してのフィードバック)で再修正をする、といったサイクルが何度も発生してしまい、作業時間が増えてしまうことはコンサル若手あるあるだ。

一方で、コンサルティングファームはそこで働く人々によって利益を生み出しているため、ノウハウの蓄積、クライアントとのリレーションの観点からもメンバーを定着させることが非常に重要になる。

プロジェクトメンバーの入れ替わりが激しいとクライアントにも成果を出しにくく、信頼貯金を貯めることが難しくなってくる。

プロジェクトの目指すべきゴール、クライアントからのオーダーには答えつつ、効率的に働ける環境・仕組みを全社的に取り組んでいかなければ仕事の総量を減らすことは難しいため、現場はどんどん疲弊してしまう。

「考える時間」の割合を増やす

では、生産性を高めるには具体的にどのような取り組みを各ファームでは行っているのだろうか。

資料作成のツールを全社的に展開している事例がある。例えば、PowerPointやExcelの標準機能に加えて、コンサルで多用される特殊なオブジェクトや位置揃えなどの機能を追加で使えるようにカスタマイズを行う。

資料フォーマットや思考のテンプレートなども全社的、外資の場合はグローバルで標準化しているため、まったくのゼロから資料を作成するケースはかなり減ってきていると言える。

また、昨今のコロナの影響もあり、会議のための移動は避け、クライアントサイトや自宅から会議を行うことが多い。自社オフィスとクライアントオフィスを行ったり来たりするといった非効率な移動が以前は多くあったが、WEB会議ツールの積極導入により会議のために移動することは減りつつある。

会議時間の設定も18時以降は社内会議をセットしてはいけない、といった深夜残業につながるような会議設定は禁止する動きもある。以前はマネージャーの時間が取れず、夜遅い時間から会議開始(レビュ開始)ということもあったようだが、社内ルールとして禁止にしているケースもある。

このように資料作成の標準化、補助ツールの導入、社内会議の効率化などを進める傾向があり、生産性高くプロジェクトに従事できるように仕組みを整えているファームが多い。

効率化できるところは徹底的に効率化を行い、本来時間をかけるべき課題の設定、解決策の提示、リサーチからの示唆など、「考える時間」の割合を増やすことによって、クライアントに価値を出していく必要がある。

以前は睡眠時間を削り、圧倒的な作業量でクライアントに価値を出すというスタイルも許容されていたが、働き方改革の流れの中、作業量だけでカバーするのは難しくなってきている。

会社から提供されたツールやフォーマットを使いこなし、作業時間を極力効率化した上で、本来コンサルに求められている抽象的な課題の解決、具体的な実行プラン、新しい示唆の提示など、「考える時間」の割合を増やすことがコンサル業界における働き方改革では最も重要である。