転職活動の中で「やりたいことは何か」と問われることは多い。
自己分析を進める上で整理しておくべき重要な問いだが、明確な回答を持っている人は少ないのではないだろうか。
やりたいことが見つからないと焦りを感じる方もいるかもしれないが、実はこの問いに悩んでいる人は驚くほど多い。
今回は、「やりたいこと」ではなく「やり続けられること」に目を向けるという、一つの効果的な考え方を紹介したい。
やりたいことを見つけるのは難しい
まず覚えておいて欲しいのは、やりたいことを見つけることはそれほど簡単ではなく、悩んでいる人は想像以上に多いということである。
人生の様々なタイミングでやりたいことを考える機会はあるが、やりたいことが常に定まっており全くブレないという人は少数派だろう。
実際、筆者がエージェントとして転職支援を行う中でも「やりたいことが見つからない」「わからない」「そもそも自分の中にない」と相談される方は非常に多い。
転職活動の初期段階でエージェントにこの手の相談をされる方はかなりの割合に上る。
また、転職活動においては年収やワークライフバランス、勤務地、家族との関係といった様々な制約があり、自由にやりたいことについて発想できなくなっている場合も少なくない。
一般的に、年齢が上がるにつれて思考の自由度は下がっていく傾向にある。
本人としては「これがやりたいかもしれない」と感じていても、年収を下げられない、通勤時間を増やせない、世間体が気になるといった本質とは異なるところでブレーキをかけてしまうケースは多い。
さらに、「やりたいことは何か」と問われたときに「自分の生涯をかけてやるべきこと」のように大きく考えすぎてしまい、思考そのものを止めてしまうこともある。
このように、やりたいことが見つけられずに悩むのは決して珍しいことではなく、むしろ自然なことだと知っておいて欲しい。
まずは「やりたいことがない自分はダメだ」という思い込みを手放すことから始めてみるとよい。
やりたいことがなくても、やり続けられることは必ずある。
その延長線上にこそ、自分だけのキャリアの道筋が見えてくるのである。
やりたいことを無理に探すのではなく、自分の中にすでにある「続けられること」に目を向けることが、キャリアを考える最も自然な出発点なのである。
やり続けられることに目を向ける
そこで提案したいのが、「やりたいこと」ではなく「やり続けられること」に目を向けるという考え方である。
やり続けられることとは、誰かに強制されるわけでもなく、大きな見返りがあるわけでもなく、自然と継続している行動のことだ。
これまでの人生を振り返ると、そうした行動が何かしらあるのではないだろうか。
たとえば、報酬がなくても誰かの相談に乗ることが好きだったり、SNSでリアクションをもらえることが楽しくて毎日何かしら投稿していたり、自分の成長を実感できるから筋トレを何年も続けていたり。
他の人はやらないが、自分は自然と継続できてしまうことが、誰にでもあるはずだ。
大事なのは、その行動を「些細なこと」と片付けずに、キャリアを考えるヒントとして真剣に向き合ってみることである。
重要なのは、やり続けられることには自分なりのこだわりが伴っていることが多いという点である。
継続的に実行する中で自然とやり方を改善していたり、もっとうまくやれるようにと工夫したりと、意識せずにPDCAを回していることが少なくない。
興味を持っていることに対して、人は自発的に情報を集め、知識やノウハウを自分の中で蓄積しブラッシュアップしていく傾向がある。
この無意識の改善サイクルこそが、将来の強みにつながる重要な手がかりなのである。
実際、多くの成功しているビジネスパーソンに話を聞くと、最初から壮大な目標があったわけではなく、自分が自然と続けていたことの延長線上に今の仕事があったというケースは非常に多い。
やりたいことが何かと大きく構える前に、まずは自分が今継続していること、あるいは過去に継続できていたことを丁寧に振り返ることから始めてみて欲しい。
それが一体何なのか、なぜ自分はそれを続けているのかを掘り下げることで、やりたいことの輪郭が自然と見えてくる。
また、やり続けられることを通じて、自分がどのような環境で力を発揮できるのか、どのような人と働くことが心地よいのかといった、仕事選びの重要な判断基準も見えてくるだろう。
自己分析というと堅苦しく感じるかもしれないが、「自分が自然と続けてしまうこと」を起点にすれば、楽しみながら自分を深く知ることができる。
やり続けられることの延長線上にある大きな目標はどこにあるのかを考えてみると、その過程を歩むことがやりたいことに合致する可能性は十分にある。
努力は夢中に勝てない
悲しいことだが、大人になるほど夢中になれることは少なくなり、周囲にも何かに没頭している人は減っていく。
学生時代に部活に打ち込んだり、ひたすら勉強に集中したりした経験がある方は多いだろうが、同じ熱量で仕事に向かっている人は正直少ないのではないだろうか。
しかし、社会人になっても夢中で何かに取り組むことは十分に可能である。
夢中になってはいけないと言ってくる人はどこにもいない。
自分で勝手に可能性を小さくしてしまっている場合がほとんどなのだ。
夢中になっている人は、成功も失敗も含めて能動的にトライするようになる。
実験的にあれこれ試したくなり、経験を積むスピードが圧倒的に速くなるのである。
さらに、夢中になっている人は努力を努力と認識していないことが多い。
自ら進んで様々なことにチャレンジするため、意識的に努力している場合よりも一つの挑戦から得られる学びが格段に大きくなる。
結果として、同じ時間を過ごしていても、夢中で取り組んでいる人とそうでない人とでは、成長のスピードに圧倒的な差が生まれるのである。
夢中になれる対象を仕事にできたとき、キャリアは自然と加速していく。
やりたいことが見つからず思考が止まっているならば、まず自分が継続的にやり続けられること、夢中になれることは何かに目を向けてみて欲しい。
それがどのような理由で、どのような要素や環境のもとで生まれたのかを深掘りするところから始めることで、キャリアの方向性は必ず見えてくる。
「努力は夢中に勝てない」。
ぜひ能動的にやり続けられてしまうことを見つけてみて欲しい。
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