富士通が2024年2月22日、コンサルティング人材を1万人に増やす計画を発表した。SIerのコンサル化が進むなかでの動きである。

コンサルとSIerが近づく背景

近年、デジタル化の波を背景に、「コンサルのSIer(システムインテグレーター)化」や「SIerのコンサル化」が進んでいる。

デジタル化の進展に伴って加速しているのが、コンサルタントのIT領域への進出と、SIerによるビジネス支援の強化だ。

コンサルタントに求められているのは、クライアントのデジタル変革を一貫して支援するエンドツーエンドのサービスだ。これに応える形で、専門チームや子会社を設立している。

一方、SIerは従来のビジネスモデルが通用しなくなり、アジャイル開発やクラウドサービスの提供を通じて、ビジネスの変化に柔軟に対応しようとしている。

その背景にあるのは、ビジネスの変化がこれまでにないスピードで進行していることだ。

クライアント企業はフルスクラッチでゼロからシステムを開発するのではなく、ビジネスの変化に柔軟に対応する開発手法を求めるようになっている。

従来の大規模なウォーターフォール開発では、そのスピードに追いつけない。小規模な開発を繰り返すアジャイルな手法が求められている。

その結果、SIerはクラウドやパッケージの提供、もしくはビジネスサイドの支援を強化する「コンサル化」を余儀なくされている。

ただし、SIerがビジネス支援を成功させるためには、技術力に加えてビジネスの視点を持つ柔軟な人材が必要になる。多くの企業がこの転換に苦戦している。

コンサルとSIerの境界が曖昧になるなかで、両者がそれぞれの強みを活かしつつ、ビジネスとITの融合を図ることが今後の課題である。

コンサルの側では、IT領域への進出が欠かせないものになっている。SIerの側では、新たなスキルセットや柔軟な対応力が求められている。

それぞれの専門分野を超えて協力し合うことで、クライアントにより価値の高いサービスを提供することが可能となるだろう。

富士通が掲げる1万人計画

富士通は2024年2月22日、コンサルティングスキルを持つ人材を、2025年度までに現状の2,000人から1万人に増員する計画を発表した。

この計画では、ビジネスコンサルタントを600人から3,000人、テクノロジーコンサルタントを1,400人から7,000人に増やすことを目指している。

人材拡充の内訳は、リスキリング6,000人、採用3,000人、企業買収1,000人以上である。

あわせて、新しいコンサルティング事業ブランド「Uvance Wayfinders」を立ち上げ、その下に13の注力領域を設定した。

この新ブランドが狙っているのは、業種知見とテクノロジーの専門性を融合させ、各領域におけるコンサルティングプラクティスを強化することだ。

同社は従来の業種軸による課題解決を超え、業種を超えた社会課題の解決を目指すとしている。顧客に言われた通りに実装するのではなく、対等なパートナーとして提案する姿勢を強調している。

富士通の三つの施策と認定制度

富士通は2023年8月、「Consulting CoE(Center of Excellence)」という新組織を設立した。この組織がコンサルティング人材の拡充施策を推進している。

担うのは、コンサルティング事業の全体戦略策定とリスキルプログラムの実施だ。

打ち出した具体的な施策は、次の三つである。

  • リスキリング:Ridgelinezのコンサルティングサービスに関するナレッジやノウハウを活用した教育プログラムとOJT(On the Job Training)を展開し、社員のコンサルタントへのキャリア転身を支援する
  • キャリア採用:注力する13の重点領域を対象に、キャリア採用を積極的に推進する。コンサルティングファームでの業務経験の有無に関わらず、特定の業種知識やテクノロジー知識を持つ人材も幅広く募集する
  • M&A:リスキリングおよびキャリア採用の進捗状況に応じて、M&Aの可能性も積極的に探求する

品質の面では、コンサルティング品質確保のための認定制度を設け、2024年1月から認定コンサルタントを順次輩出している。

認定コンサルタントには、職責に見合った報酬を提供する人事制度をグループ全体で展開している。優れたコンサルタントを育成し、企業全体のコンサルティング能力を向上させることを目指した制度だ。

今回の発表は、富士通がコンサルティング事業に大きな重きを置いていることを示している。1万人のコンサルタントを擁することで、多様なビジネスニーズに対応し、顧客とともに新たな価値を創出することを目指している。

発表で示された数字は、2025年度までの1万人という規模と、リスキリング6,000人・採用3,000人・企業買収1,000人以上という内訳である。新組織と新ブランドは立ち上がり、認定コンサルタントの輩出も2024年1月に始まっている。

13の注力領域で業種知見とテクノロジーがどこまで組み合わさるのか。対等なパートナーとしての提案が顧客にどこまで届くのか。この大胆な挑戦がどのような成果をもたらすのかは、ここから先の展開が答えることになる。