日本企業の新規事業の93%が失敗している現実をご存知だろうか?

新規事業開発が盛んに行われているが、成功するのはほんの一握りに過ぎない。この厳しい現実に立ち向かい、成功を掴むためには何が必要なのだろうか。

本コラムでは、現代において新規事業を成功に近づけるコツについて探っていく。

新規事業の93%は失敗しているという事実

近年、新規事業ブームが続いているが、実際に成功している事業は少ない。

文部科学省の全国イノベーション調査によると、新規事業に取り組む企業は増加しているが、成功するのはほんの一部だ。

これには、顧客ニーズや競争環境、マクロ環境など、さまざまな不確実性が影響している。

成功確率を算出する調査は様々あるものの、例えば、アビームコンサルティングの2018年の調査では、年商200億円以上の780社を対象にした結果、投資額を回収するに至った新規事業はわずか7%であることが示された。

このように、新規事業の成功には多くの障害が存在する。

新規事業の難しさは、顧客のニーズが予測しづらく、競争が激化している点にある。さらに、経済の変動や技術革新のスピードが速いため、事業計画が迅速に時代遅れになるリスクもある。

これらの要因が重なり、ほとんどの新規事業が思うように成果を上げられないのである。

しかし、失敗率を下げるためにはどうすれば良いのか。

成功確率を上げるアプローチとは

現代において新規事業を成功させるためには、科学的なアプローチとデジタル化が不可欠だ。

しかし、実際には多くの企業が「なんとなく適当にやってしまっている」のが現実であり、結果失敗に終わっているのではないだろうか。

ソニーによる調査では、「具体的な新規事業を推進するノウハウが不足」と「新規事業を生む組織の運営ノウハウが不足」の二つが主な課題として指摘されている。

これを解決するためには、データを活用し、イノベーションプロセスのDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組むことが必要である。

具体的には、新規事業のアイデアや人材の適性をデータ化し、そのデータを基にマネジメントを行うことが求められる。例えば、アイデアの質や人材の適性を評価し、適切なアサインメントを行うことで、新規事業の成功確率を高めることができる。

実現のための手段としてイノベーションテックが続々と登場していることは心強い。

事業立上げフェーズにおけるアイデア、ヒト、ネットワークをデジタル化するツールや、全体プロセスを適切に管理するマネジメントソリューション、情報収集の効率化ツールなど、様々な切り口でのテクノロジーが発達している。

これらの領域はまだ発展途上であり、今後も様々なソリューションが出現するだろう。状況に応じて最新のテクノロジーを利活用する能力は、新規事業の成功確率を分けるポイントとなる。

成功確率50%を超える驚異的な企業

成功例として、国内発ベンチャーであるSpeeeが挙げられる。

同社は、スタートアップながらも事業開発を積極的に行い、WEB/SEO関連事業、不動産売買、リフォーム、介護など10の事業を展開しており、各業界においても存在感を発揮している。

外部のテクノロジーを活用するのではなく、内製化したシステムにより新規事業開発の高度化を実現させた企業だ。自社システムにおいて、調査分析やプロトタイプ検証をツール化し、プロセスを効率化するだけでなく、ナレッジを蓄積し改良を重ねる事で新規事業開発の成功率を高めている。

同社は、新規事業開発の成功率は50%と公言している。

このように、新規事業の成功には科学的なアプローチとデジタル化が不可欠であり、最新のテクノロジーを活用して効率化を図ることが求められる。

データを基にした戦略的な意思決定と、AIを活用した高度な解析能力は、新規事業の成功に向けた強力な武器となる。

現状、イノベーションテックは一部のIT企業での利用に留まっているが、今後、テクノロジーの発展と共に革新的な事業を生み出す日本企業の登場に期待したい。