生成AIをはじめとするAI技術の進化は、アプリケーション開発者にとって大きな変化をもたらしている。

多くの企業がAI投資に積極的だが、一部では「開発者がAIに取って代わられるのではないか」という不安も広がっている。

しかし、AIは開発者から仕事を奪う敵ではなく、強力なパートナーとなり得ると考える。

多くの企業がAI投資に積極的

アイ・ティ・アール社による2023年9月度の国内IT投資動向調査によると、2024年度に新規導入が期待される製品において、「AI、機械学習プラットフォーム」や「生成AI」がトップを占めている。

多くの企業がAI技術に期待を寄せており、その投資額も年々増加している。この背景には、AIの導入によって業務効率化や新たな価値創出が期待されていることがある。

生成AIはデータ分析や顧客対応など、多岐にわたる分野での応用が進んでいる。企業はこれらの技術を活用することで、競争力を高めようとしている。勿論、アプリケーション開発分野においても同様である。

生成AI、特に大規模な言語モデルは、膨大な量のデータを基に学習されている。このデータには、インターネット上に公開されているソースコード、プログラミングのドキュメント、技術フォーラムの投稿、チュートリアルなどが含まれる。

これにより、生成AIはさまざまなプログラミング言語とその使用方法を理解し、学習することが可能となっている。

また、生成AIは自然言語処理(NLP)の技術を活用している。これにより、人間が日常的に使用する言葉を理解し、その言葉に基づいて適切なコードを生成することができる。

たとえば、ユーザーが「Pythonでリストの合計を計算するコードを書いてください」とリクエストすると、生成AIはその意図を理解し、Pythonコードを生成することができる。

このような機能を主体として、アプリケーション開発の高度化・効率化などに大きな期待が寄せられている。

こうした話題がニュースにもなっていることから、最近、「AIによりアプリケーション開発者は不要になるのか」と問われることが増えた。

これに対し、筆者は完全には代替されないと答えている。その理由は以下の通りだ。

アプリケーション開発の本質とは

アプリケーション開発とは、単なるコーディングではない。

ビジネスサイドの人々と協力し、ビジネスや社内業務に価値のあるアプリケーションを提供することが重要である。たとえ優れたプログラムが書けたとしても、それがビジネスに貢献しなければ意味がない。

現在では既に、フレームワークやクラウドサービス、ローコード/ノーコードツールを活用することで、生産性や品質を向上させることが可能である。AIもその一環として利用することで、開発のスピードや精度を高めることができる。

つまり、「アプリケーション開発=コーディング」ではなく、「アプリケーション開発=価値提供」であるべきなのだ。

アプリケーション開発の本質は、問題解決と価値創出にある。開発者は技術だけでなく、ビジネスの課題を理解し、最適なソリューションを提供する能力が求められる。

そのためには、継続的なスキルアップと新しい技術の習得が不可欠である。

AIは開発者の強力なパートナーとなり得る

AIは開発者の仕事を奪うのではなく、強力なパートナーとして機能する。

ペアプログラミングの相方としてAIを活用することで、コーディングの効率化や新たなアイデアの創出が可能である。

AIは24時間体制でコーディングルールや実例を教えてくれ、開発者はより高度な問題解決に集中できる。

さらに、AIは膨大なデータを分析し、最適なデザイン案を提案するため、開発者はよりクリエイティブな部分に専念できる。

AIをパートナーとして活用することで、アイデア生成や問題解決が迅速かつ効果的に行え、戦略的なタスクに集中できる。

AIとのディスカッションを通じて、新たな視点や洞察を得ることができ、これによって創造的な解決策や新しいアイデアが生まれる。

また、AIはユーザーインターフェースの最適化やユーザーのニーズに基づいた機能改善を支援し、データドリブンな意思決定を可能にする。

前提として、AIを使いこなす能力は開発者にとって重要性を増すが、熟練度によってより価値の高いパートナーとなる事は明白である。

改めて筆者は、AIを敵と見なすのではなく、パートナーと見なすことの重要性を強調する。開発者として、AIとの協働を通じて、今までにないスピードと品質でユニークなアプリケーションを提供し、ビジネスに貢献する未来を築いてほしい。