最近、セキュリティ人材の不足が深刻になっているというニュースを耳にしたことはないだろうか。

アメリカのNPO団体ISC2の最新調査によると、この需給ギャップは過去最大となっている。

企業はセキュリティ人材を確保するためにどのような対策を講じているのか。そして、今求められているスキルとは何か。今回はこのテーマについて詳しく見ていく。

国内では約11万人が不足

ISC2の調査によると、世界全体でサイバーセキュリティ人材が400万人も不足していると言われている。日本でもセキュリティ人材の不足が深刻で、約11万人が足りていないという状況だ。

これは、日本のセキュリティ人材が前年比で23.8%増加した一方で、需要は33%も増加したためである。

つまり、セキュリティの需要が急速に高まっているが、それに見合った人材の確保が追いついていないのだ。

次に、この需給ギャップの要因について考えてみたい。

一つの大きな要因は、セキュリティ人材を必要とする業界が広がっていることである。以前は主にIT企業やセキュリティ企業が対象だったが、最近では銀行などの金融機関や一般の事業会社でもセキュリティ人材のニーズが高まっている。

リモートワークの普及やデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進、そしてランサムウェアなどのサイバー脅威の増加が背景にある。

中でも、クラウドコンピューティングが普及した影響は大きい。

企業は新しいシステムをクラウド上に構築することが多くなっており、これには高度なセキュリティ対策が不可欠である。

クラウドサービスを利用する際には、設定ミスが即セキュリティインシデントにつながる可能性があるため、専門知識が求められる。

その他、リモートワークでは、自宅から企業のシステムにアクセスすることが一般的になっているが、これに伴いセキュリティリスクも増加している。

企業は業務のデジタル化を進める中で、新たなセキュリティリスクに直面している。

これに対応するためには、最新の技術と知識を持つセキュリティ人材が不可欠である。

今求められているスキルとは?

では、具体的にどのようなスキルが求められているのだろうか。

まず、前述に伴い、クラウドコンピューティングに関する知識が重要である。クラウドサービスを安全に利用するためのスキルや、クラウド上で新しいシステムを構築するための知識が必要である。

次に、リスク評価・分析・管理のスキルも求められている。これは、企業が直面するさまざまなリスクを適切に評価し、対策を講じるための能力である。

さらに、最近ではソフトスキルを重視する企業が増えている。

具体的には、コミュニケーション能力や問題解決能力、批判的思考力などが重要視されている。

これは、技術的なスキルだけでなく、チーム内で効果的に働くためのスキルも重要だからである。

企業はこれらのソフトスキルを持つ人材を求めており、技術者としてのスキルアップと同時に、こうした能力を磨くことが重要だ。

セキュリティ分野での新たなキャリア機会

企業はセキュリティ人材の不足を解消するためにさまざまな取り組みを行っている。

例えば、従来の学位や資格にとらわれず、実務経験や実践的なスキルを持つ人材を積極的に採用する動きがある。

また、内部の非セキュリティ人材に対しても、トレーニングを行い、セキュリティの知識を身につけさせることで、社内リソースを有効活用する取り組みも進んでいる。

さらに、企業と教育機関、政府との連携が重要視されている。

無料のトレーニングプログラムや認定資格を提供することで、人材育成を支援する取り組みが行われている。

これにより、セキュリティ分野に興味を持つ若者がスキルを習得し、業界に参入する機会が増えることが期待されている。

セキュリティ人材の不足は今後も続くと予想されるが、企業は人材育成や採用基準の緩和など、さまざまな対策を講じている。

これからのキャリアを考える上で、セキュリティ分野を選択肢の一つとして考えてみてはどうだろうか。

セキュリティ分野でのキャリアは、今後ますます重要性を増し、多くの機会を提供するだろう。