生成AIが戦略立案の一部を担い始め、コンサルタントに求められる力は分析と提言から構想と実行の伴走へ移りつつある。市場価値を決める3つの軸を追う。

デジタル領域で伸びるコンサル需要

企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)は、もはや一過性の流行ではなく恒常的な経営課題として定着した。

2020年代前半にはDX推進部署の新設が相次いだ。しかし2026年現在では、その多くが「設立したものの成果が出ない」段階に直面している。

体制は作ったが、何から着手すればよいのかが決まらない。結果として、社内だけでは推進しきれない案件を外部のコンサルティングファームに委ねるケースが増え続けている。

とくにクラウド移行、データ基盤の構築、生成AIの業務適用といった領域は、専門知識を持つ人材が社内に足りていない。そのため、コンサルタントへの需要は高い水準のまま続いている。

加えて、生成AIの台頭がこの流れをさらに加速させている。

ChatGPTやClaudeのような大規模言語モデルを業務にどう組み込むか、ガバナンスをどう設計するか。こうしたテーマは多くの企業にとって未知の領域であり、外部の知見に頼る度合いが高い。

デジタル領域を担えるコンサルタントの求人は、コンサルティングファームの採用支援に携わるなかでも年々増えている。需給バランスが逼迫している実感がある。

従来のITコンサルタントと違うのは、技術の理解だけでは足りない点だ。

事業側の課題をテクノロジーで解ける形に置き換える力、つまり経営層の意思決定とエンジニアリングの実装を橋渡しする「翻訳力」の比重が増している。

技術者に経営の狙いを伝え、経営層に実装の制約を伝える。

技術の可否だけを語れる人に足りないのは、投資の優先順位を決める視点だ。経営の言葉だけでも、実装の制約を織り込んだ判断まではたどり着かない。

実際に、経済産業省の調査でも、DX人材の不足は2030年に最大79万人に達すると試算されている。この構造的な需給ギャップが、コンサルタントの市場価値を底上げしている。

この翻訳力を持ち、かつ最新の技術動向を追い続けられるコンサルタントは、今後さらに希少な存在になっていく。

コンサルタントのUX設計力

かつて、ビジネスの競争優位は製品の機能や価格で決まることが多かった。

いまユーザーが価値を置くのは、所有することよりも体験することである。サービス設計におけるUX(ユーザーエクスペリエンス)の重要性は、飛躍的に高まっている。

この変化を受けて、コンサルティングファーム各社はデザインファームの買収やUX専門チームの内製化を進めてきた。

Accentureがfjord(現Accenture Song)を、McKinseyがLUNARを傘下に収めたのは、その象徴的な動きである。

デザインシンキングの本質は、ユーザーの行動観察からインサイトを取り出し、試作品で仮説を検証し、改善を重ねる進め方だ。

作り込む前に小さく試し、間違いを早い段階で見つける。

この手法が生きるのは新規サービスの開発だけではない。既存事業の立て直しやDXのプロジェクトでも強力な武器になる。

例えば、社内の業務システムを入れ替える場面においても、現場の利用者がどのような体験を求めているかを起点に設計する進め方が成果を上げている。

UI/UXの知見を持つことで他の候補者との差別化に成功した例は、支援したコンサルタントのなかにも複数ある。クライアントからの評価も高い。

さらに2026年現在では、生成AIを活用した試作の高速化が進み、仮説検証のサイクルは大幅に短縮されている。

これにより、デザインシンキングを実践できるコンサルタントの生産性は格段に上がり、一人あたりが生み出す価値も以前より大きくなっている。

コンサルティングの現場においても、ユーザーインタビューやカスタマージャーニーマップの作成を主導できるスキルは、従来の分析力と同等か、それ以上に重く見られる。

戦略を描いて終わりにせず、ユーザー起点で使われるものを設計できるか。ここがクライアントにとって価値ある存在になれるかを分ける。

クライアントと伴走する実行力

コンサルタントの役割は、かつては「戦略を立案して報告書を納品する」ことが中心だった。

いまクライアントが求めているのは、美しい戦略資料ではなく、実際に成果が出るまで伴走してくれるパートナーである。

この変化は業界全体に広がっており、「戦略コンサル」と「実行支援」を隔てていた境界線は、年々曖昧になっている。

実行力のあるコンサルタントは、机上の分析で止まらない。デモやモックアップを持ち込み、クライアントの経営層やプロジェクトメンバーの五感に訴えかける。

言葉やスライドだけでは伝わらないビジョンを、具体的な形として見せる。そこから組織全体を動かす推進力が生まれる。

また、プロジェクトの実行フェーズでは、一人のコンサルタントがすべてを担うのではなく、専門性の異なるメンバーでチームを組んで対応する形が主流になっている。

データサイエンティスト、エンジニア、UXデザイナーといった専門家と協働し、複合的な課題に対して統合的な解を提供する力が問われている。

この「チームで成果を出す力」は、生成AIの時代にこそ重みを増す。

AIは情報整理や分析の効率を大きく高める。一方で、クライアントの組織に入り込み、関係者の合意を取り付け、泥臭く実行をやりきる部分は人間にしかできない。

むしろ、AIを活用して分析やリサーチの速度を上げつつ、浮いた時間をクライアントとの対話や実行支援に充てられる。そうしたコンサルタントが、最も高い成果を出す時代に入った。

採用面談で「実行フェーズまで責任を持って伴走した経験」を語れる候補者は、これまで支援した範囲でもファーム側から高い評価を受ける傾向にある。

今後のコンサルティング業界で市場価値を高める道は、この3つの軸を意識して磨くところにある。

デジタル領域の専門性、UX起点の設計力、そしてクライアントと共にやりきる実行力。この3つのうち、いま自分の経験で語れるのはどれだろうか。

キャリアの方向性を見極めたい人は、コンサルティング業界に精通したエージェントに相談してみるのも一つの手だ。