寄稿エージェント: 福田 尚記

Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏はCEOを退任し、会長となり、後継者はAWS責任者のアンディ・ジャシー氏が就任する予定と発表された。今回その背景と後任者とは何者なのかご紹介したい。

Amazon以外の事業に力を分散

ベゾス氏はCEO退任後、同社の取締役会長に就任予定で完全にAmazonから離れるわけではない。引き続き重要なプロジェクトや意思決定には彼の影響力はあるだろう。

退任の主な理由は、ベゾス氏は自身が立ち上げた他の事業やベンチャー企業への投資に集中する時間とエネルギーを確保するためだと述べている。

Amazon全社員向けのメッセージでは、「AmazonのCEOであることは深い責任があり、消耗するものだ。このような責任を背負っている間は他のことに注意を向けるのが難しい」と自身の意向を伝えている。

取締役会長としてAmazonの重要な事業には関わり続けていくとしているが、自身のファンドや宇宙開発事業などAmazon外の事業に時間を割いていくと思われる。

ベゾス氏はAmazonの創業者であるためCEOの交代はAmazonの歴史の中で初めてのこととなる。

また、世界的な新型コロナウィルスの影響でオンラインショッピング需要が爆発的に高まり、Amazonの直近の業績は右肩上がりのトレンドであり、ベゾス氏は過去最高の状態である今こそ役職移行にふさわしいタイミングであると述べている。

後任はAWSのCEO アンディ・ジャシー氏

気になる後任者だが、AWS部門のトップ、アンディ・ジャシー氏が就任する。ジャシー氏がどのような人物がご紹介したい。

ジャシー氏はハーバード大学を卒業しており、1997年にAmazonに入社している。社歴で言えばベゾス氏と同じくらいAmazonで働いてる古株だ。

最初はマーケティング部門からキャリアをスタートさせているが、2003年頃からAWSの立ち上げメンバーとして活躍し、2016年にAWSのCEOに就任している。

AWSはAmazonの中では後発の事業だが、今では売上の大部分を占めており、ジャシー氏がここまでAWS部門を大きく牽引してきた。

ベゾス氏もジャシー氏には全幅の信頼を寄せていると述べているため、後発とはいえ、AWS部門の責任者がAmazonトップになることは必然だったとも言える。

ジャシー氏がAmazonに入社した1997年はAmazonが創業されてから3年目のタイミングで当時のスタートアップの状況から考えるとAmazonがここまで大きくなるとは想像もつかなかったとジャシー氏はインタビューで答えている。当時はAmazon全体のCEOになるとも思っていなかっただろう。

クラウドインフラ業界のトップAWS

言わずもがなだが、Amazonは本が売られている単なるECサイトではなくなっており、世界有数のテクノロジーとして成長を続けている。

AWSはAmazonをテクノロジー企業として急成長させてきた重要な事業であり、今回のAmazonCEO交代は今後さらにAWSの事業がAmazonの中で戦略的に重要な位置付けであることのメッセージともとれる。

クラウドインフラで比較したときに一番の競合はMicrosoftになるが、AWSのマーケットシェアが約33%なのに対して、Microsoftの同部門は約20%ほどであり、大きく差をつけている。

あのGoogleでさえ、クラウドインフラではAmazonに勝てていないのが現状となるため、AWSの圧倒的強さがうかがえる。

AWSの強みはやはり構築のスピードと競争優位のあるコストパフォーマンスだ。いかなる産業においてもITの活用が急拡大していったこの10年間では、そのITインフラのニーズもそれに比例して増えていった。

自前でサーバを構築できるような資金体力がある企業であれば問題ないが、クイックかつ低コストで導入できるメリットは中小規模ユーザの導入ハードルを大きく下げた。

加えて、クラウドインフラの特徴から一度構築してしまえば、そこから基盤をスイッチさせることはなかなかしにくい。競争力のあるコストパフォーマンスに他社はなかなか太刀打ちできないのだ。

今後はセキュリティ面の向上やアプリケーションのバリエーションなどさらなる成長が期待されている。ジャシー氏がAmazon全体のCEOの就任したことでAWSの存在感はますます強いものになるだろう。

今回は、AmazonCEO交代と後任者のジャシー氏についてご紹介した。新体制となったAmazonの今後の戦略に引き続き注目していきたい。