「音声マイニング」という単語を聞いたことがある人もいると思う。「音声認識」の「音声」と、「テキストマイニング」の「マイニング」とをかけ合わせた造語だ。
要するに、音声情報を文字起こしして、その中の情報を抽出したり、傾向を分析したりするというものだ。今回はその詳細についてご紹介したい。
金融機関でのコールセンター改革は至上命題
金融機関に限った話ではないが、銀行・証券・保険いずれにおいてもコールセンターの機能や子会社を持つ金融機関は多い。コンタクトセンターを子会社として持っており、親会社の中にそれを統括する部署があることもある。
それゆえ、このコールセンター業務を効率化していくことは金融機関において重要テーマだ。
従来のコールセンター業務では、オペレーターが対応内容をシステムに手動で入力する方法が一般的だった。また、管理者がオペレーターの応対を詳細に把握するためには録音した音声を聞き返す必要がある。
音声マイニングであれば、顧客との会話をリアルタイムで自動的にテキスト化してくれるため、オペレーターのタイピングなどの業務負担を軽減できる。
例えば、損害保険業界では、事故対応に多くの人員が割かれている。特に自動車事故は件数が多いため、24時間対応の子会社もあり、親会社の保険会社は示談交渉など難易度の高い事案対応を行うなど、いずれにしてもマンパワーが必要な領域だ。
より顧客価値に紐づく業務に集中を
音声マイニングを活用すれば、応対品質の改善に役立つ。コールセンターにおけるオペレーター業務は、各オペレーターのスキルによって応対品質にばらつきが出ることが多い。
高い品質保持には、個々のオペレーターについての課題発見と、改善方法の提案が重要であり、音声マイニングはその特定に非常に有効となる。
また、通話記録を音声マイニングで分析することで、「どのオペレーターに、どんな課題があるのか」を、客観的かつデータで把握可能となる。
同時に成績のよいオペレーターの応対を分析することで、各オペレーターの問題に対する改善策を抽出しやすくなる。実務における良い見本の中から対応策を導くことができる。
また、顧客とのやり取りをテキストで表示しながらトレーニングを行ってもらうなど、オペレーターに効率的なスキル習得の機会を提供できる。
こうしたサポートにより、オペレーター個人のスキルを向上できるだけでなく、新人とベテランといった経験値・スキルの差も埋めることにつながる。
結果として、研修期間の短縮や教育担当者の負担軽減にもつながり、よりお客様対応などのコア業務に注力できるだろう。
コールセンター業務は精神負荷が大きい
コールセンターのオペレーターは離職率の高い職種と言われている。コールセンター業務では商品やサービスについて覚えるべき知識が多く、加えて、接客スキルも求められる。
また、日々クレーム対応に追われるオペレーターは精神的なストレスを感じやすいのも特徴としてあり、電話がつながらず長く待たされ苛立っているために、オペレーターを理不尽に怒鳴りつけたり、罵詈雑言を浴びたりする顧客も少なくない。
このような事情からコールセンターでは人手不足が常態化している。しかし音声マイニングを活用することでオペレーターの負担を大きく軽減できる。
音声マイニングの精度が上がっていくことで、ご過去の問い合わせ履歴やFAQ、マニュアルなどをシステムの画面上に素早く表示してオペレーターをアシストし、スムーズな応対を実現できる。
応対品質が向上すればクレームの減少にもつながり、オペレーターの離職防止にも繋がる可能性がある。
このように音声マイニングはコールセンター業務を大きく変革するポテンシャルを秘めている。まだまだ精度が足りないという現場の声もあるが、確実に現場の業務を変えてくれるだろう。
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