今回は、事務系職種の市場価値について考察をしたい。営業やマーケターと違い実績数値がわかりにくい事務系職種はどのように市場価値が決まるのか、またどのように高めるのかについて説明していきたい。

市場価値の全体像を理解する

転職市場における評価とは、どの領域でどれほどの価値を生み出せる人なのかによって決まる。

そのため、一概にどの市場でも価値が高い人材は存在せず、アーリーフェーズのベンチャーにおいて活躍する人材、上場企業の経理ポジションにおいて活躍する人材など、どの領域で活躍するのかを定めていく必要がある。

もちろん、若手のうちはキャリアの幅も広く、特定領域に絞り切るよりも最終的にやりたい仕事へのアプローチショットを打っていくといった考え方が重要であり、その過程において経験やスキルを高めていくという考え方がキャリア戦略には求められる。

事務系職種での実例で考える

例えば、経理ポジションであれば、簿記などの異なる企業でも共通するスキルについては早めに取得しておくと良い。

20代中盤から後半にかけて、どういった企業規模のどういった役割を担うことにやりがいを感じるのかということを把握していく必要がある。

グローバルな大企業での経理ポジションで活躍したいのであれば、国際会計基準を導入している企業での業務プロセスを学び、会計システムへの理解や、RPAなどの新しい技術への理解を進めながら、決算を担えるような人材になっていくというキャリアプランを作らなければならない。

メガベンチャーなどのビジネスリソースはありながら、柔軟性の高い組織で経営企画を担いたいといった場合であれば、売り上げ規模が一定成長したスタートアップに転職して、経理ポジションから経営企画といったポジションに異動し経験を積んだり、大企業で管理会計の方向にスキルを伸ばしていき、スタートアップの経営企画ポジションに直接転職するという方法もある。

このようにやりたいことによって求められる経験やスキル、キャリアプランは異なってくるので、やりたい方向を定めた上で、正しく自分のキャリアを育てていくことで市場価値がついてくるということになる。

マイルストーンとしては、20代中盤から後半までに、ベースとなる簿記などのスキルを得た上で、30代前半で 自身のやりたい方向に直結するような業務経験を積んでおくべきである。

この際に、具体的にどの企業、どのフェーズ、どの役割で貢献したのかということを説明できれば、それ以降のキャリア形成もスムーズに進む。

自分の力だけでは経験できない

事務系職種の特徴的な部分は自分の力だけでは望むような経験ができないと言える。営業職であれば営業実績を残してマネジメントのポジションに移っていくなど、その方の実力によってポジションを勝ち取ることもできる。

もちろん事務系職種でも同じような要素はあるのだが、上場を考えていない企業でIPOを経験することは難しく、国際会計基準は導入する予定のない企業でIFRS導入を経験することも難しい。

そのためキャリアを考える上で、ご自身のやりたいことに加え、どの企業であればそれが実現できるのかということを考える必要があり、この点に関しては企業理解の深いエージェントと話をした上で進めていくことをお勧めしたい。

このように事務系職種は一見キャリアの作り方を考えにくいように見えるが、実際にはやりたい方向が固まっていると必要なスキルや経験、入るべき企業などは手にすることができる。

これからのより良いキャリアを作っていくための1つの参考になれば幸いである。