企業にとってIPOは花形と言えるものであり、それはコーポレート側で経験を積んでいる人材にとっても同様である。

だからこそ、IPOの経験を積みたいというモチベーションをもとに転職を考える方も多くいらっしゃる。

今回は、IPO経験を積むための転職におけるポイントをご紹介したい。

IPO準備企業のリアルとは

実態として、IPO準備をしている企業は多いものの実際にIPOに至る例は多くない。

IPO準備企業の中で、上場まで進む確率は5%以下と捉えていただいた方が良い。IPOを経験できる前提で転職をしたものの、その後方針が変わって再度転職を必要とするパターンは、かなり多く発生しているのが実情である。

一方で、 IPO準備企業についての正しい理解をすることで、本当に上場まで到達する企業なのかを判断をすることは可能である。

もちろん、必ず上場するとは言い切れないのが実態ではあるが、 上場できるかどうかは経営者の方針や、営業部門の活躍など様々な要因によってもたらされるものであり、コーポレート側の努力だけでは上場できるかどうかを決められないということを踏まえると、 見極め方を把握しておくのはキャリア形成の一助になる。

IPO準備企業の見極め方

実際に上場に至る企業は、大きく3つのパターンがあると捉えていただくと良い。

1つ目は、外部資本が入っており何かしらの形でイグジットをしなければいけないパターンだ。 多くの場合ベンチャーキャピタルから大型の調達をしており、 イグジットの必要性はわかりやすい。

このパターンで重要視しなければいけないポイントは、売上と利益が成立しているかどうかである。ベンチャーキャピタルからの投資を受けているため、イグジットに向けて進むことは間違いないのだが、売上や利益を構築できていない場合には、 ほぼ間違いなく売却という形で決着をする。

もちろん企業としては事業を軌道に乗せ、IPOに向かう意気込みでやっているので、上場準備中とどの企業も言うのだが、事業的に利益を上げられているのかどうかは見るべきである。

2つ目は、経営者が上場に対して強い思い入れを持っているパターンである。

上場準備は多くのハードルや手間がかかり、金銭面での負担も大きい。一方で少なくはあるが、本気で上場を目指しており、かなり早い段階から、準備を進めている企業も存在する。

このパターンでは、幹事となる証券会社や監査法人との話し合いが実際に進んでおり、事業計画自体も、明確な上場の時期と合わせて設計されていることが多い。

いつから上場を考え始めていたのか、といった質問に創業期から見据えていたという 回答が返ってくる場合である。

上場に向けて、今までの契約や現場の業務フローを変える負担がネックとなり、取りやめることが多く、創業期から考えているからこそ、上場に向けて着実に進みやすいという見方もできる。

3つ目は、事業成長が非常に順調で、100億円以上の売上構築ができている企業である。

こういった企業は、事業規模的にも、今後の成長性から見ても、 上場しない方が不自然であると見られる。

人間的な部分で恐縮だが、経営者も直感的に上場する必要を感じており、自然と準備に向かっていくことになる。

この場合には、今までのガバナンスを大きく変えなければならないなど、負担も大きいが、事業的なキャッシュフローも豊富で、整備にかけるリソースを捻出することができるため、上場に至る。

また成長に向けた資金需要も 生み出せるだけの事業構想力を持っている会社も多い。

このように実際に上場に至る会社をパターン分けして理解することで、実際にIPO経験が詰める企業を見定めることができる。

IPO経験をキャリアに加える

実際にご自身としてIPO準備と実現を経験するのであれば、 少し早めのタイミングで、その企業に活躍の場を移していただきたい。

IPO準備が本格化した場合には、経験がある人材を採用する方向で動くことが多いので、経理や財務などの経験はあるが、IPO自体は未経験の場合には、 事業成長に伴いバックオフィス側の強化が求められるタイミングで転職をし、IPOプロジェクトが進み始めたタイミングで抜擢されると言う流れがスムーズである。

パターン別に具体的なタイミングを考えると1つ目のパターンでは、1-3億円の 調達を行ったタイミング、2つ目は売上規模が10億円に届き、バックオフィス人員強化が求められるタイミング、3つ目は売上規模が20から30億円になり今後も伸びていくことが想定されるタイミング。

いずれも非上場企業であることには変わりないので、数字が開示されている場合は少ないが、 企業への理解が深いエージェントに相談することで、おおよその売り上げ数値感はお伝えすることができると思う。

IPOの経験は市場的にも評価される傾向にあり、やりがいもある仕事であるため、興味がある人が実際に携わるための一助となれば幸いである。