「人事の具体的な仕事内容が知りたい」

「人事ではどのようなキャリアを目指せるのだろうか」

人事の仕事に興味があり、このように悩んでいる人も多いだろう。

人事の仕事は、会社の4大経済資源であるヒト・モノ・カネ・情報のうち、「ヒト」に関する業務を担う。

人事次第で会社の経営を左右する可能性がある、非常に重要な仕事といえるだろう。

しかし、「人事は人を採用するのが主な仕事だ」という認識を持っている人も少なくない。

そこで本記事では、人事の仕事内容や人事職に向いている人の特徴、人事の給与などに関して詳しく解説する。

人事の仕事に興味がある人や人事に就職したいと考えている人は、ぜひ最後まで読み進めてみてほしい。

人事の仕事内容

人事は、会社の4大経済資源であるヒト・モノ・カネ・情報のうち、「ヒト」に関する業務を担う。

人事の仕事は、企業の成長と従業員の幸福感に直結する重要な役割だ。

従業員と協力しながら、彼らの能力を最大限に引き出すことで、企業や組織の競争力を高めている。

また、人事は組織内の調和と円滑な運営に貢献し、従業員と企業の良好な関係を築く役割も果たしている。

「ヒト」に関する業務とは、具体的に以下4つのことである。

  • 採用活動の管理・実施
  • 人材育成のための教育や研修の計画・実施
  • 労務管理
  • 人事制度の策定・実施

採用活動の管理・実施

採用活動の管理・実施では、募集要項の作成から候補者の選考、選考プロセスの管理、入社手続きなどを行う。

採用は、会社を支える重要な経営資源である人材を確保する仕事であり、企業の事業拡大に欠かせない。

採用活動を行う上で肝心なことは、半年先・一年先など将来を見据えて実施することだ。

採用活動は、必ずしも思い通りにいくとは限らない。

例えば、求人募集をかけても応募者が集まらず、必要な時期までに内定者が決まらないケースもある。

そのため、会社規模やスケジュールに合わせて、採用予定人数や求める人材の要件などを決定し、募集をかける必要がある。

人材育成のための教育や研修の計画・実施

従業員のスキルや知識向上のための研修・教育も重要な仕事だ。

企業のビジョンやミッションを達成するためには、人材育成が必要不可欠である。

人事担当者は、従業員のレベルやニーズに合わせて、スキル向上の研修プログラムやトレーニングの計画と実施を行う必要がある。

新入社員の育成だけでなく、管理職を含めた社員教育の研修も重要な仕事だ。

また、企業によっては社内で教育を行う場合だけでなく、研修などを外部の人材育成コンサルタントに任せるケースもある。

その際には人事が仲介役となり、外部の担当者と連携を取る必要がある。

このように人材育成のための教育や研修は、従業員の未来や会社の成長に影響するため非常に重要なのだ。

労務管理

人事担当者は、労働法や企業規則に基づき、従業員の勤怠管理や労働条件・労働環境の策定・管理をする必要がある。

労務管理の具体的な仕事は、以下の通りだ。

  • 雇用契約の作成や更新
  • 給与計算
  • 勤怠管理
  • 保険の手続き など

労務管理は従業員が安心して働くために重要な要素であり、非常にデリケートな部分ともいえる。

労務管理は基本的に人事が担当する業務だが、企業によっては総務部が担当することもある。

また、近年は職場環境や人間関係の問題から、メンタルの不調を訴える人が増えている。

人事部内で、従業員のメンタルヘルスに関する課題を検討し、課題解決に向けて対策チームを発足するなどの対応も必要不可欠だろう。

人事制度の策定・実施

人事担当者は、企業のビジョンや目標に基づいて、人材制度を策定する必要がある。

例えば、経営陣や部門のリーダーと協力し、企業の成長戦略を支えるために人材の適切な配置と育成を計画することもある。

従業員のモチベーションにもつながる評価制度の立案をし、離職率の上昇を防ぐ戦略を立てることも重要だ。

もし人事制度が定められていないと、その場しのぎの人材採用になったり、育成が追いつかなかったりする可能性がある。

その結果、企業経営が後手に回り、業績悪化につながりかねない。

人事制度の策定と見直しは、企業の継続的な成長のために重要な仕事といえるだろう。

人事の動向

大手転職サイトの「doda」によると、2023年上半期の人事の求人数は、増加が見込まれている。

その理由は、コロナ禍後の業績回復に伴い、採用を一時中断していた企業や人員を減らしていた企業が採用活動を復活させているからだ。

コロナ禍でも業績が好調であった、ITやWebサービス、コンサルなどの分野に関しても採用活動は継続されている。

このように新卒採用に限らず、中途採用も強化する企業が増えているが、肝心の人事部署に人手が足りていないのが実情である。

そのため、各企業は人事で活躍できる人材採用を強化しているのだ。

人事のなかでも採用ポジションに関しては、経験者・未経験者問わず需要があり、人事未経験の若手や新卒者には大きなチャンスだろう。

また、労務管理や人事を含めた経営課題の解決など、専門知識やスキルを必要とする分野のニーズも高まっている。

人事として就職したいなら、今のうちに労務管理や企業の経営課題などを勉強しておくのも一つだろう。

人事に向いている人の特徴

人事の仕事は多岐にわたり、さまざまな人との交流が欠かせない仕事である。

人事の仕事に向いている人の特徴は、以下の通りだ。

  • 人と関わることが好き
  • 柔軟性や調整力がある
  • 人間観察力がある
  • 几帳面である
  • 情に流されず判断できる
  • 口が堅く、秘密を保持できる

人と関わることが好き

人事の仕事では、さまざまな人とのコミュニケーションが求められる。

従業員の採用や配置、パフォーマンス管理、トレーニングや問題解決などは、あらゆる人々とやりとりしながら進めていく。

初対面の応募者とやりとりしたり、従業員から労務に関する相談を受けたりと、人と関わることは避けられない。

ほかにも、就職活動イベントや説明会で個別ブースを設置した場合に、就活生へプレゼンをしたり質問に答えたりすることもある。

仕事を円滑に進めるためにも、人と関わることが好きな人が人事に向いているといえる。

柔軟性や調整力がある

人事の仕事では、急な変化や要望に対応するケースがある。

各従業員の悩みや要望のヒアリングは、常日頃から行う。

そのなかで、人事は各部署における構成・人員配置を見直したり、新たな人材を採用したりするなどの判断が必要だ。

柔軟性を持ち、その場に合った対応が求められる。

人間観察力がある

人事は従業員に向き合う仕事だ。

従業員の行動や悩みを把握し対応する必要があるため、日頃から従業員に対して興味関心を持ち、注意深く観察する必要がある。

また、高い人間観察力を持つことで、従業員の適性を把握でき、組織内の人材配置や人事異動にも役立つだろう。

さらに、日頃から培っている人間観察力によって、人材採用時に応募者の本音や適性を判断しやすいのも強みだ。

几帳面である

人事の仕事は、人材を確保する採用業務や従業員とのやりとりだけでなく、デスクワークも多く存在する。

例えば、労務管理では法律を遵守した上で、正確な書類を作成する必要がある。

また、給与計算や保険の手続き、書類管理など細かな数字管理も行う。

人事として細かな業務を正確かつスピーディーに行うためには、几帳面であることが欠かせない。

情に流されず判断できる

人事の仕事では、従業員の採用や昇進、給与査定、トレーニングの実施、解雇などの重要な判断が求められる。

給与や待遇、解雇などの内容は非常にセンシティブだ。

従業員から給料や待遇に関する要望・不満を伝えられるシーンも少なくない。

人事として従業員の気持ちを理解するのも重要だが、情に流されてしまうと適切な判断ができないだろう。

一部の従業員を特別視せず、情に流されず、公平性や客観性を保った判断が求められる。

口が堅く、秘密を保持できる

人事は、従業員の個人情報や会社の機密情報を扱う。

当然ながら、知り得た個人情報や機密情報を外部に漏らすようなことがあってはならない。

最近では、LINEを使ったコミュニケーションで、写真や情報が簡単に共有できるようになった。

またSNSに投稿することで、投稿内容が瞬く間に拡散されることも珍しくない。

個人情報や機密情報に関するルールを守っているつもりでも、LINEやSNSによって情報が漏れ出す可能性があるので、十分に注意する必要がある。

人事のキャリアパス

人事のキャリアパスには、以下の3つが考えられる。

  • 人事のスペシャリスト
  • 人事のゼネラリスト
  • 人事コンサルタント

人事のスペシャリスト

人事の仕事は、採用・教育と研修・労務管理・人事制度など、さまざまである。

スペシャリストは、このうち一つまたは二つなどの仕事に限定して、専門家を目指すキャリアパスである。

例えば、教育と研修の分野を極めることで、他企業から教育コンサルティングの依頼を受ける可能性も出てくるだろう。

また、人事制度に特化してスキルを磨くことで、人事部設立を検討している企業へのサポートも可能だ。

ただし、人事のスペシャリストを目指す場合、人事の仕事が細かく分業化されている大企業に入社する必要がある。

なぜなら、一人の人事担当者が人事の仕事を全般的に行う中小企業・ベンチャー企業の場合、特定の知識やスキルを磨くことが難しいからだ。

スペシャリストを目指す場合は、人事の内部事情や仕事内容をよく確認する必要がある。

人事のゼネラリスト

ゼネラリストは、人事の行う業務を幅広くこなせる人材だ。

人事に関する幅広い知識や実務経験を習得できるため、キャリアアップで有利に働くケースもある。

また、ゼネラリストとして経験を積むことで、人事部全体を見わたせるスキルが身につく。

広い視野を習得できれば、マネージャー職や部長職など、経営トップに近いポジションへのキャリアアップも可能である。

ゼネラリストを目指す場合は、中小企業やベンチャー企業に就職するのがおすすめである。

なぜなら、規模の小さい企業では一人で多くの業務を担うケースが多く、ゼネラリストとしてのキャリアを歩みやすい環境だからだ。

採用だけでなく、社員教育やキャリアステップなど、従業員の未来に向き合いたい人はゼネラリストがおすすめだ。

人事コンサルタント

人事コンサルタントとは、人事に関する悩みや経営課題を抱えている企業に対して、人事領域のコンサルティングを行う仕事である。

具体的には、以下のような仕事がある。

  • 採用活動への助言
  • 人材育成制度の立案
  • 人事制度の構築
  • 給与や退職金などの制度設計
  • 組織そのものの風土改革 など

人事コンサルタントを目指すには、人事の行う仕事への深い知識と経験が必須だ。

さらに、企業の経営課題を発見するスキルや課題解決に対する論理的なアプローチなども求められる。

そのため、まずは企業の人事部でさまざまな実務をこなし、マネージャーなどの役職を経験することが必要だ。

役職が上がると、部署をまたいで会社全体の状況を確認できるようになり、会社経営の視点も磨かれる。

企業の人事部で結果を出すことで、コンサルタントへの道がひらかれるだろう。

人事の平均年収と年収の推移

大手転職サイトの「doda」によると、2023年6月時点で人事の平均年収は「506万円」である。

人事が含まれる企画/管理系全体の平均年収は527万円であるため、全体と比べると若干低い傾向にある。

ただ、国税庁が発表した「令和3年分民間給与実態統計調査」によると、2021年の国内平均年収は「443万円」であるため、全業界で比較すると人事給与水準は高いといえる。

ここでは、人事の年代別と男女別の年収も詳しく解説する。

年代別の年収

年代年収
20代393万円
30代498万円
40代620万円
50代〜754万円

出典:平均年収ランキング(職種・職業別)【最新版】|doda

30代から40代、40代から50代にかけて、年収の伸びが大きくなる傾向にある。

人事の役割は、営業職のような利益確保ではなく、会社の経営資源である人材を堅実に守ることだ。

そのため、20代・30代では知識とスキルを着実に身につけて、40代になるまでに役職者としてステップアップする人が多くいると考えられる。

また、「dodaの年齢・年代別の平均年収」のデータによると、人事の年収はどの年代も業界全体の平均年収以上の結果になっていることがわかる。

以上のことから、全年代を通して高収入が得られやすい職種といえる。

男女別の年収

性別年収
男性576万円
女性444万円

出典:平均年収ランキング(職種・職業別)【最新版】|doda

男女別の人事の平均年収は、男性のほうが130万円ほど高いことがわかる。

ただ、女性の人事の平均年収は特別低いわけではなく、全業界の平均よりも高い。

つまり、女性が働きやすく・活躍しやすい職種ではないかと考えられる。