この記事では、消費財業界について語るとともに、主要なプレイヤー、業務内容、適性、そしてキャリアパスについて解説します。

【業界トレンド】

消費財業界のトレンドは常に変化しており、その中でもとりわけ注目されるのがデジタル化とサステナビリティです。

デジタル化については、EC(電子商取引)の急速な普及だけでなく、データ分析や人工知能(AI)も、消費者行動を理解し、よりカスタマーエクスペリエンスを向上させるために不可欠な要素となっています。これは在庫管理システムにおける的確な需要予測とリアルタイム在庫管理など、効率的なサプライチェーンを構築する役割も担っています。

サステナビリティについては、日本においても持続可能な製品への需要が高まっている中で、消費財企業は環境への負荷を減らし、リサイクル可能な製品を提供することに焦点を当てています。プラスチック廃棄物の削減、CO2排出の削減、再生可能エネルギーの使用、持続可能な調達など、さまざまな分野に業界全体で取り組んでいます。

またブランドとしても社会的責任を果たすことが強く求められており、CSR(企業の社会的責任)活動が消費者印象に与える影響は大きく、エシカルなブランドや社会的な使命を持つ企業を支持する傾向も強まっています。

このような業界変容を通して、今後の消費財業界においては、様々なステークホルダーに適切に配慮しながら、デジタル化を通じたカスタマーエクスペリエンス向上を果たしていく必要があると言えます。

【主要プレイヤーと特徴】

【主な職種の業務内容】

営業

法人顧客 (主に小売店) に対して自社製品を扱ってもらうための提案を行います。代理店を介した既存営業が中心ですが、売上比率の高いメーカーは他社商品も含めた棚位置や、全社的な販促提案など、小売店バイヤーと直接折衝しながらの販売戦略も手掛けます。

マーケティング

消費者の購買行動や市場トレンドを分析し、商品のコンセプトや商品設計を企画します。商品化が決定したら、開発や製造部門と連携し、実際の発売までのスケジュールを策定していきます。ブランドにブランドマネージャーとして担当が付くケースが多く、商品発売後は広告施策や店頭プロモーションにも関わっていきます。

研究開発

マーケティング担当が調べたニーズやトレンドを元に商品案を実物に落とし込みます。トレンドや市況感に大きく影響を受ける業界の為、商品サイクルが早く、常に新商品や商品改善をする必要があるのが特徴です。

購買

製品を作るために必要な原材料や包装材料などを調達するのが購買職です。サプライヤーを選定し、原材料の価格決定などコストの最適化や供給ルートの確保、納期や品質管理を行います。昨今ではESG観点での資材調達など、環境問題や社会情勢への理解も求められる仕事です。

【職種別適性】

営業

生活に密着していて、トレンドや市況感に大きく左右される業界である為、世の中の動きや流行に敏感な方は向いています。また営業としては主要な大手顧客を1、2社担当するケースが多いため、広く顧客に関わりたいというよりは、目の前の顧客に深く向き合いたい、という志向性の方の親和性が高いです。

マーケティング

市場の動きに敏感なことは勿論、社内外含めステークホルダーが多く、様々な状況を把握した上で最適解を出さなければいけない為、推進力、調整力のある方が向いています。また市場分析や購買データも扱うため、数字に強く分析思考に長けている方が活躍する傾向にあります。

研究開発

試行錯誤を繰り返すため、探求心があり、粘り強く物事に取り組める方は向いています。また商品開発のサイクルが早く迅速な対応が求められるため、各部署の意見や要望を早く正確にくみ取ることの出来るコミュニケーション能力も大事な要素となります。

購買

購買部ではコスト管理や予算管理が重要な業務である為、市場の動向や価格変動に敏感に反応できる人は向いているといえるでしょう。また、サプライヤーとの交渉が頻繁に行われる為、交渉力を持ち、双方が納得するような着地に導ける方が求められます。

【キャリアパス】

《社内》

① 管理職|大手顧客を担当しプレーヤーとして実績を残したのちに営業部内にて管理職へと出世するケース。王道ルートではありますが社内競争も激しく、レガシーな業界の為、比較的時間を要するのも特徴です。

② マーケティング部|営業で現場を経験後 (初期配属も稀にあり) 、マーケティング部門に異動するケースがあります。花形部署の為競争は激しく、営業で突出した成果を残した上で、本社とのコネクションも強い人材が抜擢される傾向があります。

③ 海外事業部|語学が堪能な方は、経験や語学力を活かして、海外事業に携われるケースもあります。企業の売上比率にもよりますが、基本的には狭き門で新卒の場合、入社時からロードマップが引かれているケースも多いです。

《社外》

① 同業他社|業界構造や取引先が大きく変わらない為、身に付けた経験知見が活かしやすく、職種問わず同業他社への転職は比較的行いやすいです。やや難易度は高いものの、日系から外資系企業へ転職するケースもあります。

② 広告代理店・マーケティング会社|営業やマーケティング経験を基に、代理店やマーケティング会社に転職することも考えられます。他業界と比較してもマーケティングの素養は得やすく、ポテンシャルがあれば実現しうる選択です。

③ コンサルティングファーム|業界知見や営業経験や活かして、コンサルティングファームの消費財領域に転職することも選択肢の一つです。消費者動向の変化、サステナビリティやデジタライゼーションなど、かつてない変革期である今は非常にニーズは高まっているといえるでしょう。

以上が消費財・日用品業界の概要とキャリアパスになります。業界の特性や自身のスキル、興味を考えながら、自分に最適なキャリアを模索してみてください。