最近のトレンドとしてSEやSIer企業からITコンサルに転職する流れができつつある。このような業界にいる方は自分の身近な人がコンサル業界に転職する、といった話を耳にしたことがあるのではないだろうか。

今回はこのトレンドについて抑えておくべき3つのことについてご紹介したい。

業界の垣根があいまいになりつつある

業界ごとの目的や方法は依然として異なるが、業界の垣根があいまいになりつつあることが特徴として考えられる。

一般的にSEの目的は、クライアントの要件・提案依頼書(RFP)に基づいてシステムの要件定義、設計、開発、テスト、リリース作業などを行う。このとき、自社のリソースで全て対応することもあれば、グループ会社や下請け会社を巻き込みながら進めることもある。

一方でITコンサルの目的は、クライアントの経営課題や業務課題を整理し、その解決策の提示と具体的な実行プランの支援となる。

解決策の具体的な内容は状況に応じて異なるため、自社でSIのチームがあればそこに繋げることが優先されるが、クライアント・プロジェクトの種類・制約によっては外部ベンダーを選定することもある。

このように目的・手法は異なるが、SIerがコンサルチームを立ち上げる傾向もあり、コンサルティングファームがSIチームを立ち上げる傾向もどちらもある。

例えば、アクセンチュアなどは社員数が15,000人を超えてきているが、社内でSIチームやエンジニアチームを持っているため、より上流工程からクライアントに入り込み、下流の開発工程まで関与することできる。

IT戦略立案や業務効率化のプロジェクトを進める中で、後続の大規模開発案件に繋げる動きが特徴的であり、コンサルプロジェクトからSIプロジェクトを一気通貫で対応することでクライアントに価値提供している。

一方でNECなどは社内でコンサルチームを立ち上げ、より上流からクライアントに価値提供できるように動いている。

ビジネス要件が固まってしまっている状態からスタートではなく、クライアントによって本当に必要なシステムを構築するために課題定義から入り込みつつ、後続のSIに繋げていく戦略だ。

SEからITコンサルに転職するメリット

次にSEからITコンサルに転職するメリットについてご説明したい。はじめに3つ列挙すると以下が考えられる。

①経験・スキルを活かしやすい
②ソリューションの制約を受けずにクライアントの課題解決に取り組める
③足元の年収が上がり、将来的な伸びも期待できる

①については、冒頭説明したように両者の垣根があいまいになってきているため、SEでの経験をコンサルでも活かすことができる。

具体的には、クライアントとの折衝経験があれば望ましいが、各工程の進捗管理、障害管理表の更新、テストケースの洗い出しとテスト実行計画策定などプロジェクトマネジメントに関わるような経験はコンサルでも求められる。

②については、SEの立場ではどうしてもソリューションありきでの検討になってしまうが、コンサルはフラットな立場でクライアントのビジネス要件、セキュリティ要件、運用体制、予算など様々な要因を考慮した上でのベンダー選定に関わることもできる。

クライアント側でお抱えのベンダーに決まっている場合もあるが、どのベンダーを進めるのが良いのか?といったベンダー選定の悩みをクライアントから相談されることもよくある。

③については、コンサル業界は他業界と比べて年収が高い。一般的に転職は年収維持か少しダウンすることが多いが、SEからのコンサル転職でうまくいけば年収アップも十分に視野に入る。

さらに、コンサル業界は実力主義のため昇進・昇給スピードも速い。足元の年収は変わらなかったとしても、入社後にパフォーマンスを発揮することで年収の伸びが十分に期待できる。

中長期的には他コンサルへの挑戦が可能

最後に、中長期的なキャリア戦略についてご説明したい。例えば、SEからITコンサルタントになることはなんとなくイメージがつくかもしれないが、SEからいきなり戦略コンサルや業務コンサルに挑戦するのは難しいのが現実だ。

一方で、一度コンサルとしての経歴が積み上がるとコンサルファームからは業界出身者として見てもらえるようになる。最近のトレンドとしてもコンサルファームからの人材採用要件はコンサル経験者かそれ以外かで記載内容が大きく異なる場合もある。

それゆえ、まずはこれまでの開発経験やIT経験が活きるようなITコンサルとしてコンサルタントとしてのベーススキルを身に付け、そこからさらにビジネスサイドにも挑戦したいということであれば十分射程圏内になる。

このように転職やキャリアを点で考えるのではなく、戦略的かつ中長期的に考えたときにどのような経験・スキルを手に入れることでその後のキャリアがどのように広がるのか、積み上がっていくのかを考えることが非常に重要となる。

今回は直近のトレンドであるSEからITコンサルへの転職についてご紹介した。今後もDX推進やPMOといったことは経営課題の中での重要テーマになっており、そのトレンドは続くだろう。よりクライアントの課題解決に挑戦したいという人は本記事を参考にしてみてほしい。