この記事では、生命保険業界について語るとともに、主要なプレイヤー、業務内容、適性、そしてキャリアパスについて解説します。
【業界トレンド】
生命保険業界では、その営業手法において少しずつではありますがデジタル化が進んでいます。
2021年度末の個人保険の保有契約高(死亡保障などの主要保障の金額)は死亡保障を抑えて医療保障を充実させる近年の傾向を反映して、806兆8,784億円(前年度比98.9%)と減少しました。
従来の対面型の営業に加えて、メールやオンライン面談等のデジタルを組み合わせた営業活動の実施により、個人保険の新規契約件数は1,887万件(前年度比110.8%)と、3年ぶりに増加しました。
では、契約に至るまで、最初から最後までインターネット上で完結するような仕組みにしていけばよいのではないかというと話はそう簡単ではありません。
公益財団法人生命保険文化センターの調査によると、インターネットを通じての加入を希望すると回答した層は約17%増加している一方で、加入経路実績を見ると、インターネットを通じて加入した割合は2021年で4.0%に留まり、その割合はあまり増加していません。
生命保険という高額かつ難解な商品において、人間による高度な説明と信頼関係が求められているということです。
生命保険に必要性を感じる人の割合が減り、保険に支払ってもよいと考える金額も下がりつつある流れの中で、生命保険業界はますます、顧客に対して商品の魅力や必要性を伝えていく必要性がでてきます。
こうした状況下でどこまで営業職員による営業スタイルが残り続けるのか、今後の動向から目が離せません。
【主要プレイヤーと特徴】
【主な職種の業務内容】
営業
・リーテイル
国内生保が強みとしているのが営業ネットワークによる地域に根ざした保険販売です。個人のお客様から地場の中小企業まで広く担当し、保険の契約からアフターフォローまで行います。
・ホールセール
国内の企業、団体、自治体などに対して団体保険や企業年金保険などの商品提案を行います。総合的なコンサルティングを行い、福利厚生の整備・拡充や事業リスクへの備えに貢献する仕事です。
・代理店営業
税理士、公認会計士、保険専業代理店、金融機関代理店等の保険代理店に対してサポートを行います。また、新規の代理店開拓も行い、委託登録の案内や手続きも行います。
アンダーライティング
役割は主に3つに分かれ、①新契約の担当②収納保全③保険金や給付金の支払業務を行います。基本的には事務やサポート業務となりますが、保険会社を支える重要な役割です。
資産運用部門
生命保険会社は国内トップの機関投資家としての顔を持ちます。お客様から預かった保険料をもとにした莫大な金額を安全かつ安定的に運用する役割を担っています。
企画管理部門
中長期的な経営計画や事業戦略の策定だけでなく、品質向上に向けた取組み、全社横断的な課題解決に向けた取組みを行います。商品開発やIT関連、海外事業など様々な業務があります。
【職種別適性】
営業
・リーテイル
顧客との接点が一番多いことが特徴なリーテイル営業は、人とコミュニケーションを取る事が好きな方は向いています。また、目標に向かい計画的に行動できる方も活躍している傾向があります。
・ホールセール
企業の潜在課題に対する解決策を提案するスキルが求められます。分析力はもちろんですが、企業の制度や将来のリスクといった目に見えないものを言語化し的確に伝える提案力をつけたい方は向いています。
・代理店営業
組織課題に深く入る込む必要があるため、様々な経営資源に対する知見とその課題に対する解決策を提案する必要があり難易度は高いですが、組織全体の成長を後押しできる仕事に挑戦したい方は向いています。
アンダーライティング
「素早く正確に」が求められる部署ですので、オペレーションの強い人が活躍する傾向にあります。また、契約や支払い手続きをする上で欠かせない重要な存在ですので、顧客折衝をするイメージは湧かないが組織にとって重要な役割を担いたい志向性の方に合っている仕事です。
資産運用部門
日々変化するマーケットの動向を捉え対峙することが求められます。 世の中の動向にアンテナを張り、キャッチすることが求められますので、好奇心や向上心がある方に向いている職種です。
企画管理部門
課題の本質を見抜き、解決していくことが求められます。他部署との連携なども必要になってくるため、ステークホルダーが多い環境で推進力に自信がある人に向いている仕事です。
【キャリアパス】
まず、入社時の職制としては一般的な総合職、エリア限定型の総合職、営業に特化した総合職などその方の強みや志向に合わせたポジションが設けられています。
一般的な総合職では 約3年単位で部署を異動があり、 3課店目までの経験をもとに、今後どの部門でキャリアを積んでいくのかが決まります。30代以降に関しては、それまでの経験を活かしてキャリアアップをしていくようなイメージを持っていただくと良いでしょう。
営業に特化した総合職では入社後5年〜6年で現場の責任者に就き、営業職員のマネジメントを行っていくので、スピード感を持って営業力やマネジメント力等を磨く事が出来ます。
一方で、生命保険業界は業務の専門性が高いものが多く、ポータブルスキルが身に付きにくいと感じられた方については社外へのキャリアチェンジを考える方も一定数おります。 転職先については、コンサルティングファームやSIer、Saas、人材、M&A、メーカーなど、その人の志向性や経験によって大きく変わります。
注意点として、生命保険会社での企画経験、法人への提案経験を得る事は容易ではなく、コンサルティングファームやIT企業への転職も簡単ではありませんので、自分自身の強みや将来的なキャリアプランから、足元でどんな経験を積むべきなのかを考えた上で、日々の業務に取り組んで頂く事が重要になります。また、若手の転職市場においては、新規営業経験を評価する会社も多く、その経験を活かして転職する方もいらっしゃいます。
以上、生命保険業界の概要について触れて参りました。 業界の特性や自身のスキル、興味を考えながら、自分に最適なキャリアを模索してみてください。
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