AI技術の進化は止まるところを知らず、我々の生活のあらゆる側面に影響を与えている。特にOpenAIが発表した最新モデル「GPT-4o(フォー・オー)」は、その知能の高さに加えて、人間らしい応答や感情表現を取り入れることで話題を集めている。

本稿では、GPT-4oの進化のポイントを3つに分けて解説し、その可能性と課題について考察する。

「人間らしい」AIへ

OpenAIのデモンストレーションによると、新バージョンのChatGPTは早口で自然な音声会話が可能だという。

例えば、「ChatGPTがいかに便利か」と質問すると、ChatGPTは「やめてください、照れちゃいますよ」と応じるなど、感情的な反応を示す場面があった。

従来のGPT-4.0ではこうした感情表現は限定的で、ユーザーの感情に合わせた反応を示すことは困難であった。この進化はビジネスにおいても、ユーザーとの対話がより円滑になることを意味しており、注目度が高い。大きく変化したのは以下3点だ。

1.応答速度と使いやすさの向上

今回の改良点の一つは、応答速度の大幅な短縮である。特にスマホやタブレットからの利用を想定し、ChatGPTのようなAIと音声でチャットする際の応答時間が平均で0.3秒程度と劇的に短縮された。

これにより、ユーザーはよりスムーズで自然な会話を楽しむことができる。また、ユーザーが途中で話題を変えたり新しいリクエストを出したりすることができるため、自由なコミュニケーションが可能になった。

さらに、異なる言語を同時通訳するデモ動画も公開されており、GPT-4oは日本語を含む50種類の言語に対応している。これにより、多言語環境でのコミュニケーションも容易になった。

2.マルチモーダル機能の強化

GPT-4oはテキスト、画像、音声など多彩なコンテンツを理解し処理する能力を持っている。

例えば、スマホで撮影された映像に何が映っているかをAIが認識し、視覚障害者に適切なアドバイスをすることができる。また、自撮り写真をアップロードすると、AIが似顔絵を描くこともできる。

このマルチモーダル機能は、従来のGPT-4でも存在していたが、GPT-4oでは最初からシングルモジュールとして開発され、異なる種類のコンテンツをより高速かつスムーズに処理できるようになった。

3.感情を理解し表現する能力

GPT-4oの最大の特徴は、ユーザーの感情を理解し、それに応じた返答や対応ができる点である。

例えば、数学の宿題に苦戦する子供を励ましながらサポートするデモ動画では、AIが「うーん、近い」という表現を用いて子供のやる気を促し、最終的に正解へ導く様子が紹介されていた。

このように、AIが人間の感情を理解し、自らも感情を表現する能力は「擬人化(anthropomorphization)」と呼ばれる。擬人化はユーザーの心理状態に寄り添ったきめ細かいAIサービスを可能にする。

感情を持つAIの可能性と問題点

これまでに述べた通り、GPT-4oの登場により、ChatGPTはさらに活発な会話スキルを得るだけでなく、写真や図表などの画像の理解力も向上した。

今後は、パーソナライズされた体験を提供するために、ユーザーに関する情報を「Memory」に保存できるようになる予定だ。これにより、ユーザーごとにカスタマイズされた対応が可能となり、ビジネスの現場でもより効果的なサポートが期待される。

一方で、高度なAIが感情を持つかのように振る舞うことには、倫理的なリスクも伴う。Google DeepMindの研究チームは、AIアシスタントが高度な説得力を持ち、中毒性を生む可能性があると警告しており、実際、チャットボットとの過度な依存が問題となるケースも報告されている。

このため、AI技術の進化と同時に、その使用に関する倫理的なガイドラインの整備が必要不可欠である。

将来的には、より高度なAIである「人工汎用知能(AGI)」の実現が視野に入っているが、その道のりは慎重に進められるべきである。

今回のGPT-4oの擬人化は、その第一歩として注目に値する。人間とAIの共存する未来に向けて、どのように技術を進化させるか、我々一人ひとりが考える時代が来ている。