ビジネスの現場では、「話がわかりにくい」という指摘が何度も耳にされる。クリアで効果的なコミュニケーションを可能にするためにはどうすればよいのであろうか。

多くの人が抱えるこの悩みについて、デロイト・トーマツ・コンサルティングにて12年間コンサルティングに従事された安達裕哉氏の著書『頭のいい人が話す前に考えていること』を参考にしつつ、紹介する。

整理された思考の特徴

思考が整理されているかどうかは、話し始めれば意外とすぐにわかるものである。

思考が整理されていない場合、その話は本質を捉えることができず、長々と続くことが多いからだ。話の焦点が定まらず、聞き手を引き込む要素が欠けている。このような話し方はビジネスシーンでは大きな障害となることがある。

一方で、思考が整理されている人は、話を始める前に伝えたいことを深く理解し、整理する。彼らは話の中で本質を見失わず、ポイントを明確にすることで聴衆の理解を助けている。

分かりやすい話が出来るようになる5つの思考法

「客観視」の思考法

まず、自分の感情や先入観を一旦脇に置き、状況や問題をあるがままに捉えることから始める。これにより、冷静かつ公平な判断が可能になり、より深い理解へと繋がる。

例えば、話が浅く聞こえる人々が依存する「少量の、根拠のない情報」に振り回されることなく、情報の真偽を見極めることができる。

また、客観視を行う際には、相手の言葉の「意味・定義」を慎重に考えることも重要である。相手が使う用語にどのような背景や定義があるのかを理解することで、意思の疎通を図りやすくなる。

さらに、問題の「成り立ち」を理解することで、その問題の本質や原因を把握し、より効果的な解決策を導き出すことができる。

「整理」の思考法

整理の思考法の核となるのは、「理解しているとは整理できている」ということである。情報を整理することによって、初めてその情報は理解され、有効に活用される。

整理する際の第一歩は、結論から話を始めることである。これは、相手にとって最も重要な情報を先に伝え、聞く側の関心を引きつけるためである。結論を先に述べることで、話の方向性が明確になり、その後の詳細な説明がよりスムーズに進む。

次に、事実と意見をはっきり分けることも重要である。事実は客観的な証拠に基づくものであり、意見は個人的な見解や感想である。この二つを明確に区分することで、誤解を防ぎ、相手に正確な情報を提供することができる。

「傾聴」の思考法

傾聴する際、最も重要なのは相手の話に全注意を向けることである。肯定も否定もせず、評価や意見を控え、相手の話をそのまま受け入れる。これにより、話し手は安心して自分の考えや感情を開示することができる。

また、話が途切れた際には、その沈黙を尊重することも傾聴には含まれる。沈黙は、話し手が次の言葉を考えるための貴重な時間となり得る。

効果的な傾聴者は、自分の好奇心を総動員して相手の言葉に耳を傾ける。これは、相手が本当に伝えたいことを探るためのものである。

さらに、話を整理しながら聞く技術も重要である。これには、相手の話のゴールを確認し、話された内容を構造的に理解することが含まれる。これにより、話し手の意思決定を支援し、よりクリアなコミュニケーションを促進する。

「質問」の思考法

質問の効果を最大化するためには、まず質問の目的を明確にすることが求められる。質問には、情報を明らかにするための「導入質問」と、話を深掘りするための「深掘り質問」がある。

導入質問は、相手の経験や行動に関連する過去の事例を尋ねることで、話の枠組みを設定する。たとえば、「過去に直面した困難な状況にどう対応しましたか?」といった質問がこれに該当する。

これに対し、深掘り質問は、その状況での具体的な行動や、その結果としての変化に焦点を当てる。これにより、相手の行動パターンや思考の深さが明らかになる。

効果的な質問を行うためには、その質問が本質を捉えるものでなければならない。質問がうまい人は、ただ情報を集めるだけでなく、その情報がどのように現状に影響を及ぼすかを理解しようとする。

そのために、一つの質問に対する答えを待つのではなく、答えを基にさらに質問を深めていく姿勢が重要である。

「言語化」の思考法

コミュニケーションコストを意識することは、相手とのやり取りにおいて無駄を省くために不可欠である。

たとえば、電話会話は相手に即座に反応を求めるため、言語化のコストが高くなりがちである。そのため、自ら進んで言語化コストを払うことで、相手に負担を強いないコミュニケーションを心がけることが重要である。

また、言語化の質を高めるためには、「〇〇ではなく、△△である」という形式を使うことが推奨される。この表現は、単なる情報の提示ではなく、相手に深い印象を与えるための議論や説明の構築に役立つ。具体的な対比を通じて、リスナーの理解を促進し、強い印象を残す。

言語化能力を高めるための習慣には、いくつかの方法が存在する。まず、ネーミングにこだわることは、言語化のスキルを磨く上での出発点である。適切な名前を付けることで、抽象的な概念や複雑な情報を明確にする。

さらに、「ヤバい」「エモい」「スゴい」といったあいまいな表現を避け、具体的な言葉を選ぶことで、思考のクリアさを保つ。

分かりやすい話が出来る人たちが実践しているこれらの思考法は、あなたがビジネスで成功するための鍵である。毎日の業務にこれらの技術を取り入れることで、より信頼され、尊敬されるビジネスマンに成長することが期待される。是非、この洞察を活かしてみて欲しい。