人手不足の問題がますます深刻化している。

この問題が日本経済にどれほど大きな影響を与えているか、具体的な事例で示す。

帝国データバンクの調査によると、従業員の退職や採用難、人件費高騰を原因とする「人手不足倒産」は、2014年には年間70件であった。それが2024年では上期だけで182件と、2倍以上の数値となっている。

182件の人手不足倒産の実態

帝国データバンクの調査結果によれば、2024年上半期に発生した「人手不足倒産」の件数は182件で、過去最多を大幅に上回るペースで推移している。

特に建設業と物流業では、運転業務や建設業務の時間外労働に上限規制が適用されたことで、労働力が不足する「2024年問題」の影響が大きく表れている。

さらに、この問題は小規模企業に特に深刻な影響を与えている。

小規模企業=飲食サービス業・宿泊業をイメージする人も多いかもしれないが、実際には建設業が小規模企業全体の13%を占め、飲食サービス業・宿泊業の14%とほとんど変わらない。

また、総従業者数ベースでは建設業が約20%を占め、卸売業・小売業の約18%を上回る。

このような状況下で、中小企業は「人手不足スパイラル」に陥っている。

価格転嫁ができないために人手が欲しいのに雇えず、新規採用も難しい。さらに長時間労働をさせることもできず、結果として経営が困難になる。

このスパイラルから抜け出すための努力をしている企業も多いが、限界があるのが現状だ。

人手不足倒産が示す企業格差の深刻化

建設業と物流業では、人手不足が原因で多くの企業が倒産に追い込まれている。

例えば、建設業では従業員10人未満の小規模企業が全体の約8割を占めており、厳しい状況に追い込まれている。物流業でも同様の傾向が見られ、人手不足による長時間労働の規制が倒産を促進している。

別のデータでは、厚労省が発表した2023年度平均の有効求人倍率は1.29倍で、3年ぶりに低下している。

この背景には、大企業が人を採用する代わりに機械を導入する割合が増えていることがある。省力化目的の設備投資によって人手不足を乗り越えようとする企業努力が見られるが、中小企業ではそのような投資が難しい場合も多い。

また、大企業では賃上げが進んでいる。経団連によると、大手企業の賃上げ率は5.58%で過去最高を記録している。

しかし、これは企業規模による格差を広げているに過ぎない。

小規模企業では賃上げをして若い人を集めたいのに、それができないために苦しい状況が続いている。

地域を支える中小企業の存在

中小企業は、日本経済の基盤を支える重要な存在だ。

彼らは大企業のサプライチェーンの一部として、独自の技術やノウハウを提供し、高品質な製品やサービスを生み出している。

物流業では、中小企業が地域ごとの配送網を構築し、効率的な物流サービスを提供している。

彼らは、大企業がカバーしきれない細かなニーズに対応し、迅速かつ柔軟なサービスを実現する。

特に、地域密着型の物流サービスは地元の企業や住民にとって不可欠だ。中小の物流企業が細やかな対応をすることで、消費者の満足度を高め、地域経済の活性化に寄与している。

建設業においても、中小企業の存在は欠かせない。

彼らは地元の建設プロジェクトに精通し、地域の特性に合わせた建築技術を提供している。中小建設企業は、大規模なインフラ整備から住宅建設、リフォームまで幅広い分野で活動しており、地域社会の発展に貢献している。

特に、地元のニーズに対応する柔軟性や迅速な対応力は、大企業には真似できない強みだ。

中小企業の厳しさは今後も続くと予想され、大企業との協力がますます重要となっている。

中小企業が生き延びるためには、彼らの努力は勿論だが、大企業がもっとコミットする必要がある。大企業は中小企業の技術を尊重し、協力関係を築くことで、双方にとってメリットをもたらすことができる。

今後の動向に注目し、適切な対策を講じることが求められている。このコラムを通じて、人手不足と2024年問題の深刻さとその解決策について理解を深めてもらえれば幸いだ。