国際的な会計基準である「IFRS」は、あらゆる国で導入が進められている。一方の日本では、適用へのハードルの高さや制度の難解さから他国と比べて適用が進んでいない。そこで今回は、世界的に注目されているIFRSの概要とメリット・デメリットを紹介する。

IFRSとは

「国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards:IFRS)」とは、世界各国で使用することが想定された、国際会計基準審議会による会計基準である。

これまでは、国ごとに異なる会計制度を使用することがごく当たり前であった。しかし、資本市場のグローバル化が進んだことで、あらゆる国の企業の実態を世界共通の基準が把握する必要性が出てきたのが、IFRSが普及した背景である。2005年にEU域内の上場企業にIFRSの適用が義務化されたことをきっかけに、互いに別々であった会計基準を統一する動きが加速している。

IFRSは世界的に普及しているものの、日本では導入が遅れている。現時点で日本ではIFRSを「任意適用」としていて、国内には日本基準・米国会計基準・IFRS・修正国際基準(JMIS)の4つが併存している。なかでもIFRSは、一般的な認知度は未だ低いままだ。

IFRSの特徴は、「原則主義」を採用している点だ。原則主義とは、大まかな決まりが設定されているだけで、詳細な部分は各国や各会社の事情に応じて解釈してよいという考え方である。会計基準や解釈指針、実務指針について事細かく指定されている日本基準に対し、IFRSは柔軟性を持っている。

また、IFRSは「グローバル基準」を徹底しており、各国の税務や経済の問題などの独自性も加味していない。議論や定義もすべて英語で行い、言語差異を防ぐように工夫されている。

IFRSのメリット

IFRSのメリットとしては、以下の点が挙げられる。

  • 海外投資家や海外企業への説明が容易
  • 海外子会社との連携や経営管理が容易
  • 競合他社と比較しやすい
  • 買収や合併で損しにくい

まず、グローバル基準であるIFRSを採用することで、自社の現状や将来性を国内・海外に誤解なく伝えられる。海外投資家への説明も容易になり、かつ海外の子会社との会計コミュニケーション上の食い違いも防げるだろう。

このような点から、グローバル展開している・目指している企業や、海外投資家向けのIRに力を入れている企業にとっては、特にメリットがあると言える。

IFRSのデメリット

日本でIFRSを導入を進めるにあたって、未だ課題は多く存在する。IFRSのデメリットとしては、以下の点が挙げられる。

  • IFRS用と日本の会計基準用、複数帳簿を完備する必要がある
  • 会計基準が難解で適用が難しい

日本での財務諸表は日本基準での開示が求められるので、IFRSを採用するには会社はIFRS用と日本の会計基準用の2つを完備する必要がある。作成するための時間とコストがとられてしまうので、導入を進めていない企業が多い。

また、IFRSは「原則主義」を採用しているため、大まかな部分以外の詳細な箇所は各会社で定めなければならない。その分、注記で記載する情報が増え、かえって手間や事務負担が増加する傾向がある。規定自体も頻繁に改訂されるため、事務処理コストが増えるだろう。

さらに、IFRSは全て英語表記で記載されていることもあり、適用が難解である。組織のなかでIFRSに精通した人がいない場合、外部のアドバイザーや翻訳者などを雇う必要も出てくるため人件費がかかる。

このようにIFRSは、導入におけるデメリットも多数存在するため、適用にあたっては徹底した計画が必要だ。しかしながら、グローバル化が進むなかで会計分野でも「世界で統一した基準を持つべきだ」というニーズが高まっているのも事実である。

そのため、グローバル展開をする会社に勤める人や、将来的にグローバルに展開する事業を進めたい事業者は、IFRSの内容や特徴を知っておくとよいだろう。