海外で先に広まっていった「カスタマーサクセス」もようやく日本でも広まりつつある。今回はこの市場価値が高まりつつあるカスタマーサクセスについてご紹介したい。

そもそもカスタマーサクセスとは?

そもそもカスタマーサクセスとは何を指すのか、といったところから始めたい。カスタマーサクセスとは、ユーザーにサービスを使い続けたいと感じてもらうために行うすべての行動およびその概念を指す。

アメリカでは2000年初頭、日本では2005年頃にカスタマーサクセスの考え方が導入されたが、職種・ポジションとしてカスタマーサクセスの考え方が一般的になっていったのは2010年以降の話となる。

カスタマーサクセスが広まっていった背景として重要なのが、サブスクリプションモデルの普及である。サブスクリプションモデルとは、あるサービスを月額や年額などのコストを支払うことで利用し続けるモデルのことだ。

例えば、「SaaS(サーズ)」モデルの普及により、ITベンダーはクラウドサーバー上に自社サービスを展開し、ユーザーはクラウドでそのサービスを利用することができる。

ユーザーは利用している間に月額や年額でサービス利用料を支払うことになるためサービス利用期間中はランニングコストはかかるが、導入時のイニシャルコストは抑えることができるため、まずは導入してみて使い勝手やビジネスニーズの適合具合を判断してからサービスの本格導入という選択肢を取ることができるようになった。

サブスクモデルはカスタマーサクセスに支えられる

前述でサブスクリプションモデルはイニシャルコストを下げることができるため導入のハードルが下がり、ユーザー視点ではサービスが使えるか見極めてから本格導入することができると説明した。

しかし、裏を返せばサービスをやめることへのハードルも下がっており、ビジネスニーズを満たしていないと判断すれば、スイッチングコストが低いため、他のサービスへの切り替えはしやすくなった。

ここでカスタマーサクセスの存在価値が問われる。カスタマーサクセスは似ている表現としてカスタマーサポートと誤解されることがあるが、カスタマーサポートは顧客からの問い合わせに答えて疑問を解消するという受動的な特徴がある。

一方で、カスタマーサクセスは、顧客に対して能動的に働きかけ、サービスの基本的な使い方から課題抽出・改善策提案など、サービスを最大限活用してもらい、顧客の成功体験のサポートに向けて一緒に伴走する役割を担う。

カスタマーサクセスの働きかけにより顧客がサービスの利便性を最大限に活用することができると顧客はそのサービスを長く使い続ける。サブスクリプションモデルは長く使ってもらうことで売上・利益が出るビジネスモデルになっているため、カスタマーサクセスの役割は利益を生むことになる。

補足だが、LTV(ライフタイムバリュー)、日本語では顧客生涯価値というが、ある顧客が取引開始から終了するまでにもたらす利益の総額を指す。カスタマーサクセスはこのLTVを高める働きをしている。

カスタマーサクセスが注目される背景

サブスクリプションモデルとカスタマーサクセスの関係性について述べたが、顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)が以前よりも重要視されていることもカスタマーサクセスが注目されるようになった要因と言える。

この背景として、あらゆる市場が成熟化してきていることが挙げられる。経済のグローバル化が進み、世界のどこでも同じようなモノを作ることが可能になりつつあり、先進国では多種多様な製品があふれている。

商品・サービス提供側からみると、売り手となる競合が多くなり、新しいものを開発しても模倣されるスピードは以前よりも格段に速くなっている。それゆえ、顧客体験をいかに高めることができるか、という観点が競合他社との差別化要因として高まっている。

また、シェアリングエコノミー化が急速に進んでおり、商品を持たずにサービスを受けるモデルが進んでいることも顧客体験が重要となっている要因だろう。

シェアリングエコノミーの広がりの例として、AirbnbやUberが有名だが、自分で持たずにシェアするという概念が当たり前になりつつある。シェアリングエコノミーの市場規模は今後10年以内に数倍~数十倍になるとも予測されており、顧客体験の充実度で差別化することは各企業の至上命題になることは間違いないだろう。

このように、カスタマーサクセスはサブスクリプションモデルの普及と市場の成熟化・シェアリングエコノミーの発展に伴う顧客体験の重要性が高まっている背景により、その重要性が増している。

一方で、日本ではまだまだカスタマーサクセスの経験を豊富に持つ人は少ない。今後さらに市場価値の高まるカスタマーサクセスのポジションに早くから挑戦することでキャリアの選択肢広げることができるため、興味がある人はぜひ挑戦してみて欲しい。