新興コンサルティングファームとは、設立から10年前後の比較的若いファームを指し、Big4やMBBといった大手に対して独自の専門領域やスピード感で差別化を図る存在である。2026年現在、DX・GX・生成AIといった領域でコンサルティング需要が急拡大しており、こうした新興ファームが存在感を増している。今回は、新興ファームが台頭する背景を整理したうえで、注目すべき3社の戦略と、新興ファームでキャリアを築く魅力について紹介していきたい。
新興コンサルファームが台頭する背景
コンサルティング市場はここ数年、かつてないスピードで拡大を続けている。
国内のDXコンサルティング市場だけを見ても、2020年の約1,300億円から2025年には約5,000億円規模へと急伸し、年平均成長率は30%前後に達している。
さらに2026年現在、生成AIの企業導入支援市場が爆発的に拡大しており、法人向け生成AIソリューション市場は前年比40%超の成長を続けている。
この急拡大の背景には、DX(デジタルトランスフォーメーション)、GX(グリーントランスフォーメーション)、そして生成AIという3つのメガトレンドが同時進行していることがある。
企業はこれらを個別の課題としてではなく、経営戦略全体に組み込む必要に迫られている。
しかし、Big4を筆頭とする大手ファームは組織が大きい分、専門領域への対応スピードやクライアントとの距離感において課題を抱えることもある。
筆者自身、エージェントとしてコンサル志望の方々を支援するなかで、「大手ファームでは案件がアサインされるまでの待機期間が長い」「プロジェクトの上流に関わるまでに時間がかかる」といった声を頻繁に耳にする。
こうした構造的なギャップを埋める形で、専門性の高い新興ファームが次々と台頭しているのである。
注目すべき新興ファーム3社の戦略
ここからは、異なる戦略で急成長を遂げている3社の新興コンサルティングファームを紹介する。
Dirbato(ディルバート)――テクノロジー×インキュベーションの二刀流
ディルバートは、「テクノロジーで世界に喜びを。」をミッションに掲げ、2018年の創業からわずか7期で売上430億円を達成したITコンサルティングファームである。
同社の最大の特徴は、ITコンサルティングとインキュベーション(新規事業開発)の二軸で事業を展開している点にある。
コンサルティング事業では、AI・ビッグデータなどの先端テクノロジーを活用したDX戦略の構想から設計・開発・運用まで一貫支援を行い、SalesforceやAWSの認定パートナーとしても技術力を証明している。
さらに、自社で蓄積したナレッジを活かした新規事業開発にも取り組んでおり、コンサルティングの枠を超えた価値創出を目指す姿勢は、従来型ファームとは一線を画するものだ。
IPOも視野に入れた成長戦略を描いており、今後の動向から目が離せないファームの一つである。
ビジョン・コンサルティング――日本発グローバルファームの挑戦
ビジョン・コンサルティングは、「イノベーションで世界をより良く」を経営理念に掲げ、創業以来右肩上がりの成長を続けるファームである。
創業10期目には売上100億円・従業員数1,000名を突破し、直近では従業員数が1,300名を超える規模にまで拡大した。
Financial Timesが選出する「High-Growth Companies Asia-Pacific」のコンサルティング部門で4年連続選出されるなど、国際的な評価も高い。
事業としては、DXコンサルティング・戦略コンサルティング・業務コンサルティング・ITコンサルティング・システムインテグレーションと幅広く展開し、戦略立案から開発・運用まで全プロセスに対応するトータルサポート体制を構築している。
さらに、複数の先端技術を組み合わせた新規事業にも積極的で、AIとIoTセンサーを融合した太陽電池の効率化など、社会課題の解決に向けた取り組みも進めている。
ロサンゼルス、シンガポール、オーストラリアを拠点に世界440都市への展開を掲げており、日本発のグローバルコンサルティングファームとして独自のポジションを確立しつつある。
リグリット・パートナーズ――「人」を軸にしたDX変革
リグリット・パートナーズは、2017年設立のDXコンサルティングファームで、法人と個人の双方の変容を促すというユニークなビジョンを持つ。
売上は設立から一貫して年平均50%超の成長を続け、直近では70億円を超える規模に達している。
Financial Timesのアジア太平洋急成長企業ランキングでは、マネジメントコンサルティング部門で3年連続日本1位を獲得した実績を持つ。
コンサルティング事業では、経営戦略・事業構想策定、オペレーション改革、テクノロジーを活用した変革の3つのスタイルで、クライアントの自立を重視した支援を提供している。
同社の大きな特徴は、コンサルティングだけでなく、フリーランス人材のマッチングプラットフォーム「forPro」の運営など、個人のキャリア支援事業も展開している点だ。
Great Place To Work Japanによる「働きがいのある会社」ランキングで5年連続ベストカンパニーに選出され、2025年には「健康経営優良法人」にも初認定されるなど、組織としての健全性も高く評価されている。
新興ファームでのキャリアの魅力と選び方
新興ファームへの転職を検討する際、大手ファームとの違いを正しく理解しておくことが重要である。
まず、最大の魅力は成長スピードとキャリアの裁量の大きさにある。
大手ファームでは、マネージャー昇格まで平均5〜7年を要するケースが一般的だが、新興ファームでは実力次第で3〜4年で同等のポジションに就くことも珍しくない。
組織がまだ成長途上にある分、若手のうちからプロジェクトの上流工程に関与でき、経営層との距離が近いことも大きなメリットだ。
筆者がエージェントとして支援してきた方々のなかにも、大手ファームからあえて新興ファームに移り、入社2年目でプロジェクトリーダーを任されるケースが実際にある。
一方で、新興ファームならではのリスクも認識しておく必要がある。
研修制度やナレッジの蓄積は大手に比べて発展途上の場合があり、自ら学び取りにいく姿勢が求められる。
また、組織の急拡大に伴い、社内制度やカルチャーが変化しやすいという側面もある。
だからこそ、新興ファームを選ぶ際には「何で勝っているファームなのか」を見極めることが欠かせない。
今回紹介した3社で言えば、ディルバートはテクノロジーとインキュベーションの融合、ビジョン・コンサルティングはグローバル展開と総合力、リグリット・パートナーズは人材育成と組織文化に、それぞれ明確な強みを持っている。
自身のキャリアビジョンと照らし合わせ、どの領域で成長したいのかを明確にしたうえでファームを選ぶことが、転職成功への最短ルートとなるだろう。
新興コンサルファームは、コンサル業界全体の成長を牽引する存在として今後もその勢いを増していくと考えられる。自身のキャリアにおいて「裁量」「成長スピード」「専門性」を重視するのであれば、新興ファームという選択肢を一度真剣に検討してみていただきたい。
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