現代のビジネス環境において、採用面接時に優秀な人材を見極めることは非常に重要である。しかし、それ以上に重要なのが、「採用することが懸念になってしまう人」を見極めることである。

このコラムでは、面接で企業がどのような質問によって「 採用することが懸念になってしまう人 」を見極めているか、一例をあげて解説する。

採用することが懸念になってしまう人材とは

採用企業にとって、優秀だと思った人が実際には期待外れだったり、優秀な人材が他社に入社してしまうことは確かに問題だ。

しかし、最も致命的なミスは、周囲に悪影響を及ぼす人材を採用してしまうことだ。

とある人材紹介会社のX社の例では、優秀な営業パーソンのAさんを採用した。Aさんは、大手人材紹介会社で高い実績を出してきた営業パーソンであり、法人営業として、大企業をはじめとするアカウントを担当し、部内でもトップの営業成績を積み上げてきた。

リーダーとして5名のマネジメントも経験しており、X社では幹部候補として高い期待を寄せて採用した。

鳴物入りで入社したAさんだが、実際は入社後に全く活躍できなかったどころか、周囲への愚痴や不満をオープンにするタイプの方だった。Aさんは周囲のモチベーションを下げてしまうなど、部門全体に悪い影響を与えた上で早期に会社を退職してしまったという事例がある。

このような人材は、会社に不満を募らせ、周囲を巻き込んで悪影響を広げる可能性がある。理不尽な要求をしたり、顧客に迷惑をかけたりすることもある。

面接時にこうした人材を見抜くことは難しいが、不可能ではない。

見極めるための質問と判断基準

「採用することが懸念になってしまう人」を見抜く、質問例を紹介する。

それは、「今までの人生で、自分がされて一番腹が立ったことは何ですか? また、逆に自分が誰かにしてしまったことで、最も悪いなと思っていることは何ですか?」という質問だ。この質問は、候補者の人となりや考え方を見極める上で非常に有効である。

この質問にはいくつかの判断基準がある。まずは、答えそのもので判断する。過去に誰かに対して行ったことで一番悪いことが犯罪や倫理的に問題のあるものであった場合、その候補者は明らかに問題だ。

面接の場でそれをそのまま話すというのは、ある意味正直かもしれないが、自分がしてしまったことが悪いこと、倫理的に良くないことだと思っていない可能性もある。

また、自分がされて一番腹が立ったことが非常に些細なことであった場合も要注意である。このような回答をする人は、非常に腹を立てやすい性格である可能性がある。

しかし、一つ目の判断基準で“アウト”になる人材は、実際はほとんどいない。

この質問でさらに重要なのは、2つ目の判断基準である。それは、「自分が一番されて腹が立ったこと」と「自分がしてしまった一番悪いと思っていること」に大きなギャップがないかを確認することだ。

例えば、自分は些細なことで腹を立てるのに、他人に対しては深刻なことをしてもあまり気にしない場合、その候補者は他責的で身勝手な性格である可能性が高い。逆の場合も要注意で、自分がしてしまった悪いことを軽視し、自分がされたことを過大評価する場合も問題である。

もちろん、これだけで判断はできないし、決めつけてはいけない。ただ、こうした質問を使うことで、候補者の人となりや価値観を深く知ることができる。回答そのものよりも、候補者が自分と他者をどう捉えているのかを見極めることが重要だ。

求職者としても、この質問に対する自分の回答を深く考えることで、自分自身の価値観や考え方を見直すことができる。

ビジネスの現場では、優秀な人材を見極めること以上に、採用することが懸念になってしまう人材を見極めることが組織の成功に繋がる。このコラムを参考に、企業側、求職者側双方にとってより良い採用を目指してほしい。