最近、将来はどのようになりたいか?と言う問いに対し、「あまり出世したいとは考えていない」という方にお会いする機会が増えた。

ソニー生命保険が発表した「社会人1年目と2年目の意識調査」においては、約44%が『出世したくない』と答えている。

一昔前であれば、「 出世を目指すのが当たり前」と言う価値観が一般的であったが、なぜこのような変化が起きているのか。本コラムではその背景について考察する。

出世を望まない本当の理由

新社会人たちが出世を望まない理由として、競争社会からの解放願望が挙げられる。

日本では小学生から大学卒業まで、熾烈な学歴競争が続く。大学を卒業し、やっと競争から解き放たれると思いきや、次は激しい就職活動が待っている。

こうした競争を経てきた新社会人は、競争から解放されたいという強い思いを持つようになる。この思いが出世欲の低さに繋がっているのではないだろうか。

さらに、マンパワーグループの調査によれば、約8割の社員が「管理職になりたくない」と答えている。

責任の重さや業務量の増加、プライベートとの両立の難しさなどがその主な理由とされる。

管理職になると、自分の成果だけでなく、チーム全体の成果にも責任を持たなければならない。 このプレッシャーが、新社会人にとっては大きな負担となる。

さらに、管理職になりたくない理由として、適性がないと感じることや、人間関係の難しさも挙げられる。

多くのビジネスパーソンは、自律的に働くことを好み、専門性を高めることに重きを置いている。管理職としての適性がないと感じる人が多い中で、自分の得意分野を伸ばすことができるポジションを選ぶことが理にかなっていると感じているのだ。

価値観の多様化がもたらすキャリア観の変化

ソニー生命の調査によれば、新社会人の出世欲の低さは、価値観の多様化とワークライフバランス重視の結果であるとされる。

かつては「出世=幸せ」という考えが一般的であったが、現在は必ずしもそうではない。

副業の普及により、出世しなくても自分の理想のライフスタイルを実現する人が増えた。これにより、出世よりもワークライフバランスを重視する若者が増えているのだ。

また、現代の若者は、仕事だけでなくプライベートの充実も重要視している。

多くの若者が、オンもオフも充実させたいと考えており、そのためにワークライフバランスを重視する。副業やプロボノ活動を通じて、自身のスキルを磨き、成長を続けることが可能であり、それが新たなキャリアの道を開くと考えている。

自分らしいキャリアの実現に向けて

新社会人の出世欲が低下していることは、一見すると寂しい現象のように思える。

キャリア形成を支援するエージェントの視点からも、数多くの方とのご面談の機会を通じて、競争社会から解放されたいという思いや、出世が必ずしも幸せに繋がらないという考えが浸透していることが伺える。

しかし、 これは多様な価値観が受け入れられるようになった証であり、社会全体が個人の価値観や生き方を尊重する方向に進んでいることを示している。

現代の若者にとって、自分の価値観に基づいてキャリアを選び、自己実現を目指すことが重要である。

社会全体が多様な価値観を尊重し、各個人が自分らしい働き方を選べるようになったことは、非常に前向きな変化だ。

しかし同時に、自分の価値観を言語化できず、どのような生き方をすべきか迷っている方も増加しているように感じる。

自分の価値観を知るヒントは、過去の体験に隠れていることが多い。

幼少期や学生時代の経験、仕事を通じて得た気づきなど、自分が何に価値を置き、どのような環境で輝けるのかを振り返ってみることが大切だ。

もし、自分の価値観やキャリアに迷いがあるなら、エージェントに相談することをお勧めする。プロの視点からアドバイスを受けることで、新たな発見や気づきが得られるかもしれない。

あなたの理想のキャリアを見つけるための一歩を踏み出してみてはどうだろうか。