現代のビジネスにおいて、成功の鍵は「顧客体験価値」にある。

消費者が単に商品を購入するだけでなく、その過程やその後の体験がどれだけ充実しているかが重要な要素となっている。

特に、ナイキは顧客体験価値を最大化することで、リピーターを獲得し、競争の激しい市場で成功を収めている。

今回は、ナイキの成功事例を紐解き、マーケティング戦略に活かせる3つのポイントを紹介する。

顧客体験価値の重要性

「顧客体験価値」とは、商品やサービスを利用した際の心理的、感情的な一連の体験価値のことを指す。「顧客」を意味する「Customer」と、「体験」と訳される「Experience」の頭文字をとって「CX」とも呼ばれている。

従来のマーケティングは、商品購入の瞬間をゴールとしており、主に実利的な価値を追求していた。

しかし、現代のマーケティングでは、購買前後の体験が重視されるようになっている。顧客が商品を手にするまでの過程や、使用後の満足感が、その商品やブランドへの評価に大きく影響を与えるのだ。

顧客体験価値を最大化させることが出来れば、顧客の満足度やロイヤルティの向上、口コミの拡散、顧客の購買行動などにプラスな影響を及ぼし、顧客との中長期的な関係性を築くことが出来る。

ナイキのアプリが変える顧客体験

ナイキは、EC化を進め、D2Cを重視することでブランドの売上を大幅に伸ばした。

特に注目すべきは、ナイキのアプリを通じた顧客体験の向上である。

ナイキのアプリでは、単に商品を購入するだけでなく、ユーザーが自身の運動能力を測定し、トレーニングメニューを調べることができる。

また、ゲーミフィケーションの要素を取り入れ、購入体験を楽しいものにしている。例えば、ランニングアプリでは走行距離を友達と競い合うことができ、特定の行動を達成することでトロフィーを獲得できる。

このように、ナイキは顧客との関係を深めるための工夫を凝らし、リピーターを増やしているのだ。

さらに、ナイキはD2C戦略を採用することで、顧客との直接の接点を増やし、体験価値を高めた。

以前は、卸業者を介して販売を行っていたため、自社では直接の顧客接点を持っていなかった。

しかし、EC化により、ナイキはダイレクトにエンドユーザーに買ってもらう場を作れるようになり、ブランドの売上高全体に占めるD2Cの割合は、2011年の16%から10年で39%まで高まっている。

顧客体験価値を最大化する3つのポイント

顧客体験価値を最大化するためには、以下の3つのポイントが重要である。

1.説得力あるペルソナの設定

顧客の特徴を具体的に捉えたペルソナを設定し、それを組織全体に浸透させることが重要である。

客観的なデータに基づいたペルソナを設定し、全社員が共通の認識を持つことで、一貫したマーケティング戦略を実行できる。

例えば、ナイキは顧客の運動習慣やライフスタイルを詳しく分析し、それに基づいたペルソナを設定することで、より的確なマーケティング戦略を展開している。

2.カスタマージャーニーマップの活用

顧客の購買行動を時系列で整理し、心が動くポイントを見極めるためにカスタマージャーニーマップを活用する。

これにより、どのタイミングでどのようなアプローチをすれば良いかが明確になる。

ナイキの例では、アプリを通じて顧客がどのような体験をするかを詳細に分析し、その結果を基にマーケティング戦略を立案している。

3.一貫性のあるコミュニケーション

全てのタッチポイントで一貫したメッセージを伝えることが重要である。

ブランドの人格を統一し、顧客に信頼感を与えることで、長期的な関係を築くことができる。

ナイキは、アプリやECサイト、SNSなど、様々なチャネルを通じて一貫したメッセージを発信し、顧客との信頼関係を構築している。

顧客体験価値を最大化するためには、これらのポイントを踏まえた戦略を立案し、実行することが不可欠である。

ナイキの成功事例から学び、自社のマーケティング戦略に活かすことで、顧客との強固な関係を築くことができるだろう。

本コラムでは、ナイキの成功事例から学ぶ「顧客体験価値」の重要性と、それを最大化するための3つのポイントを紹介した。

マーケティング戦略において、顧客体験価値を重視することがビジネス成功の鍵となる。

顧客の期待を超える体験を提供し続けることで、リピーターを増やし、持続的な成長を実現することができるのだ。ナイキの成功は、その証明と言えるだろう。