AIの進化は止まらず、私たちの働き方に大きな変革をもたらしている。総務として働く皆さんも、その影響を感じていることだろう。

AIが人間の仕事を奪うと言われる中、総務がどうやって市場価値を高めるかを考えることは重要だ。

本コラムでは、AI時代における総務の役割と、身につけるべき3つのスキルについて考察する。

AIにより総務の仕事は代替されるのか

英オックスフォード大のマイケル・A・オズボーン博士らが2014年に発表した論文『雇用の未来(The Future of Employment)』によると、20年後までに人類の仕事の約5割がAIないしは機械によって代替され、消滅すると予測されている。

オーバーな表現ではあるが、定型業務など正確性やスピードが求められる単純作業は、AIに代替される可能性が非常に高い。

総務の仕事は多岐にわたるが、事務作業の割合が高いため、AIの台頭による影響が出やすい職種であることは否めない。

例えば、データ入力やスケジュール管理などの定型業務は、AIに任せることができる。

しかし、総務の仕事はそれだけではない。AIには難しい人間関係の調整や、組織文化の醸成、戦略的な計画策定といった高次の業務が求められる。

AI時代において、総務が果たすべき役割は一層重要になる。

総務が伸ばすべき3つのスキルとは

1.帰納法思考

総務の仕事は会社ごとに異なるフローで処理されることが多い。そのため、他社でも通用するようなナレッジを得るためには、帰納法的思考が重要だ。

具体的な事実やデータから一般的な法則を導き出し、汎用的な知識を身につけることで、どの企業でも通用する総務のプロになれる。

例えば、リスク管理やオフィス管理など、各業務のプロフェッショナルを目指すこともできる。

帰納法思考を養うためには、日々の業務に対してクリティカルな視点を持ち、改善点や新たな方法を模索する姿勢が求められる。

例えば、同じ業務を異なる方法で実施してみたり、他社の成功事例を参考にして自社に適用するなどの取り組みが効果的だ。

また、社内外の研修やセミナーに参加し、最新の知識やスキルを積極的に吸収することも重要である。

こうした積み重ねが、総務の市場価値を高める礎となるだろう。

2.業務改善スキル

総務は常に業務の改善を求められる。

技術の進歩や外部環境の変化に対応し、効率的な業務フローを構築していく必要がある。業務改善のスキルは、総務だけでなく、全社的なバックオフィス業務にも応用できる。

例えば、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やノーコードアプリを活用することで、業務のデジタライゼーションを進めることができる。

業務改善の取り組みは、一時的なものではなく、継続的なプロセスであるべきだ。総務は、常に現状を見直し、改善の余地を探し続ける姿勢が求められる。

例えば、定期的な業務プロセスのレビューを実施し、効率化のための新しいツールや方法を導入することが考えられる。

また、社員からのフィードバックを積極的に取り入れ、実務に即した改善策を講じることも重要だ。

さらに、業務改善の成果を評価するための指標を設定し、定量的に成果を測定することが効果的だ。

これにより、改善の効果を可視化し、組織全体で共有することで、さらなる改善活動のモチベーションを高めることができるだろう。

3.チェンジマネジメント

新しい施策やツールを導入する際には、チェンジマネジメントが不可欠だ。

人間は変化を嫌う傾向があり、新しい施策に対して抵抗を示すことがある。そのため、従業員が変化を受け入れやすくするためのスキルが必要だ。

総務がチェンジマネジメントの達人となることで、会社全体の業務改善をスムーズに進めることができる。

チェンジマネジメントの成功には、コミュニケーションが鍵となる。

変化の理由やそのメリットを明確に伝え、従業員の理解と共感を得ることが重要だ。

また、変化に対する不安や疑問に対しては、丁寧に対応し、サポートを提供することで、従業員の抵抗感を軽減することができる。

さらに、変化の過程を段階的に進め、従業員が新しい状況に徐々に適応できるようにすることも効果的だ。

例えば、新しいシステムの導入時には、段階的なトレーニングを実施し、従業員が新しいツールを使いこなせるようにサポートする。

また、変化の初期段階で成功体験を積ませることで、従業員の自信を高め、積極的に新しい取り組みに参加してもらうことができる。

本コラムで述べてきたように、総務の仕事は完全にAIに代替されるわけではなく、人間とAIが協力して業務を遂行する形になっていく。

総務は、会社全体の歯車をスムーズに回すためのカギを握っているといっても過言ではない。