新型コロナウイルスの影響でリモートワークが一気に普及した。
しかし、パンデミックが収束した現在、朝夕の通勤時間帯の混雑が戻り、対面でのビジネス活動が活発化している様子を目にする機会も増えてきた。
この記事では、リモートワークの現状と、社員のニーズに応じた働き方の変化について探っていく。
リモートワークの実施状況とオフィス回帰の浸透
東京都では、コロナ禍以降、リモートワークの実施率が大幅に上昇した。東京都が2024年2月に発表したデータによると、従業員30人以上の企業でのリモートワーク導入率は43.4%に達している。
これは、コロナ禍の緊急事態宣言期間中に比べると低下しているものの、依然として高い水準を保っている。
リモートワークの実施回数を見ても、週3日以上のリモートワークを実施している従業員は40.1%を占め、完全出社の状況に戻る企業は少数派である。
野村総合研究所が実施した調査でも、東京都内の大企業に勤務する従業員の75.1%が週3日以上出社している一方で、残りの約25%はリモートワークを継続している。
オフィス回帰の動きが進む中でも、リモートワークの 導入 率は依然として高いことがうかがえる。
ハイブリッド型の勤務を求める社員が増加
多くの従業員は、完全出社やフルリモートのどちらか一方に偏ることを好まず、ハイブリッド型の勤務を求めている。
米クアルトリクス社の「2024年従業員エクスペリエンストレンドレポート」によれば、週2日から4日のオフィス出社とリモートワークを組み合わせたハイブリッド勤務を希望する従業員が最も多く、その割合は72%に達している。
この結果からも、柔軟な働き方が従業員のエンゲージメントや満足度を高める要因となっていることがわかる。
特に新規採用者や中途採用者にとっては、完全リモートワークではコミュニケーションの機会が減少し、孤立感を感じる可能性がある。
そのため、対面での交流やオフィス出社の機会が重要視される一方で、リモートワークの利便性も確保する必要がある。
オフィス設備の導入など環境構築が進む
従業員のニーズに合わせて、企業はオフィス環境の再構築を進めている。
米シスコシステムズ社が実施した調査では、社員の77%がコラボレーションやブレインストーミングを目的にオフィス勤務を希望していることが明らかになった。
しかし、現状のオフィス設備がそのニーズに十分応えていないと感じている社員も多く、オフィスのレイアウトや設備の見直しが急務となっている。
具体的な企業の取り組みとして、サイボウズでは「仮想オフィス」を本社として情報格差を解消し、ほぼすべての業務をオンライン化することで、出社頻度は個人の裁量に任せている。
ベネッセコーポレーションも、「Withコロナ時代の新しい働き方」として、ハイブリッドワークを含むさまざまな施策を実施している。
具体的には、フリーアドレスの導入やコラボレーションスペース(会議ができるカフェスペースのような場所)、オンライン会議の専用スペースを設置するなど、本部オフィスを全面リニューアルした。
その他にも、サイバーエージェントでは特定の曜日にリモートワークを行う「リモデイ」の運用を開始するなど、独自の制度を開始している企業も散見される。
こうした取り組みにより、従業員の働きやすさが向上し、生産性の向上や離職率の低減が期待されている。
ハイブリッドワークの定着には、従業員のエンゲージメントや満足度を高める環境づくりが不可欠である。
企業は従業員の声に耳を傾け、柔軟な働き方を支えるための環境を整えることで、競争力を維持しつつ、持続可能な働き方を実現していく必要がある。
これからも働き方の変革が続く中で、企業と従業員が共に成長し続けるための取り組みが求められるだろう。
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