eコマースは、小売の一手段から生活を支える基盤へと位置づけを変えた。世界の市場規模は2028年に6兆8,000億ドルへ届く見込みだ。

eコマース市場の成長予測

米調査会社Forresterは、世界のeコマース売上が2023年の4兆4,000億ドル(約692兆円)から2028年には6兆8,000億ドル(約1,069兆円)へ伸びるという見通しを示した。

これは、オンライン販売が世界の小売の24%を占める水準にあたる。販売する側にとって、オンラインは外せない販路になる。

一方で、金額の大きさで見れば実店舗が優勢のままだ。2028年の世界の小売売上高は28兆7,000億ドル(約4,513兆円)と予想され、そのうち21兆9,000億ドル(約3,444兆円)はオフラインで動くと見込まれている。

伸び率の高さと売上の大きさは別の話であり、実店舗への投資が今後も意味を持つ理由がここにある。

地域ごとの数字も出ている。アメリカのオンライン小売は2028年までに1兆6,000億ドル(約251兆円)に達し、小売売上高全体の28%を占めるという予想だ。世界全体の24%より高い水準である。

カナダやブラジル、アルゼンチンでもオンライン小売は大きく伸びる。カナダの予測は830億ドル(約13兆円)だ。

ヨーロッパのオンライン売上は、2023年の5,080億ドル(約79兆円)から2028年には7,730億ドル(約121兆円)へ拡大すると見られている。成長は一部の国に限った話ではない。

実店舗の現状と課題

オンライン市場が伸びても、実店舗の役割が消えるわけではない。スイスの投資銀行UBSは、アメリカで4万5,000もの小売店舗が閉鎖される可能性を報告書で示した。

その多くは、オンラインのサービスを店舗運営の一部として組み込むことに失敗している企業だ。米Macy’s(メイシーズ)や英The Body Shop(ザ・ボディショップ)といった老舗小売の苦戦は、たびたびニュースになる。

大きな原因は、ユニークな買い物体験を求める若年層の消費者に対応できていないことにある。対照的なのが仏Sephora(セフォラ)だ。オンラインと実店舗の両方で、消費者にシームレスで楽しい買い物体験を提供している。

Sephoraが取り入れたのは、オンラインストアと実店舗のポイントプログラムの連動だ。さらに、美容トレンドを店頭に反映させることで、消費者に常に新しい価値を届けている。

美容セッションやイベントを通じて、顧客との直接的な接点も増やした。店舗を残すか閉じるかという二択ではない。店舗をオンラインとどうつなぐかが、いま問われている。

オムニチャネル戦略の要点

これらの事例からわかるのは、オンラインとオフラインを組み合わせたオムニチャネル戦略の輪郭だ。使えるチャネルは一つではない。オンラインマーケットプレイス、ソーシャルコマース、ネットスーパー、クリック&コレクトと、選択肢は広がっている。

複数のチャネルを組み合わせれば、消費者にシームレスな買い物体験を提供できる。オムニチャネル戦略の導入は、消費者とのつながりを強め、ブランド体験を高める打ち手にもなる。

とくに若年層の消費者は、シームレスでパーソナライズされた買い物体験を求めている。ここに応えられる企業が、今後の市場で競争優位を確立するだろう。

eコマースの成長と実店舗の価値は、どちらか一方を選ぶ話ではない。オンラインは伸び率で市場を広げ、実店舗は金額の大きさで市場を支えている。

2028年の予測が示すのは、その二つが同時に成り立つ市場だ。オンライン比率は24%まで上がり、それでも21兆9,000億ドルはオフラインで動く。

一方では4万5,000店舗の閉鎖が見込まれ、他方ではオンラインと店舗をつないだ企業が若年層をつかんでいる。両者が共存する市場で、新たなビジネスモデルや戦略がどう進化するのかが次の焦点になる。