現時点の為替レートは歴史的な円安だと言われている。

現在の業種や転職先として検討している業種が円安によりどのような影響を受けやすいか、知っておきたい方もいるだろう。

本コラムでは、円安の基本から、そのメリット・デメリット、そして円安の恩恵を受ける業界について今一度ご説明したい。

外国通貨に対して日本円が安いという状態を表す

そもそも為替レートとは、国際市場での通貨の供給と需要によって決まる通貨それぞれの価値を表す。

為替は経済指標や政策の変化など様々な要因が複雑に絡み合い変動する。例えば、強い経済成長はその国の通貨の価値を上げる。

一方で、政治的に不安定に陥ってしまった場合では、投資家のリスク回避行動を引き起こし、その国の通貨の価値を下げる要因となる。

これを踏まえ、円安とは、「外国通貨に対して日本円が安い」という状態を表している。

為替レートの変動を通じて説明すると、1ドル100円という為替レートの時には100円で1ドルに換金できるが、1ドル130円という為替レートになると、1ドルに換金するには130円必要となる。これが円の価値が下がる「円安」の状態である。

生活レベルでは、「海外旅行に行くのは控えよう」「輸入品が高くて買いにくくなった」といった影響が出てくる。

まずはこの基本を抑えておきたい。

円安のメリット・デメリット

円安のデメリットとしては、輸入品の価格が高くなることである。

日本は多くの物資を輸入に頼っているため、エネルギー資源の高騰やガソリン代の上昇などが懸念される。

また、輸入に依存している製品の価格も上がり、生活費の増加につながる。特に、食料品や日用品などの価格が上昇することで、消費者の負担が増える。

しかし、円安にはメリットも存在する。

例えば、輸出産業では日本の製品が海外で安く売れるため、売上が伸びやすくなる。また、海外で稼いだ外貨を日本円に換える際、より多くの円を得ることができるため、外貨を持つ企業や投資家にとっては利益が増える。

さらに、外貨建ての収入を持つ個人や企業にとっては、為替差益を享受することができる点もメリットとして挙げられる。

円安の恩恵を受ける業界とは

円安の恩恵を受ける代表的な業界として、輸出業、製造業、インバウンド業が挙げられる。

1.輸出業

まず、輸出業では、自動車や家電、電子部品などが海外で安く販売できるため、売上がアップする可能性が高い。

これにより、賃金引き上げや雇用拡大を行う企業も出てくるだろう。具体例として、日本の自動車メーカーが海外市場での競争力を高めることで、販売台数が増加し、業績が向上するケースが多い。

また、電子部品メーカーも同様に、海外の需要が増えることで生産量が増加し、企業の成長が期待できる。

2.製造業

次に、製造業では、日本国内で製造される商品、例えば日本酒や焼酎などが海外市場で高い評価を受け、売上が増加するケースがある。

特に、原材料を国内で調達できる製品においては、円安の恩恵を享受しやすい。具体的には、国内産の米や大麦を使用して製造される日本酒が、海外の日本食ブームと相まって高い人気を誇り、輸出量が増加している。

また、工芸品や伝統工芸品なども、円安の影響で海外からの注文が増えることで、国内産業の活性化につながっている。

3.インバウンド業

最後に、インバウンド業である。

円安により、日本を訪れる外国人観光客が増加することもしばしばある。観光業、飲食業、小売業などがその恩恵を受け、経済的な利益を享受できる。

実際に、政府観光局(JNTO)の2024年3月17日発表によると、2024年3月の訪日外国人客数(推計値)は308万1,600人で、これまで過去最高だった2019年7月の299万人を上回っている。過去最高の更新は、4年8カ月ぶりだという。

今回は円安の基本について改めてご説明した。

特に、グローバル展開を進める企業や海外市場に強みを持つ企業はその影響を受けやすいため、普段の業務にも大きく影響してくるだろう。

自らが働く業界がどのような影響を受けるのか、経済の状況を正しく理解しておくことは必要不可欠である。