Gartnerの調査によると、米国企業の購買意思決定には平均で10人近くが関与しており、その合意形成は非常に難しい。
営業職のあなたも、この現実に直面したことがあるだろう。社内調整の壁に阻まれ、多くの魅力的な提案が失われる。
しかし、そんな状況を打破するための新しいアプローチがある。
それが「バイヤーイネーブルメント」だ。顧客の購買プロセスを支援し、受注率を飛躍的に高めるこの手法について解説する。
顧客の購買プロセスは複雑である
営業活動において、顧客から断られることは決して珍しいことではない。
だが、見落としてはならないのは、顧客自身も社内での購買プロセスにおいて多くの困難に直面しているという事実だ。
例えば、新しいITツールの導入を検討する際、顧客はまず営業担当者から提案を受け、それを自社内で検討する。
しかし、この段階で多くの壁が立ちはだかる。
上司や関係部門への説明、費用対効果の評価、さらには法務部門や情報システム部門の承認など、数多くのステップを踏まなければならない。これらのプロセスがスムーズに進まないと、最終的に「今は無理だ」と諦める結果になってしまうのだ。
このような複雑な購買プロセスを考慮すると、営業担当者が単に魅力的な提案をするだけでは不十分である。
顧客が社内での調整をうまく進められるように、営業側が積極的にサポートする必要がある。
ここで登場するのが「バイヤーイネーブルメント」という新しいアプローチだ。
バイヤーイネーブルメントとは
バイヤーイネーブルメントとは、顧客が自社内での購買プロセスをスムーズに進められるよう支援するアプローチである。
従来のセールスイネーブルメントは、営業担当者のスキルや知識を向上させることに重点を置いていた。
しかし、バイヤーイネーブルメントは顧客自身に焦点を当て、彼らが社内調整を成功させるための情報やツールを提供することを目的としている。
具体的には、顧客に対して購買プロセスに必要な情報を整理し、提供する。例えば、顧客が上司に提案を説明する際に使用できるプレゼンテーション資料や、具体的な事例を提供することが含まれる。
また、顧客が社内での調整を進める際に直面する可能性のある問題や質問に対して、予め回答を用意しておくことも重要だ。
これにより、顧客は自信を持って社内で提案を進めることができる。
顧客との共同作業で壁を突破せよ
バイヤーイネーブルメントを効果的に実践するためには、いくつかの重要なポイントがある。
まず、顧客の購買プロセスを詳細に理解し、その中でどのような情報が必要とされるかを把握することが必要だ。
具体的には、顧客が社内でのプレゼンテーションや提案説明を行う際に使用できるデータや資料を提供する。また、過去の成功事例や統計データを引用し、顧客にとって信頼性のある情報を提供することが重要だ。
さらに、顧客とのコミュニケーションを密に保ち、常に進捗状況を確認することが求められる。
例えば、顧客が提案を社内で説明する際にどのような質問が出るかを予測し、それに対する回答を準備しておく。顧客が直面する可能性のある課題や障害を事前に特定し、それに対する解決策を提供することで、顧客が自信を持って提案を進められるようサポートすると効果的だ。
さらに、バイヤーイネーブルメントを実践する際には、顧客との信頼関係を築くことも重要である。
顧客のニーズや課題を理解し、彼らの視点に立ってサポートを行うことで、顧客との信頼関係を深めることができる。これにより、顧客は営業担当者を信頼し、提案を前向きに検討することができるようになる。
本コラムではバイヤーイネーブルメントの概念と実施ポイントについて解説した。
バイヤーイネーブルメントは、顧客の購買プロセスを支援し、受注率を高めるための強力な手段である。
受注率の向上に取り組まれている方は、ぜひこのアプローチを取り入れてみてほしい。
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