転職活動では「転職の軸」を明確にすべきだという話を耳にしたことがある人は多いだろう。
しかし「転職の軸」とは具体的に何を指すのか、どのように整理すればよいのかについて、明確な方法論を持っている人は案外少ないのではないだろうか。
今回は転職の軸の本質と、その見つけ方について実践的に解説していきたい。
「転職の軸」とは自分にとっての譲れない最優先事項
結論から述べると「転職の軸」とは、転職活動において自分が絶対に譲れない最優先事項のことである。
この最優先事項を自分の中で整理することが転職活動のファーストステップであり、転職活動が成功だったかどうかを判断する基準にもなる。
有名企業に転職すること、年収を大幅にアップさせることが転職の成功だと考える人もいるかもしれないが、それはあくまでも一般論であり、その人個人にとっての転職成功とは限らない。
自分なりの転職の軸を明確にした上で、その軸に沿った転職を実現してこそ、本当の意味での転職成功と言えるのだ。
仮に転職の軸を定めないままなんとなく転職活動を始めてしまうと、行きたい業界や企業を選ぶ段階で方向性が定まらず迷走してしまう。
最終的に内定を獲得できたとしても承諾してよいかの判断基準がなく、複数社から内定をもらった場合にもどの企業を選ぶべきか決め手を欠くことになる。
筆者がエージェントとして多くの転職者を支援してきた中でも、転職の軸が曖昧なまま活動を始めてしまい、途中で方向転換を繰り返して時間を浪費するケースは少なくない。
理想と現実のギャップの中に転職の軸のヒントがある
では具体的にどのようにして転職の軸を見つければよいのか。
大きく3つのステップに分けて進めるのが効果的だ。
第一のステップは、自分のなりたい姿・理想像をイメージすることである。
5年後、10年後、20年後の自分がどのような仕事をし、どのような生活を送っていたいかを自由に描いてみることが出発点となる。
ここで重要なのは一般的な理想像ではなく、あくまでも自分だけの理想像をイメージすることだ。
社会人経験が積み上がるにつれて「これは難しい」「あれはできない」と自分の中で勝手に制約をかけてしまいがちだが、このステップでは制約を外して自由に発想してみることが大切である。
第二のステップは、イメージした理想と現在の現実とのギャップを分析することだ。
今の職場で努力を続けることでその理想の未来に近づけるのかどうかを冷静に見極める必要がある。
今のまま頑張ることで理想に近づけそうであれば、現職に留まるという選択も立派な転職活動の成果である。
一方で現職のままでは理想との距離が縮まりそうにないのであれば、具体的にどのポイントにギャップが存在するのかを深掘りする。
転職の軸を選ぶとは「捨てるもの」を決めることである
第三のステップにおいて、理想と現実のギャップを埋めるための最優先事項を絞り込む中で、自分なりの転職の軸が明確になっていく。
ここで同時に考えなければならないのが「何を捨てるか」「何をあきらめるか」という視点だ。
年収、企業ブランド、社風、やりがい、勤務地、ワークライフバランス、職種、役職など、転職の軸となりうる項目は多岐にわたるが、これらすべてを完璧に満たす企業は現実には存在しない。
何を優先するかの順位付けと同時に、何を捨てるかまで明確に決めなければ、理想だけを追い求めて転職活動が全く前に進まなくなってしまう。
年収さえ高ければどんなに激務でも構わないという人もいれば、多少年収が下がってもワークライフバランスを最優先にしたいという人もいる。
このトレードオフの判断には徹底的な自己分析が不可欠であり、他人の価値観や一般論に流されずに自分自身と向き合うことが何より重要だ。
転職の軸は活動開始時に一度整理して終わりというものではなく、活動を進める中で企業と接点を持つことで軌道修正していく柔軟さも必要となる。
しかし自分の価値観のベースとなる部分はファーストステップの段階でしっかりと言語化しておくことが、ぶれない転職活動を実現する土台になる。
何を得たいか、何を捨てられるかという価値観は人によって必ず異なるため、自分一人で整理することが難しい場合は、プロのエージェントとの対話を通じて言語化してみることをおすすめしたい。
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