DXを進める途中で、誰かの一声によってプロジェクトが方向転換を強いられ、頓挫することがある。防ぐ手立てがステークホルダーマネジメントだ。

ステークホルダーマネジメントの重要性

プロジェクトマネージャー(PM)がスキルを伸ばすうえで、早い段階で身につけておきたい手法である。

DX(デジタルトランスフォーメーション)推進のようなプロジェクトでは、関わる人をどう管理するかが鍵を握る。管理が行き届いていれば、予期せぬ方向転換や問題を未然に防げる。

関係者の多い大規模なDXプロジェクトでは、誰がどんな意向を持ち、どの程度の影響力を持つのかを把握したうえで対応する。ここが成否を分ける。

ステークホルダーの意見を無視して進めることはできない。相手が何を期待し、何を求めているのかを理解したうえで、そこに合わせて動くことがPMに問われる。

プロジェクトを成功に導くには、ステークホルダーの協力が欠かせない。支援が得られれば、プロジェクトの進行はスムーズになる。

裏返せば、ステークホルダーマネジメントはプロジェクト運営の土台であり、PMにとって最優先の仕事だといえる。

ステークホルダー対応の4つの手順

手順は四つある。洗い出し、分析、対応方法の検討、そして継続的な見直しだ。

最初にやるのは、プロジェクトに関係するステークホルダーを漏れなく洗い出す作業になる。社内外の関係者と、影響を受ける可能性のある人をリストにしていく。組織図や体制表を使うと抜けが減り、それぞれの立場まで詳しくつかめる。

対象はプロジェクトチームのメンバーや直属の上司にとどまらず、他部門の関係者、外部の取引先まで及ぶ。

洗い出しはプロジェクトの初期段階から始めたい。関係者の意見や期待を早いうちにつかんでおけば、後から出てくるトラブルの芽を先に摘める。

次に、洗い出したステークホルダーを影響力と関心度の二つの軸で評価する。この作業を通じて、プロジェクトにとって誰が最も大きな存在なのかが見えてくる。二つの軸はマトリックス表に置くと分かりやすく、対応の重み付けも見比べやすくなる。

影響力も関心度も高いステークホルダーは、プロジェクトへの影響力が強い。重点的に対応する相手として扱う。逆に、影響力も関心度も低い相手には、最低限の対応で足りる場合が多い。

分析の結果をもとに、相手ごとのアプローチ方法を決めていく。

三つ目の段階では、ステークホルダーごとの対応策を固める。タイミング、対応者、伝達方法、伝達内容を具体的に決め、定期的なコミュニケーションを計画に落とし込む。

定例のミーティングや報告書の提出、メールでの連絡を通じて、進捗状況と問題点を共有する。相手が抱える懸念や疑問に素早く応えていけば、信頼関係が積み上がる。

注意したいのは伝達手段の選び方だ。重要な事項は対面で説明し、細かい情報はメールや報告書で渡す。相手と内容に応じた使い分けが問われる。

最後は、状況の変化に合わせて手を入れ続ける段階になる。プロジェクトが進むにつれ、ステークホルダーの置かれた状況も関心度も変わっていく。

定期的に見直し、良好な関係を保つための対応策を更新する。ステークホルダーからのフィードバックを積極的に取り入れ、必要に応じて対応策を調整していく。プロジェクトが終わった後も関係を切らさずにおけば、次のプロジェクトで協力を得やすくなる。

手元のプロジェクトで、関係者の名前を一覧にできているだろうか。挙がらない相手がいれば、そこから埋めていく。早い段階で意見や期待をつかんでおけば、後々のトラブルを未然に防げる。

ステークホルダーとの良好な関係は、予期せぬ問題を防ぐだけでなく、プロジェクトを円滑に進めることにもつながる。ここで挙げた手順を、自身の業務に取り入れてほしい。